無料会員募集中
.国際  投稿日:2019/5/14

トランプ訴追逃れの独裁政治


大原ケイ(英語版権エージェント)

「アメリカ本音通信」

【まとめ】

・トランプ氏に迫りつつある脱税等の追求。

・何より嫌がっているのは納税歴の公開。

・トランプ氏、独裁路線にあこがれ。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=45746でお読みください。】

 

来月末のサミットの頃は、開催国の名前やその国の首相がまったくニュースにならない事態になるかもしれない。アメリカのドナルド・トランプ大統領がしかけた中国との貿易戦争が泥沼化し、相変わらずミサイルを飛ばしてくる北朝鮮非核化への交渉は続いているとウソをつき、日々ツィッターで野党のデモクラッツや自分の元を離れた側近を罵倒しているだろうからだ。

トランプが「違法移民の親子引き離し」「移民締め出し」「イランとの戦争」「楽勝予定の中国との貿易戦争」などとわかりやすいキーワードを並べ立てて、国内の目をそらそうとしているもの、それは自身の身に迫りつつある、脱税や司法妨害への追求だ。

黒塗りだらけのマラー報告書でトランプ自身の罪は問われることなく(そもそも司法省では大統領は何をやっても訴追の対象にならないことを前提に調査していた)、今やこのバトルは大統領府と議会という、三権分立された行政と立法の戦いに発展している。

トランプ政権は、今後米議会の各委員会の書類提出から証人喚問まで、すべての要求を却下すると息巻いている。本来はこういった手続きは速やかにすべて提出・出頭が義務付けられている。だが問題は、これまで立法機関にここまで真っ向から反対した行政機関がなかったため、いずれはもう一つの機関である司法の場で決着がつくことになろう

▲写真 トランプタワー 出典:Pixabay; Quinn Kampschroer

中でもとりわけトランプが拒否反応を示しているのが納税歴の公開だ。大まかな過去の数字はニューヨーク・タイムズがすっぱ抜いたが、それによると1985年から1994年の間に117000万ドルの損失を出したという。表向きにはニューヨークの不動産や世界中のリゾート、カジノなどを買い漁り、いかにも羽振りがよさそうに見えた時期なのだが、実のところは台所は火の車で、銀行の借金を踏み倒し、請求書には難癖をつけて未払いで済ませてきた10だったのだ。

いずれはこういった記録が日の目を見るにしても、法廷の手続きには時間がかかる。実はそれこそがトランプの目的で、今は自分が取引してきたドイツ証券やバンク・オブ・アメリカ、監査を担当してきたマザーなどに対し、書類や情報を当局に渡すなと訴訟をいくつも起こしている。大統領の地位にある限りは訴追されないことがわかったので、再選に向けて時間稼ぎをしているというわけだ。

▲写真 プーチン大統領とオルバーン首相 出典:ロシア大統領府

そして既に再選後も任期が切れないように画策をしている。ハンガリーのオルバーン首相に急接近しているのも、ロシアのプーチンやベネズエラのマドュロをサポートしているのも自分も同じような独裁者になりたいという腹づもりがあるからだ。だからもし安倍首相がトランプの気を引きたいのなら今のまま独裁路線を突っ走ってそれをアピールするのが近道だろう。

 

トップ写真:トランプ大統領 出典:アメリカ沿岸警備隊の公式ブログ

 


この記事を書いた人
大原ケイ英語版権エージェント

日本の著書を欧米に売り込むべく孤軍奮闘する英語版権エージェント。ニューヨーク大学の学生だった時はタブロイド新聞の見出しを書くコピーライターを目指していた。

大原ケイ

copyright2014-"ABE,Inc. 2014 All rights reserved.No reproduction or republication without written permission."