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.政治,.社会  投稿日:2019/6/16

「福島の魅力を世界へ」森まさこ参議院議員


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

Japan In-depth編集部(佐田真衣)

編集長が聞く!」

【まとめ】

・福島の復興は道半ば。風評被害対策への取り組み必要。

女性活躍、少子化対策、災害対策危機管理を福島のブランドに。

・若者の力で世界に福島の魅力を発信。

 

【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては全て表示されないことがあります。その場合は、Japan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=46310でお読みください。】

 

今回は自民党森まさこ参議院議員にインタビューを行なった。まずは7月に行われる参議院選挙について聞いた。

野党は、統一候補として県議出身の水野さち子氏を対立候補に立てた。森氏は今回の選挙について、3年前の参院選で現職閣僚が野党統一候補に敗れたことに触れ、「油断はできない。熾烈な戦いになる。」との見方を示した。また、「野党は普段国会で主張していることがバラバラで、法案に対する反対・賛成の態度も違うのに選挙になると一緒になるというのはどうなのか。」と野党共闘に疑問を呈した。

 

■ 福島の復興

さらに福島の復興はまだ道半ばとの見方を示すとともに、「福島に国から、5000億円超の復興予算が来ている。復興はしなければならないし、どんどん進んでいる。しかし、野党の方々は国会で反対ボタンを押している。そういうことに対してどのような評価がなされるのか。」と述べ、有権者の客観的な判断に期待感を示した。

森氏は震災後に、自然災害やテロといった国家的な危機に対応する資格であるエマージェンシーマネージャー(国際危機管理官)という資格を国際危機管理者協会(IAEM)から日本人で初めて取得している。IAEMは米国など約50カ国から、政府レベルの危機管理担当者や専門家、ボランティアらが参加する国際的な非営利職業教育団体で、会員数は約1万人。危機管理に関する情報交換や次世代への教育などに取り組んでいる。

森氏は世界中のエマージェンシーマネージャーたちと情報交換する中で、福島の復旧・復興は世界的にも早いとの評価を得ていることを挙げた。特にインフラ部分の復旧は早く、日本の「復興する技術、土木建築技術、予算の割り振りなどは世界に誇ることができる」と述べた。

▲写真 ⒸJapan In-depth編集部

 

■ 風評被害と風化

しかし福島に未だ戻れない被災者や、農業や観光業に従事していた人は風評被害に悩まされ、仕事にならないという問題があることも明らかにした。消費者弁護士出身であり、風評被害問題に対応してきた森氏は、風評被害は長期にわたることを指摘。震災直後は、観光や視察、インフラ整備関係者や労働者が福島に来たため、ある程度経済が回っていたが、長引く風評被害の影響で地方創生となると他の市町村との競争上不利な面があることから、てこ入れが必要との考えを明らかにした。同時に、県民の心のケアといったソフト面の支援にも力を入れていかねばならない、と述べた。

また、韓国が福島産の農産物を輸入禁止にしていることに触れ、日本国内でも福島県産農産物は全量検査され、市場に出回っているものはNDNot Detectedつまり、放射性物質が検出限界値未満であることなどに対し社会の理解が深まっていないことや、放射線に対する基礎知識不足を指摘した。その上で、リスクリテラシーを学ぶことの大切さを強調すると共に、日本国内のみならず、国際的にも福島の復興具合や放射能についての情報を発信することによって、世界の関心や理解度をあげる決意を表明した。

 

■ 女性の活躍

森氏は女性活躍担当大臣を務めていた際、地方で使うことのできる地域女性活躍交付金という予算をつくった。福島県もこれを用いて女性起業家らをエンパワーメントするのための訓練教育を行なったり、男性起業家が自らの会社の中で次世代の社会を担う女性を育てる、いわゆる「イク(育)ボス」となり、同宣言を行なった県知事らを筆頭に講演活動を行っている。この事業は今も続いており、予算額も拡大している。

自民党の女性活躍推進本部長である森氏は、女性の生き方は多様であることを挙げ、働く女性のみならず、シングルマザーの様に立場の弱い女性や専業主婦で子どもの教育に頑張っている女性など、すべての女性が「自分の意思で選択したどの場所でも輝けるように、政策を用意していくことが大事だ」と述べ、女性支援政策の充実化が必要だとの考えを示した。

また、育児休暇を取りたい男性は80%にのぼるにも関わらず、実際に取得している男性は6%しかいないことに触れ、女性の活躍には男性の応援や協力が不可欠であるとし、「女性活躍が成熟すると、男性にとってもメリットが大きい。経済的にも子供の教育をしっかりやっていけるし、税収も上がり経済は良くなる。」と女性活躍の社会的メリットを強調した。

具体的な企業の取組みとして森氏は新潟県長岡市の建築金具を作っている株式会社サカタ製作所の取り組みを紹介。この会社は、育児休暇率100%、残業ゼロを実行したところ売り上げが伸びて社員の出生率も増加し、優秀な若者が入社するようになったという。この企業は2019年のホワイト企業アワード最優秀賞を受賞している。

次に森氏は、福島県の女性の県外流出率が高いことを上げ、福島こそ女性活躍日本一の県にしたいと述べた。「女性が学んだ知識を生かして働いて夢を叶え、社会に貢献してお給料をいただくという幸せを享受」できることが大切だとの考えを示した。また、女性の就業率が上がると子供の教育レベルも上がる例として、シンガポールを挙げた。

また、片親一人で育児を行うワンオペではなく、「お父さんとお母さんと家族で子育て、地域で子育て」を目指すことが児童虐待防止にもつながるとの考えを示した。

▲写真 ⒸJapan In-depth編集部

 

■ 若者の政治参加

森氏は、これまでは政治家が演説しそれを若者が聞いて学ぶのではなく、森氏ら政治家が若者のアイデアを実現させることを目指すため、新しいプロジェクトを立ち上げたことを紹介した。若者が社会を動かす人=政治家を選ぶことを目指している。森氏はそれこそが選挙であるとした。

現在、インスタグラムのストーリー機能を利用し、彼らが持っている「福島」のイメージを撮影、専門のサイトに投稿、その動画を森氏が世界にアピールし、福島の魅力を伝え、世界中の人々を福島に呼ぶという「福島未来プロジェクト」がスタートした。福島第一原子力発電所の事故の時から止まってしまっている福島の印象を若者たちのインスタ動画によって変えていこうとしている。

ウーマノミクスという言葉が誕生したように女性の社会進出に対する姿勢は変化してきてはいるものの、未だに女性が仕事をすることに対して肯定的ではない地域もあるという。森氏は「みんなの声を代弁するものが、女性じゃなきゃいけないし、女性も男性も高齢者も若者もいろいろいるということでイノベーションが起きていく」と述べ、女性活躍、少子化対策、災害対策・危機管理を福島のブランドにしていきたいと述べた。

トップ写真:ⒸJapan In-depth編集部

訂正:以下、文中に間違いがありましたので訂正しました。(2019年6月16日16時38分

訂正前:福島県の女性の県外流失率が高い

訂正後:福島県の女性の県外流出率が高い

 


この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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