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.社会  投稿日:2019/4/25

「放課後をリデザインする」放課後NPOアフタースクール平岩国泰代表理事


©Japan In-depth編集部

【まとめ】

・子供が年間1600時間ほどを過ごす放課後と夏休み。その価値を捉え直すべき

・学童保育は施設数が不足。そこで注目されるのが「放課後子供教室」

・放課後のリデザインで子供の自己肯定力向上も目指す

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=45412でお読みください。】

 

「日本の放課後を安全で豊かにするために、『社会で子どもを育てる』」「かつて自由で伸びやかだった放課後は、今、大きく様変わりしています。日本の放課後は子どもたちにとって幸せでしょうか?」(放課後NPOアフタースクールHPより)

今回のJapan In-depthチャンネル(MC:Japan In-depth編集長安倍宏行)は、女優サヘル・ローズさんとお送りする「ROSE EYE」放課後NPOアフタースクールで代表理事を務める平岩国泰氏(著作:子どもの「やってみたい」をぐいぐい引き出す! 「自己肯定感」育成入門)をゲストに招き、「放課後のリデザイン」というテーマで、安倍宏行編集長とサヘル・ローズさんが話を聞いた。

▲写真 ©ヒマナイヌスタジオ

平岩氏は大学卒業後、株式会社丸井に就職。しかし長女の誕生をきっかけに現在の活動を始め、2011年には15年務めた会社を退職してNPO法人に一本化した。平岩氏は活動を始めた当時の心境について、「30歳で子供が生まれ、何かの役に立って長く続けられるような趣味、つまりはライフワークのようなものを探していた気がする」「子供のことをやりたいというのは前から思っていた」などと話した。放課後に焦点を当てた活動の背景については、当時頻発していた女児連れ去り事件などを踏まえ、「女の子が生まれるということもあり他人事ではなかった」「そういう事件は放課後に起こっていると気付いた」と述べた。

放課後のリデザインが必要とされる背景には、「放課後」が長いことも挙げられる。小学校低学年の児童が学校で過ごす時間は年間1200時間。一方で夏休みと放課後を合わせると年間1600時間にもなる。子供にとって、放課後や夏休みというのは学校で過ごす時間よりも長く、だからこそ「改めてその価値を問い直した方が良い」と平岩氏は述べた。

現在の日本の放課後について、まず平岩氏は子供の「9割はアポなしでは遊ばない」ことに触れた。その原因としては、放課後の予定が無い子供が減っていることや、子供同士の遊びの約束に親が干渉しがちな現状が挙げられる。しかし平岩氏は、「『今日何する?』という会話が大事」と述べ、自分で決めたことに自分で責任を取ること、近所の人との関わりの中で自立したり社会のルールを覚えたりすることの重要性に言及した。

▲写真 図:「9割はアポなしでは遊ばない」 出典:サントリー次世代研究所「現代親子調査」2006年 © 特定非営利活動法人 放課後NPOアフタースクール

また、共働き家庭が増えたことを背景に、学童保育のニーズは急速に拡大。施設数が追い付かず、待機児童数は右肩上がりである。平岩氏は「実際には申請すら諦める人もいる」と述べ、増加し続ける需要に供給が対応しきれていない現状を指摘した。

▲図:「増え続ける学童保育の待機児童」 出典:全国学童保育連絡協議会 2018年 © 特定非営利活動法人 放課後NPOアフタースクール

更に平岩氏は「小1の壁」にも言及。「至れり尽くせりだった幼稚園に比べて、小学校はそうでもない」「保護者会が当り前のように平日にある」「子供が小学校に上がったら短時間勤務は終わり。『もっと働けるはず』という職場の目もある」などと述べ、子供が小学生になる段階というのは働く親にとって難関であることを指摘した。

▲写真 ©ヒマナイヌスタジオ

学童保育に類似したものに、文部科学省が進める「放課後子供教室」がある。地域の人などボランティアを中心に小学校の教室を使って放課後のプログラムを組むこの取り組みは、実は全国で約半数の小学校で進められている。しかし活動の頻度が少なく認知度が低いことが課題。平岩氏も「学童保育の代わりになるようにするには、毎日やらなければならない。そういう意味ではまだまだこれから」と述べた。国は、厚生労働省が進める学童保育と文部科学省が進める放課後子供教室の連携を進める「放課後子ども総合プラン」も展開している。

番組では日本の子供の自己肯定感の低さを示すデータも紹介。平岩氏も自身の経験を通して、子供のチャレンジ精神の低さを実感したと言う。更に平岩氏は、チャレンジ意欲の無さは自己肯定感の低さに起因するのではないかと指摘した上で、「大人が『あれはだめ、これもだめ』と言うことが増えている。でも例えば、時間を守るとか忘れ物をしないとか、大人も同じ出来ない側にいるのだから、『なんで出来ないの』という言い方はしないようにしている」と述べた。

▲図:「日本の子供の心の課題」 出典:日本青少年研究所「高校生調査」、ユニセフ「子供の幸福度調査」 © 特定非営利活動法人 放課後NPOアフタースクール

▲写真 ©ヒマナイヌスタジオ

放課後NPOアフタースクールの特徴としては、

①学校で開催:基本的にはその学校の生徒が対象

②いつでもだれでも受け入れ:学童保育は共働き家庭の子供を対象にしているが、アフタースクールは誰でも参加可能

③市民先生のプログラム:大人も含めた市民が集う場

の3点が挙げられ、地域密接型の放課後子供教室の特性と、毎日子供をしっかり預かるという学童保育の機能を併せ持つ。国費で運営され社会のインフラとして確立しているアメリカのアフタースクールを手本に、体制を整えている。学校の先生が見つけられないような子供の良い所を地元の人が見つけてあげる機会があれば、自己肯定感が上がるかもしれない。

人生100年時代と言われる現代社会で、様々な大人に出会い多様なロールモデルを知ることは大切だと言う。また、大人が子供に経験を話すことで救われることがあるとも指摘。更に、失われつつある地域の結びつきを強めるという意味では、安全面でも大きなメリットがある。

▲写真 アフタースクールの様子 出典:© 特定非営利活動法人 放課後NPOアフタースクール

しかし、平岩氏は「使いたい部屋を思うように貸してもらえなかったり、十分な部屋数を確保出来なかったりする」と述べ、学校との交渉は簡単ではないと話した。「公立の学校で開催する場合は行政と話し合うが、自治体によって温度差がある。東京以外のところでは、未だに共働き家庭に対する理解が低かったりもする」と述べ、行政との連携の難しさに言及した。だからこそ発信力がある東京でアフタースクールを活発にしていくことで、マンパワーが必要な地方に出向いて各自治体の理解を深めるようにするなどの努力が必要だと話した。

▲写真 ©ヒマナイヌスタジオ

今後の方向性としては、「放課後を価値ある時間として捉え直す」ことが始まりだと言う。「今は安全性の確保など最低限のことに留まっている。今後は放課後を発展的なチャンスの時間と捉えて、どうやって子供たちの創造性を育むか、どうやって得意なことを見つけていくか、その為にはどうやって時間を使うか、を考えるのが大事」と述べ、フィールドワーク的な授業を多く取り入れていく姿勢を示した。「自由・多様・創造」をキーワードに、放課後の価値を捉え直すべきだと改めて主張した。

 

(本記事は、Japan In-depthチャンネル 2019年4月22日放送の内容を要約したものです。放送アーカイブはこちら

トップ写真:©Japan In-depth編集部


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