「中央集権体制にくさびを」逢坂誠二衆議院議員
「細川珠生のモーニングトーク」2019年4月13日放送
細川珠生(政治ジャーナリスト)
Japan In-depth 編集部(石田桃子)
【まとめ】
・女性の地方議会議員を増やすには、子育て支援、政党の本気の取り組み必要。
・首長職務に全身全霊傾けられるのは長くて10年。多選は有権者の不利益に。
・形式的な議論に終始した平成の大合併が、地方議員のなり手不足を招いた。議会の本質を見よ。
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今月7日に前半戦を終えた、統一地方選挙。立憲民主党の逢坂誠二衆議院議員に、政治ジャーナリストの細川珠生が話を聞いた。
統一地方選挙前半戦では、11道府県知事選、6政令市長選、41道府県議会選、17政令市議選が展開された。逢坂氏の地元・北海道でも知事選が行われたが、立憲民主党を含む野党統一候補・石川知裕氏は敗れ、自公推薦候補・鈴木直道氏が新知事となった。細川氏はこの結果について、「北海道は立憲民主党が強いと思っていたので、意外だ。」と述べ、逢坂氏に敗因を聞いた。
逢坂氏は、候補の知名度の違いを敗因の一つと指摘し、札幌に重点を置いた選挙活動をするべきだったと述べた。従来、北海道知事選の選挙活動は、北海道全土をくまなく歩くのが王道だという。「そういう大胆な決断ができなかったことも、今回のような票差になった一因」と述べた。
▲©Japan In-depth編集部
今回の統一地方選挙は、「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」が施行されて以来初の大型選挙であった。この法律は、主に、衆参議院選挙・地方議会選挙の候補者の男女比をできる限り均等とすることを目指すもので、「日本版パリテ法」とも呼ばれる。2018年5月23日に公布・施行された。(参考:内閣府男女共同参画局HP)
ところが、結果は期待に反するものだった。細川氏は「今回の統一地方選全体として10%くらいの女性議員ができたが、女性議員がゼロのところもある」と述べ、女性の地方議会議員がなかなか増加しない原因は何か、逢坂氏に意見を聞いた。
逢坂氏は、2つの点を挙げた。
1.子育てとの両立
2.政党の本気度
1.子育てとの両立
子育てとの両立は、議会だけでなく日本社会全体にとっても大きな問題であるとし、「社会全体で子育てをサポートするという仕組みを作っていくことが、最終的に女性議員を増やしていくことになる」と述べた。
2.政党の本気度
今回の統一地方選挙の結果を見ると、当選者に占める女性の割合の増加率には、各党でばらつきがあるという。「立憲民主党は今回たぶん女性の比率が一番増えて25%くらい。やろうと思えば増やせる一方そうでない比率のところもある。政党の本気度が問われている。」と述べた。
逢坂氏は、立憲民主党が取り組む活動「パリテ・ナウ」を紹介した。「パリテ・ナウ」は、「パリテ(男女半々の議会)」の実現を目指し、女性と政治をつなげる、タウンミーティングイベント。2018年12月から開催をスタートし、「女性の抱える困難」や「女性のライフスタイルと政治」について、ディスカッションを行なっている。(参考:立憲民主党HP)
逢坂氏は「『政治なんて、私、縁がないわよ』と思う人がほとんどだと思う」と述べた上で、まずは自分の抱える課題から政治的なアプローチを考えるというプロセスが必要だと述べた。
次に細川氏は、多選や定年制の可否について、逢坂氏の意見を聞いた。
逢坂氏は、ニセコ町長を3期務めた自身の経験から、多選は控えるべきという考えを述べた。「首長であれば長くて10年」と述べ、任期を重ねるごとに緊張感が薄れ、全身全霊を傾けられていないのであれば、有権者にとっては非常に問題の多いことだと指摘した。
次に細川氏は、今回の統一地方選前半戦で、道府県議会選の約4割が無投票であったことに触れ、「候補者が定数以上いなかった場合には信任投票を行うとか、なんらか必要ではないか」と提案した。
これに対して逢坂氏は、地方議員のなり手がいないことの大きな理由として、「平成の大合併」を挙げた。コスト面ばかりに注目し、議会の果たす役割や人数の意味について議論することなしに、人数を削減する改革を進めた。その結果、議会は存在価値を貶められ、魅力を失ったという。「議会に人が行かないということは、有権者自らの発信力を削ぎ落として、もの言わぬ住民を作ってしまうことになるんだということをわかってもらうことが必要」と訴えた。さらに、今必要なのは、地方議員のなり手確保のための形式的な議論だけでなく、議会の役割やあるべき姿といった本質論に目を向けることだとし、「そうしなければ地方自治が崩壊すると思う」と強調した。
逢坂氏の所属する立憲民主党の前身・民主党は、地域主権を第一に掲げてきた政党である。細川氏は、自民党の中央集権体制が日本の戦後復興の成功に大きな役割を果たしたことを認めながらも、戦後70年以上がたった今「統治機構のようなものをゼロから考え直していくということは、野党にしかできないことではないか」と述べて、問題意識や改善策を国民に提示する役割を、野党に期待した。
逢坂氏はこれに同意し、戦後の中央集権体制はインフラや経済の成長に貢献したが、現在ではそれぞれの地域がさまざまな課題を抱えていると指摘した。2012年の安倍政権発足以来、日本政治は再び中央集権に戻っており、「そこにくさびを打つと言う事は非常に今後の社会において大事」と主張した。ただし、「地方自治の話や分権の話は、国民の関心をひかない」ため、「選挙の争点になりにくい」と言う課題があることも指摘した。逢坂氏は、選挙の当事者として、「人気がないとはいえども、これはやらなきゃいけない政策なんだということを、しっかり心に刻んでおきたい」と述べた。
(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2019年4月13日放送の要約です。)
「細川珠生のモーニングトーク」
ラジオ日本 毎週土曜日午前7時05分〜7時20分
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この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト
1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。