「北朝鮮:もうディールするしかない状況」松川るい参議院議員
安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
Japan In-depth編集部(坪井恵莉)
「編集長が聞く!」
【まとめ】
・早急に日朝会談を開催し、北朝鮮と関係を構築することが望ましい。
・韓国反日政策に対し、韓国国民への情報戦と国際世論戦を仕掛けるべき。
・イラン情勢、日本の貢献の余地は少ないが、米との交渉の橋渡しを期待。
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サウジアラビアの油田施設が何者かの攻撃を受け、その攻撃にイランの関与が疑われた事件は世界に大きな衝撃と動揺を与えた。緊迫した状況が続く中東情勢や、解決の糸口が見えない朝鮮半島情勢に対して日本はどのような対応を取るべきなのか、元外交官の松川るい参議院議員に話を聞いた。
安倍: アメリカとイランの対立の行方をどうみているか?
松川: 今世界的に一番動いているのは、イラン情勢。朝鮮半島が日本にとって最大の外交懸念事項であるように、ヨーロッパにとっての北朝鮮がイランである。
北朝鮮問題が米朝で膠着しているが、似たようなことが(中東でも)起きている。中東におけるアメリカの影響力が低下した結果、その空白を埋めているのがロシアとイラン。アジアにおいては中国が空白を埋めている。
北朝鮮はイランとは違って既に核兵器を50-60個作っていて、恐らくICBMもほぼ完成している。(北朝鮮については)もうディールするしかない状況にある。これは、トランプ大統領が戦争する気がないこと皆が分かってしまっているから。(北朝鮮は)アメリカから軍事的な攻撃を受けることはないと確信している。
トランプ大統領はG20サミットの後に、何も進展がないにも関わらず、金正恩総書記とDMZ(軍事境界線)を超えた。(その時)トランプは北朝鮮の核を容認する気だなと思った。日本も米朝間で(ディールの)見通しが立ったら、日本を敵にしないで、安定した関係を持っておくのが得であるという環境を作る(ことが大事)。
安倍: 安倍首相が首相の間に日朝関係に道筋をつける必要があるということか。
松川: そうならなかったときのシナリオが芳しくない。文在寅政権は極左、親北の非常に特異な政権。彼のアジェンダは南北統一と積弊清算。日韓関係はなかなか元には戻らない。
なぜ日本の輸出運用管理の見直しにこれだけ大騒ぎをして、国際世論戦を展開をし、日本に対して福島の件とかホワイト国外しなど含め過剰な対応をしているかというと、日本と戦って勝ちたいんだと思う。日本は無視するのが一番。でも、韓国は無視したらニューサンスバリュー(nuisance value:妨害もしくは嫌がらせ効果)を上げてくる。
日本はネット上にファクト(事実)を流す仕掛けをもっと考えるべき。それは韓国政府も韓国メディアも日本の主張を正しく伝えないからだ。アメリカには水面下でロビー活動をもっと激しくやるべきだ。放っておくとワシントンが韓国よりになってしまう。
安倍: GSOMIAが破棄され、在韓米軍も減少するかもしれない流れの中で、日本のミサイル防衛システムは見直す必要があるのではないか。
松川: 現在の防衛システムでは大量のミサイルは防げない。攻撃兵器であっても、防衛的に抑止力として使うのは世界の常識であり、憲法上問題はなく、必要なことだ。
▲写真 ©Japan In-depth編集部
安倍: 防衛システムを強化する「アクティブな防衛」を進めると同時に、早急に日朝会談を行い、北朝鮮にインフラ整備などの経済支援を行う、といった2正面作戦を考えるべきだということか。
松川: 中国とアメリカと共に日本も何らかのカードを北朝鮮に示す必要はある。絶対的な妙案がない以上、とりあえず日朝会談を行ってみても良いかもしれない。しかし、北朝鮮は日本の経済支援を念頭に置いた時にしか会おうとしないだろうから、それについて日本は考えておく必要がある。
日本は輸出の運用管理の正当化をしたいわけではない。徴用工問題の判決の解決を韓国政府にさせないと、日韓関係は破綻したままだ。韓国との関係は利害の不一致がないのに、日本外交の足を引っ張っている。
安倍: 徴用工の問題を日本から法的に干渉するのは出来ないのではないか。
松川: 確かに法的な干渉は出来ないが、日本企業に(行政処分が)執行されたら、韓国政府が補填するような合意を取り付けることは出来る。
安倍: サウジアラビアの油田攻撃について、西洋諸国がイランの関与を断定し非難するなど、イラン情勢が大きな問題になっている。日本が出来ることは何か。
松川: トランプ大統領はイランを攻撃したいのではなく、核兵器の製造につながらないより厳しい核合意をイランと結びたい。日本がこの合意を取り付けることが出来たらすごい。
イランが関与しているとしたら、イランも大きな賭けに出ている。アメリカが中東で戦争をする気がないと見切っているとしたら、「このままだと戦争になる」とステークを上げて、アメリカを中東から追い出すという意図があるのではないか。
安倍: イスラエルの庇護者としてのアメリカの立場はどうなるのか。
松川: イスラエルやサウジアラビアなどでアメリカに対する期待値はどんどん下がっている。イスラエルはどのようにして自分たちを守るのか考えざるを得なくなる。
イスラエルはイランが核兵器を持つとなったら、空爆など軍事行動も辞さないと思う。日本人が持っているセキュリティーの感覚と全然違うから、実はイスラエルが対イランで一番頼りになるかもしれないとサウジアラビアも思っているのでは。
▲写真 ©Japan In-depth編集部
安倍: 日本は継続して見ていくしかないのか。
松川: 日本に影響力はあまりない。イランもアメリカと全面的にことを構えたいわけではない。日本は他国に比べてイランとの関係は良好だから、アメリカとイランが交渉できる橋渡しのような存在になれれば大きな貢献になる。
トップ画像:©Japan In-depth編集部
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この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員
1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。
1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。
1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。
2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。