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.政治  投稿日:2022/1/28

「改選倍増の12議席を狙うー参院選」日本維新の会総務会長柳ヶ瀬裕文参議院議員


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

Japan In-depth 編集部(黒沼瑠子・油井彩姫)

編集長が聞く!」

【まとめ】
・次期参院選では大阪・兵庫・京都・神奈川・東京の5戦略重点区含め勝てる候補者を擁立し、全体で現有倍増の12議席を狙う。

・候補者を通して『維新スピリッツ』と多様性を強調したい。

・通常国会ではリーダーシップと政権担当能力をアピールする。

 

昨年の衆院選で党勢を回復し41議席を確保した「日本維新の会」。来るこの夏の参院選に向けての戦略について、総務会長である柳ヶ瀬裕文参議院議員に話を聞いた。

 

■ 参院選に向けての戦略

安倍:夏の参院選へどのような戦略をたてているか?

柳ヶ瀬氏:参議院選挙に向けては、複数区についてマストで候補者を擁立していく。大阪・兵庫・京都・神奈川・東京の5戦略重点区はもちろん、他にも埼玉、千葉、愛知も含めて(議席を)取れそうな所は結構あるので、そういったところで、勝てる候補者を擁立することが我々の戦略だ

戦略重点区とは、(党の)支持率が高く、複数区なので勝てる可能性が非常に高い区のことだ。他にも複数区はあるが、取りこぼしてはいけないという意味で戦略重点区という言い方をしている。大阪は例外的に2人いるものの、複数区なので基本は1人立てて、その1人に確実に勝ってもらう必要がある。

戦略重点区の候補者はまだ決まっていないところが大半で、今は何人かいる候補者の中から選定をかけている段階だ。現在、党の支持率がかなり高止まりしていて、維新の会から出るのを希望する候補者が増えているので、そういう意味でいい候補者がいるのではないだろうか、と考えている。慎重に時間をかけて選定していきたい。

どのような候補者を立てるかについては、公募から出たいという問い合わせが非常に多く、ひたすらチェックしているが、その中でも注目されるような人が必要だと考えている

もちろん早く決めたいとは思うが、著名人は仕事の状況など色々なことがあると思うので、直前にならないと決まらないと思われる。我々の悩みはそういった著名な人々をどこまでひっかけていくのか、それとも著名ではないけれども堅実に活動して票を取っていくのか、という問題になる。

安倍:参院選でいわゆる芸能人が候補者になることについてはかねて批判が強いが?

柳ヶ瀬氏:浮ついたタレントを出そうとは一切思わないが、多様な人材を取り込むという意味では、象徴となる人を呼び込むことによって、維新の多様性を理解してもらうきっかけにしたい。マッチョと揶揄され、男性目線な政党と誤解されているのでそれを打開したい。

安倍:参院選では候補者をどれくらいまで立てるのか、目標議席数は?

柳ヶ瀬氏:参議院で予算を伴う法案を提出できるのが21議席以上なので、21は取りたいと思っている。今、改選が6人で非改選が9人。改選議席の6人を倍増して12人になれば21人になる。なので「改選倍増」という言い方をしていて、これは射程圏内に入っていると思う。

ただそこには僕たち維新に対する思いとマッチした候補者(が欲しい)。これがずれてしまうと、「ん?」となってしまうので、浮ついたタレントの方とかを出すわけにはいかないな、と思う。

我が党では選対本部長は藤田文武幹事長だ。うちは権力の二重構造はやらないので、最終的には藤田幹事長が全てを仕切る。自民党などは選対本部長と幹事長が誰を出す、出さない、とかあると思うが、我々は一元化して、藤田さんが全て決める。もちろん松井さんと馬場さんの元で、だが。

私は東京維新の会代表でもあるので、維新の会代表としてこういう人を擁立するつもりだ、ということを藤田さん・松井さん・馬場さんと話合って色々と決めている。

安倍:維新の知名度が低い関東より東の地域に対するアプローチは?

柳ヶ瀬氏:支持率の傾向を見ると、これまでは西高東低という形だったのが、東京でもかなり立憲民主党に肉薄してきており、これまでなかったような現象だ。

我々も新三役を今回決めたが、音喜多駿参議院議員が政調会長私が総務会長となり、東京維新の会幹事長と代表が新3役の2人を占めるということから、(国民に)わが党の全国政党化していこうという意思を見ていただけると思う。

これまで党としては大阪中心の政党で、橋下・松井・吉村の3枚看板を打ち出していて、特に吉村さんは東京でも受けが良かったが、東京で活動している人間を幹部に取り立てるというのはこれまで無かった。

よってこのことは特に東京で政治活動をしている人たちにとってはかなり衝撃的な事実となったはずだ。維新は本格的に東京でやろうとしているのだな、と思われることになったし、東京で、維新で(参院選に)出たいという方も相当増えている。これらのことから一定程度のメッセージが(有権者に)届いているはずだ。そこからどんどん地域住民の方に波及していかなければならない。今はその段階だ。

私は総務会長として党全体の広報も担っていて、これまでの国会議員団中心の発信から、地方もしっかり取り上げていく。発信の仕方もそういう意味では色々と気を使っている。

支持率が東京でも高止まりということは、これまでにない現象だった。大阪はずっと高止まりしているが、東京では直前に上がって選挙直後には下がるというのがいつもの傾向だった。しかし今回は衆議院選挙が終わっても東京も高止まりしていて、そういう意味で一定程度、期待されていると思う。では大阪のような確固たる高止まりなのかというとそうではなくて、ある意味、バブルの高止まりでもあると思うので、今回通常国会に維新がしっかり答えていかないとしぼんでしまうだろう、と危機感を持っている

安倍:重点地区以外の地域の知名度はどうやって上げていくか?

柳ヶ瀬氏:候補者が出ていると維新に対する認識が変わるので、できるだけ(候補者を)立てたい。それは比例票の弾みになるだろう。しかしその時注意しなければいけないのは、誰でもいいわけではないということ。その候補者がちゃんと「議員の利益は後にする」という、「維新スピリッツ」を持っているのかどうかということ、それをちゃんと県民の皆さんに表現してアプローチできる人なのかどうかを慎重に選ばなくてはいけない。


ⓒJapan In-depth編集部

■ 通常国会での論戦について

安倍:今回の通常国会で目玉として考えているのは?

柳ヶ瀬氏:前回、文通費(文書通信交通滞在費)の問題を我々が主導してきて積み残しとなっている。こういった、使い道がいい加減な税金の問題は、国民の皆さんも注目するところなので、しっかり突っ込んでいきたい。

また、我々がずっと訴えてきた日本大改革プランというのがある。ベーシックインカムの導入等、僕たちが自民党に代わって今のツギハギだらけの社会保障や成長戦略を一掃するような対案だ。これは成長戦略でもあるし、社会保障の新たな政策でもある。この対案をしっかり持っていることを示すのが今国会だと思っている。そのことによって維新は政権担当能力があるんだ、自民党では変えられない構造を改革するんだとご理解いただくのが、今国会でのチャレンジだ。

■ 国民民主党との距離感

安倍:国民民主党が参院選に向けて都ファ(都民ファースト)と協力しようと近づいているが、どう考えるか?

柳ヶ瀬氏:支持率が伸びないから誰かとくっつけばいいという発想は間違っている。そのことによって得られる票もあるが、失うものも大きい。そういったことを国民の皆さんはよく見ていて、「これ、選挙目当てなんだな」と気づくだろう。もともと同じ思いでなかったから別れたのにまたくっつくというのもよくわからない。国民からは理解されないのでは、と思う。

我々は政策面では国民民主党さんと是々非々でやっていくが、党が一緒になるという話をしている訳ではない。国民民主党さんが考えてやっていることだと思っている。そういったことよりも、『日本維新の会』の党勢をいかに加速させていくか、ということの方が重要だ。

■ 多様性について

安倍:多様性とおっしゃったが、今後の候補者は女性LGBTQについても重視しているのか?

柳ヶ瀬氏:それは極めて重要なことだと思う。維新の見られ方に対して、先ほどもマッチョと思われている、といったが、僕たちはそれをネガティブな側面ではなく、もっとポジティブにしたいと思っている。(極右などと思われることについて)良しとしていない。我々は『右でも左でもなく前へすすむ政党』であり、イデオロギー政党ではない。今ある課題をどうやったら解決できるのか、現実的に、そして合理的に考えていくというのがわが政党なのに、だいぶ誤解されている認識はある。しかし支持率を見るとその誤解もだいぶ解きほぐされてきたように思う。やはり吉村さんの登場によって、石原慎太郎さんが共同代表だった頃のイメージからはだいぶ変わったと理解してもらえると思う。
右の政党だとおもってうちに来られる方もたくさんいるが、我々はそういうイデオロギーで動いているわけではなく、現実的な国益で考えてきた

そういう意味で言うと、LGBTQなども含めて我々は多様性に関して極めて寛容な政党であり、それらは重要な価値観だと思っている。パートナーシップ条例などは大阪ですでにやっているし、夫婦別姓の問題なども積極的に取り組んでいる政党であるにも関わらず、そういう部分ではあまり理解されていない。

自民党は右から左まで取り込むという戦略で、色々な方がいると思うが、我々は多様性ということを明らかに高らかに打ち出しているのでそういう政党であるということは間違いない。

現実主義的に、現在どういった人たちがどういったことを悩んでいるのかを解決できるのならそれでいいと思う。例えば同性婚について、同性だから結婚できないってことで苦しんでいる方がいる訳で、(我が党では)そういう人たちのためにどう解決すればいいんだろうと考えている。よりそういった選択ができる社会、より自由な社会を我々は守っていきたい。それが私たちが大事にしている価値観でもある。

 憲法改正について

安倍:憲法改正については積極的に進めていくのか?

柳ヶ瀬氏:結局自民党も憲法改正が党是だとしつつ後ろ向きである。それはウイングの広さや公明党との連立も影響しているだろう。我々はそんな事は関係なく、この国の国益のために変えなければいけない所はたくさんあるので、改正の議論は前に進めていく必要があると思っている。

憲法を守れば平和が守れるというのは違う平和を守るためには憲法を変えなければならないと思っているし、多様な価値観を守るためにも憲法を変えなければいけないと思っている。

今の統治機構のあり方がアップデートされなければ、国際社会の中でとても生きていけない状況だ。こういった統治機構を新たなものにしていくという意味でも変えていかなければならない。

 コロナ対策について

安倍:オミクロン株への対応についてもっと追及してもいいのでは?

柳ヶ瀬氏:昨日、一昨日の予算委員会でも我が党はかなり追及している。感染症法を2類から5類へ、という話は国会では誰も言わなかったのに、我々は明確に打ち出してきた。5歳以下のワクチン接種は慎重に、というのも誰も言わない。言いづらいことだが言っている。我々は忖度しない、空気も読まない、本当に必要なことを言っている政党なので、それによって批判を受けたとしても大事なことを言っていく。これが我々のスタンスなので、それによって票を失おうが気にしない、というのがとても良い所だと思う。

なぜそれができるのかと言えば、今の自民党にはリーダーシップがないが、わが党にはリーダーシップがあるからだ。例えば松井・吉村といった人たちは地方自治の実戦を経て、そこから出てくる課題を解決しなければならないという思いがある。そういったリーダーシップを持っている政党だ。

それがいいかどうかは色々な議論があると思うが、こういったコロナ対策においては批判を恐れていては何もできない、設置ばかりしていては感染対策ができない。だから決断し、それを実行しなければいけない。そこで強いリーダーシップが必要だ。自民党は強いリーダーシップをよしとしない政党なので、その辺が今の自民党の弱さ、限界だと思うし、その辺が我が党が支持率を維持できていることにも表れているのかなと思う。

 

(了。インタビューは2021年1月26日に実施)

トップ写真)©Japan In-depth編集部




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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