[朴斗鎮]<「河野談話」の解釈>萩生田光一議員の分を超えた「政府と異なる個人的見解」に疑問
安倍晋三首相は14日の参院予算委員会で、従軍慰安婦問題をめぐり旧日本軍の関与と強制性を認めた1993年の河野洋平官房長官談話について、自民党の有村治子氏への答弁で「安倍内閣で見直すことは考えていない」と表明した。
首相は、従軍慰安婦問題に関し「筆舌に尽くしがたい、つらい思いをされた方々のことを思い、非常に心が痛む」と語った。過去の植民地支配と侵略を認めた95年の村山富市首相談話にも触れ「歴史認識については歴代内閣の立場を全体として引き継いでいる」と強調した。
ところが、自民党総裁特別補佐の萩生田光一衆議院議員は、3月23日フジテレビ「新報道2001」に出演し、日本軍の慰安婦動員に謝罪した河野談話に関して、「新しい事実が出てくれば新しい談話を発表すればいい」と、河野談話の検証により新たな事実が判明した場合、安倍首相が河野談話を否定するかのごとき発言を行なった。
この発言に対して、菅義偉内閣官房長官は翌24日、萩生田氏の発言は個人的見解であるとし、河野談話を「検証はするが、見直すことはあり得ない」と直ちに表明した。
これまでも、公式的な日本政府見解をしばらくすると非公式な行動や言動で覆し、日本外交を複雑にしてきた未熟な政治家たちの発言はあったが、これほどあからさまに行なった例はない。
今、世界情勢が複雑となる中で、韓日の不協和音が、日本の安全保障にとっても、日米同盟の強化にとってもプラスとならないと判断し、改善への意思を表明した安倍首相の発言に「注釈」をつけ「解釈」する萩生田光一氏は一体何様のつもりなのだろうか。分をわきまえないにもほどがあるといわざるを得ない。
萩生田氏が首相や官房長官の発言に対して、あえて異なる個人的見解を「公言」したいのであれば、それが政府の意向と誤解されないよう、せめて自民党総裁特別補佐を辞してから行なうべきであろう。
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【プロフィール】
1941年大阪市生まれ。1966年朝鮮大学校政治経済学部卒業。朝鮮問題研究所所員を経て1968年より1975年まで朝鮮大学校政治経済学部教員。その後(株)ソフトバンクを経て、経営コンサルタントとなり、2006年から現職。デイリーNK顧問。朝鮮半島問題、在日朝鮮人問題を研究。テレビ、新聞、雑誌で言論活動。主な著書に、「北朝鮮 その世襲的個人崇拝思想−キム・イルソンチュチェ思想の歴史と真実」「朝鮮総連 その虚像と実像」など。その他論考多数。