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.国際  投稿日:2019/4/28

中国の目をみはる膨張ぶり 平成時代の世界2


古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視 」

【まとめ】

中国「経済の急成長」と「軍事の急拡大」を基に国際的な影響力を増強。

GDP89年の4,600億ドルから18年には135千億ドルへ。

・国防費は89年に180億ドル、18年には1,800億ドル。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=45466でお読みください。】

 

思えば、私は平成時代全体のほぼ30年間、日本の外部にあって、日本に向けて記事を送るという国際報道活動にあたった。その間、外国に住んできた。日本に戻ることも頻繁にあったが、多くの年月、拠点は海外だった。

平成時代の幕開け、1989年1月にはこの連載記事の1回目ですでに書いたように、ロンドンに駐在していた。だがその年の夏以降、古巣ともいえるアメリカの首都ワシントンに戻った。産経新聞ワシントン支局長となったわけだ。

私はワシントンには毎日新聞の記者時代にすでに通算6年ほども滞在していた。もちろん昭和時代だった。だから古巣という感覚があったわけだ。平成時代の最初のワシントン駐在は1989年から1998年秋まで、ちょうど10年も続いた

▲写真 アメリカ合衆国議会議事堂 出典:pixabay; haram Oh

私は1998年秋からは中国の首都の北京に駐在することになった。私自身にとっても、産経新聞にとっても、なんとも大きな変化だった。

さてこの報告では平成時代の国際的に重要な変化として3つを提起するつもりである。

その第1はすでに書いたように東西冷戦の終わりだった。ソビエト連邦の解体、つまりアメリカとの対決の末のソ連共産党政権の敗北と呼んでもよい。

さて平成時代の世界の第2の激変は中国のグローバル規模での膨張である。思えば、平成元年の 1989 年に中国共産党政権が天安門広場での自国民の大弾圧を断行して、国際的に孤立してからちょうど30年、平成時代の全ての時期に重なる歳月を経て、中華人民共和国は2019年の現在、超大国のアメリカと正面から対決するに至った。この現実は中国のグローバルな膨張そのものを象徴すると言えよう。

▲写真 天安門広場 出典:pixabay; KAI SONG

私自身はこの期間の出発点から3分の1にあたる1998年末から2年ほど、産経新聞特派員として北京に住んで、中国の内外での急成長、急拡大を実感した。

産経新聞記者の北京駐在というのはなんと31年ぶりだった。産経新聞がそれまでの31年間、台湾に支局を保ち、北京側がらのその閉鎖の要求を撥ねつけていたため、中国本土への特派員の駐在を認められなかったのだ。だが1998年には北京政府はその政策を変えて、産経新聞にも台湾支局をオープンにしたまま、北京への特派員駐在を許可したのだった。

ただし中国政府が断固として守る「一つの中国」の原則に沿って、産経新聞の北京のオフィスは中国総局と呼ばれ、台北は台北支局とされていた。私がその初代の産経新聞中国総局長となったわけだ。私はそれまで中国での取材の経験はなかった。中国語もできなかった。そんな私があえて31年ぶりの産経新聞の北京駐在特派員に選ばれたのは、私のそれまでの中国圏以外での長年の報道体験を買われたからのようだった。中国をよく知らないがゆえに、中国政府に遠慮をしすぎる報道がかえってない、という効果を期待されたのだろう。

産経新聞の記者の北京駐在を認めるという措置も中国の大国化、国際化を示していた。そして中国の国家としての平成時代の膨張はもの凄かった。経済面だけをみても、中国の国内総生産(GDP)は1989年には4,600億ドルだったのが2018年には135千億ドルとなった。35倍もの増加だった。

一方、日本はこの間のGDP1989年には3兆ドル、2018年には5兆ドルと、30年間にわずか1.6倍の増加に過ぎない。日本のGDPは平成元年に中国の7倍ほどだったのが平成 30年にはすっかり逆転され、3分の1近くまで縮小してしまったのだ。なにしろ中国は今ではアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国なのである。

しかも中国は経済面では世界貿易機関(WTO)の規則を破る外国の高度技術の収奪や知的所有権の盗用などをも続けてきた。

軍事面でも中国の膨張はショッキングなほど凄まじかった。中国は公表する国防費だけでも1989年以来、毎年いずれも前年比10パーセント以上、2桁増を続けてきた。89年にドル換算で180億ドルだった中国の国防費は2018年には1,800億ドル近くと、10になった。

▲写真 中国の99型主力戦車 出典:Wikimedia Commons; Max Smith

他方、日本の防衛費は1989年には350億ドルだったのが2018年には470億ドルと、3割ほどしか増加していない。この支出の変化は中国に比べると、89年には約2倍だったのが2018年には4分の1になってしまった結果を意味している。

しかも中国は軍事経費の実態は秘密であり、公表する部分は実際の半分以下という国際評価が定着している。

▲写真 天安門広場を歩く人民解放軍 出典:Flickr; Times Asi

中国はこうした経済の急成長と軍事の急拡大を基礎にして、国際的な行動力、影響力を増強してきた。近年の対外的戦略のスローガンをみても「中国の夢」「平和的台頭」「中国の復活」「一帯一路」などグローバルな野望を打ち出してきた。

中国は現実には軍事力をテコにして南シナ海での領土の無法な拡大、東シナ海での日本の尖閣諸島領海への不当な侵入などを断行してきた。

この中国の略奪的な膨張に対してアメリカのトランプ政権がついに正面からの対決へと対中政策を根幹から硬化させたことは周知の通りである。

中国は日本に対しても尖閣諸島の略奪の姿勢に加えて、国内での反日の教育や教宣の徹底、日本企業への圧迫や締めつけなど、敵性のにじむ態度を厳しくしてきた。アメリカから反撃を加えられると日本への対応では微笑外交に転じてきた傾向も目立つが、実際の日本への強圧政策は変わってはいない。中国の平成30年間における拡大には目をみはらされたのである。

につづく。はこちら。全3回)

トップ写真:中国・上海の高層ビル群 出典:pixabay; niko0001


この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト/麗澤大学特別教授

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「ODA幻想」「韓国の奈落」「米中激突と日本の針路」「新型コロナウイルスが世界を滅ぼす」など多数。

古森義久

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