ゴーンと司法
.国際  投稿日:2019/11/26

トランプ弾劾プロセス進行中


 大原ケイ(英語版権エージェント)

「アメリカ本音通信」

 

 

【まとめ】

・外交官、現役軍人が異例の証言。トランプ大統領、ツイッターで反撃。

・「交換条件」について証言。ペンス副大統領が「裏外交」を認知とも。

・共和党が要請した証人2人の証言も結果、トランプ大統領に不利に。

 

2週にわたり5日間、35時間をかけ、12人の参考証人への聴聞によって、ドナルド・トランプ大統領の弾劾調査の公聴会が始まった。以下はそれぞれの証言者のまとめ。

 

1日目

ジョージ・ケント ヨーロッパおよびユーラシア担当首席公使

ウィリアム・テイラー 駐ウクライナ米国代理大使

 

合わせて50年以上の勤務になるベテランの外交官2人は、マリー・ヨヴァノヴィッチ駐ウクライナ大使が今年5月に急に呼び戻された後に、ウクライナ担当の後継者として現職に任命された。

 

アメリカの対ウクライナ外交方針としては、2014年ウクライナで起きた「威厳革命」から引き続き、政権内にはびこっていた汚職を一掃し、ロシアと戦争中のウクライナ軍をサポートするために尽力していたが、その表向きの使命とは別に、ドナルド・トランプの個人弁護士であるルドルフ・ジュリアーニが率いるirregular channel(「裏外交」)があることに気づき、米下院議会情報委員会による弾劾調査の聴聞に応じた。

▲画像 米下院情報委員会公聴会(2019年11月13日)で宣誓するジョージ・ケント氏(左)とウィリアム・テイラー氏(右)

出典: YouTube; House Intelligence

 

ケントは親子4代にわたる外交官一家の出で、2004〜2005年のウクライナのオレンジ革命の際もキエフに赴任していた。「道義に沿って汚職をなくそうとすると、汚職に手を染めている者が怒り出すのは避けられない」という名言を残した。

 

テイラーはウェストポイント(米陸軍士官学校)卒のエリート軍人で、上位5位の成績ながら、自らベトナム戦争の前線を志願し、帰国後ハーバード大学ケネディー校で行政学をおさめ、その後は米各省で世界中を飛び回ってきた人物。

 

質疑応答中、バリトーンの落ち着いた彼の声を聞いたメディア関係者の間で、かつてのCBS局の名アナウンサー、ウォルター・クロンカイトを彷彿させるとして、ツイッターのトレンドとなった一幕も。

 

2日目

マリー・ヨヴァノヴィッチ 前駐ウクライナ大使

 

ヨヴァノヴィッチは外交官、米政権へのアドバイザーとしてアルメニアやキルギスに赴任後、2016年から駐ウクライナ首席大使としてキエフに赴き、同国が汚職をなくす努力を促していた。しかし、清廉潔白でジュリアーニ率いる裏外交に協力しないと判断されたためか、「トランプ大統領の悪口を言っている」、「ユーリィ・ルツェンコ前検事総長に検挙するなという人物リストを渡した」などというデマを流され、5月に急に本国に呼び出され、任務を解かれた。

▲画像 米下院情報委員会公聴会(2019年11月15日)で証言するマリー・ヨヴァノヴィッチ氏

出典: YouTube; House Intelligence

 

ユダヤ系であるため、両親とともにソ連やドイツを追われ、アメリカに移住、13歳の時に市民権を獲得した。ロシア語に堪能でプリンストン大学やモスクワのプーシキン研究所で学んだ。

 

聴聞中は終始柔らかな物腰で、トランプ大統領には任意に大使の人事を決定する権限はあるが、いわれのない中傷を流す必要はなかったはずと証言。公聴会開催中に、トランプ大統領はさらに彼女を侮辱するツイートをし、アダム・シフ議長がそのツイートを読み上げると「身の危険を感じる」と答えた。ヨヴァノヴィッチが退場する際には委員たちから珍しく拍手が起こった。

 

3日目 午前

アレクサンダー・ヴィンドマン 陸軍中佐

ジェニファー・ウィリアムズ マイク・ペンス副大統領付きアドバイザー

▲画像 米下院情報委員会公聴会(2019年11月19日)で宣誓するジェニファー・ウイリアムズ氏(左)とアレクサンダー・ヴィンドマン氏(右)

出典: YouTube; House Intelligence

 

7月25日にトランプ大統領がウクライナのヴォロドミール・ゼレンスキー大統領に電話をかけた際、軍事支援を訴えるゼレンスキーに対し「そこでお願い事があるんだが」とquid pro quo(交換条件)を出したとされる件で、その会話を聞いていた人物2人が召喚された。

 

イヴァノヴィッチ前駐ウクライナ大使と並び、公聴会に出席する前からトランプ大統領や保守系メディアによって中傷を受けていたヴィンドマン中佐は、米国家安全保障会議におけるロシア担当首席アドバイザー。陸軍の軍人として韓国やドイツに赴任後、イラク戦争に赴いた際、爆撃によって負傷、パープルハートを授与されている。議会で証言する現役の軍人は軍服を着るのが正装だが、トランプや保守派メディアはそれを「わざとらしい」と非難した。

 

冒頭陳述でヴィンドマンはウクライナで幼い頃に母を亡くし、兄弟3人(双子の弟も)を連れて父が40年前にアメリカに移住したことに感謝し、「真実を話すためにここに来ているので心配しなくていい」と伝えた。アメリカに対し忠実なのか、「ディープステート」と呼ばれる反トランプ派の役人なのではないかと中傷を受けていた。質疑応答中にも、「ここはアメリカ。私と兄弟たちが命をかけて尽くし、守ってきた国です。ここでは『正しい』ことが重んじられる」と発言した際に場内に拍手が起こった。

 

一方のウィリアムズは、トランプ大統領の電話会談内容を重ねて証言するとともにペンス副大統領もウクライナとの裏外交の内容について知っていたことを明かした。

 

3日目 午後

カート・ヴォルカー NATO大使、9月末に辞任

ティム・モリソン ロシアとヨーロッパに関する共和党アドバイザー、8月に辞任したフィオナ・ヒルの後継だったが、10月末に辞任

▲画像 下院情報委員会の公聴会(2019年11月19日)で宣誓するカート・ヴォルカー氏(左)とティム・モリソン氏(右)

出典:YouTube; House Intelligence

 

この2人は共和党からの要請で聴聞に応じた2人で、「交換条件はなかった」とトランプ大統領側に有利な証言を期待されていたが、そうはならなかった。

 

ヴォルカーは辞任する前はウクライナとの交渉での条件には気づいておらず、その証拠はなかったが、その後の報道などを受けて知るに至ったと証言。トランプ側が意図していた「ウクライナの企業ブリスマ社の汚職を調査する」のは、「(次期大統領選で最大のライバルとなるであろう)ジョー・バイデン前副大統領の息子であるハンター・バイデンがブリスマ社の理事に名前を連ねているので『スキャンダルを匂わせることだ』とはグーグル検索するまでわからなかった」とした。

 

モリソンは長年の忠実な共和党員として、トランプ側の「裏外交」は違法ではないと主張しながらも、交換条件はあったと証言した。

(後半に続く)

 

トップ写真 トランプ米大統領(2019年11月20日)

出典:Flickr; The White House(Public domain)


この記事を書いた人
大原ケイ英語版権エージェント

日本の著書を欧米に売り込むべく孤軍奮闘する英語版権エージェント。ニューヨーク大学の学生だった時はタブロイド新聞の見出しを書くコピーライターを目指していた。

大原ケイ

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