「ワクチンで守られる命がある」元厚生労働大臣政務官三ツ林裕巳衆議院議員
細川珠生(政治ジャーナリスト)
「細川珠生モーニングトーク」2019年11月30日放送
Japan In-depth 編集部(淺沼慶子)
【まとめ】
・日本のワクチン接種の現状は、先進国に比べかなり遅れている。
・検証や副反応みることも大事だが、国はワクチンで守れる命があること最優先すべき。
・オリンピック・パラリンピックまで残り僅か。麻疹・風疹対策急務。
今回のモーニングトークでは、自民党衆議院議員で元厚生労働大臣政務官の三ッ林 裕巳氏をゲストに招き、政治ジャーナリストの細川珠生が話を聞いた。
インフルエンザも流行する時期に差し掛かっている。細川氏は医師としても活動する三ツ林氏に、日本のワクチン接種の現状と問題点を尋ねた。病気の予防のために予防接種は有効だと考えられているが、日本は先進国の中でも予防接種が遅れているという。
三ツ林氏は、第一に「日本のワクチンの種類が米国に比べて少ない」と現状を指摘した。この理由としては30年前、麻疹や風疹、おたふくに有効なMMRワクチンが子供に無菌性髄膜炎を引き起こしたことで、国が敗訴したことにあるという。それまでは学校で集団接種が行われるなど定期接種が義務化されていたが、努力義務に変わった。これにより三ツ林氏は「ワクチンに対する信頼性について、保護者の間で考え方が異なり(予防接種を)受けないといったことがあった」と述べた。
安全性の確立が求められる中、2009年に日本で新型インフルエンザが流行した。この時日本はWHOからワクチン接種が遅れていることを指摘され、米国や欧州では使用されていたヒブワクチンやHPV、肺炎球菌ワクチン、水痘ワクチン、B型肝炎ワクチンを導入するようになった。副反応を保護者が警戒してしまうこと、努力義務になったこと、国の対応が慎重になったことを改善しようと取り組みが行われているが、三ツ林氏は「まだ遅れている」と強調した。
細川氏は水疱瘡やおたふく風邪の予防接種を例に出しながら、アメリカでは最初の予防接種の10年後には再度接種が求められる一方で、日本では自費負担である上に1回打てばそれで終わり。結果、大人になってから水疱瘡とほぼ同じウイルスとされる帯状疱疹にかかることがあるといった現状を「手薄だ」と述べた。しかし自費負担のままでは複数回予防接種を行うことは難しい。細川氏は「ワクチンによって病気を予防することがどれほど重要か、理解を広めなければいけないのではないか」と述べた上で、こうした副反応を恐れてなるべく接種を避けたいという考え方が多い現状をどう改善するのか尋ねた。
三ツ林氏は、「ワクチンで予防できる病気はある」と述べた上で、安全性に関してきちんとエビデンスがあるものを国が進めるべきとの見解を示した。最近でも髄膜炎による死亡事例があったが、こうした事例はきちんと予防接種をすることで防ぐことが出来る。全てのワクチンについて、欧米で使用されているものは安全性がある上、確かな効果もある。三ツ林氏は「国は検証や副反応をみることも大事だが、こうしたワクチンによって守られる命がある、ということを最優先して考えるべき」との見解を示した。
▲写真 三ツ林裕巳衆議院議員 出典:Japan In-depth編集部
オリンピック・パラリンピック等に伴う外国人観光客の増加や、外国人労働者の増加により日本国内が多国籍化している。一層ワクチンや予防の重要性が高まっているが、細川氏はワクチン接種が遅れている現状を打開するために改善すべき制度はあるか、聞いた。
三ツ林氏はオリンピック・パラリンピックに向けてやるべきことは、流行している麻疹、風疹対策だと述べた。特に風疹に関して、40-50代男性は「空白期間」がある人がいるため、ワクチン接種を進める必要があるが、なかなか周知されていないという。
又、ボランティアなど五輪に関わる人は大変多いが、「オリンピック・パラリンピックに関わる方はできるだけ(接種を)行うべき」と述べた。人が集まる場所での感染症は大きな問題となる。三ツ林氏は「制度というよりは、どのワクチンを打つべきかしっかり検討すべきだ」と強調した。
そして、次に優先すべきは結核だという。結核は飛沫感染するが、体の中に潜んでいて気付かないことが多い。又、結核はツベルクリン反応で検査し、アメリカの場合はその後ワクチン接種を求められるのに対して、日本にはこの仕組みがない。細川氏が「疑いがある場合にはきちんと予防をする手だてをつける」と述べたのと同様に、三ツ林氏は関係者はレントゲンなどの検査を受けるべきだ、との見方を示した。
平昌五輪の際には、結核検査と髄膜炎菌ワクチンの接種が関係者と選手に実施された。一方で予算の問題や、そもそも髄膜炎患者が少ないことにより、東京五輪に向けての対策が未だ為されていないのが現状だ。保菌者になると症状が表れていない間も他人を感染させる恐れがあり、脳炎などになると亡くなる場合もある。
五輪があと半年強に迫る中、三ツ林氏は「麻疹・風疹は絶対(対策が)必要」と強調したうえで、「受け手がきちんとワクチンを接種すれば、大きく広がらないのではないか」との考えを示した。そして、ワクチン接種に関して「日本が欧米など先進国を追い抜き、お手本の国になるべきだ」と今後の展望を述べた。
(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2019年11月30日放送の要約です)
「細川珠生のモーニングトーク」
ラジオ日本 毎週土曜日午前7時05分~7時20分
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トップ写真: 三ツ林裕巳衆議院議員 出典:Japan In-depth編集部
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この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト
1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。