「新たな防災・減災対策へ」赤羽一嘉国交相
細川珠生(政治ジャーナリスト)
「細川珠生モーニングトーク」2019年12月14日放送
Japan In-depth編集部(石田桃子)
【まとめ】
・災害の激甚化・頻発化、被害の甚大化・深刻化。対策の抜本的見直しが必要。
・国・県・市が連携した「公助」+「自助」「共助」が必要。
・老朽化インフラ問題は好転の兆し。
今回のゲストは、赤羽一嘉・国土交通大臣。近年頻発する大規模自然災害と、政府の対策について、政治ジャーナリストの細川珠生が話を聞いた。
赤羽氏が国土交通大臣に就任したのは、台風15号上陸直後の9月11日。以来約3か月間で、全国のべ21道県の被災地に足を運んだという。赤羽氏は、「どの被災地でも感じることは、近年の気候変動によって災害が激甚化・頻発化している、その結果被害が甚大化・深刻化している、ということ」と話した。
細川氏は、国としてどのような対策をすべきか、赤羽氏の考えを聞いた。
赤羽氏は、「元に戻す」ことを原則とする従来の復旧の在り方では、次に来る災害に対応できないと指摘した。国土交通省は、社会資本整備審議会に諮問するなどして、目下、水災害対策の抜本的な見直しをしているという。
赤羽氏は、「国、県、市が連携して、水系全体の治水対策に取り組むことが求められている」と述べた。具体的には、河川上流にダムや遊水池を建設すること、河川下流の堤防を強化することを挙げた。また、西日本豪雨による岡山県倉敷市真備町の水害を教訓に、河川の合流地点を下流に付け替える対策も検討されているという。
同時に、ハザードマップによって地域の危険度を住民に認識してもらうことも重要だと述べた。赤羽氏は「公助だけでなく、自助・共助がなければ、国民の皆さんの命とくらしを守ることのできる新しい防災・減災対策はできない」との考えを示した。
©️Japan In-depth編集部
細川氏は、「インフラの老朽化」が、災害の被害を拡大させる要因の一つであると指摘。対策の方針を聞いた。
国土交通省は、2012年山梨県中央自動車道笹子トンネル崩落事故の衝撃から、老朽化インフラのメンテナンスに取り組んできたという。しかし、十分な財源が確保できず、進捗は思わしくなかった。
赤羽氏は、現在の状況について「風向きはずいぶん変わってきている」と述べた。一連の激甚災害と「国土強靭化のための3カ年緊急対策」の閣議決定、大幅なコストセーブが見込める新たな対策方針などが、影響しているという。その方針とは、事後保全ではなく事前予防に注力すること、i-Construction(アイ・コンストラクション)を導入することである。赤羽氏は「12月5日に組まれた経済対策でも、本当の意味で必要な、防災・減災対策に資する予算を確保している」と述べた。
(注:i-Construction(アイ・コンストラクション)
「ICTの全面的な活用(ICT土工)」等の施策を建設現場に導入することによって、建設生産システム全体の生産性向上を図り、もって魅力ある建設現場を目指す取組
参照:国土交通省)
細川氏は、自然災害からの復旧にはスピードが重要である一方、建設業界で人手不足が深刻化していると指摘。建設・土木業界の「男社会」というイメージを変え、女性活躍を推進することについて、赤羽氏の考えを聞いた。
赤羽氏は、災害現場で真っ先に復旧作業に当たった地域の建設・土木業界人に対して、感謝と尊敬の念を示した。また、建設・土木業を「国土を守り、形成する、素晴らしい職業」と表現し、悪いイメージを変えるべきだと述べた。
赤羽氏は、労働環境整備の必要についても言及した。太田昭宏元国交相が提案した「新3K」(給与が良い、休暇が取れる、希望が持てる)に触れ、若い働き手を確保するためには、これを満たすことが必要だとした。国土交通省は、経験を積んだことが評価される「建設キャリアアップシステム」構築に取り組んでいる。赤羽氏は「働き方改革には、まだまだ工夫の余地がある」と、意欲を示した。
国交省地方整備局には、幹部を務める女性が多くいるという。赤羽氏は、国土交通省の現場が変わっていくことで、関連する建設業界・土木業界の企業が変わることを期待する。「女性の活躍ができない業界は、ほとんど死滅すると思って取り組むべき」と強調した。
細川氏は最後に、建設・土木業界を変える国土交通省の取り組みが、「女性が仕事をし続けることが普通になる社会」をつくることに、期待を述べた。
(この記事はラジオ日本「細川珠生のモーニングトーク」2019年12月14日放送の要約です)
「細川珠生のモーニングトーク」
ラジオ日本 毎週土曜日午前7時05分~7時20分
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この記事を書いた人
細川珠生政治ジャーナリスト
1991年聖心女子大学卒。米・ペパーダイン大学政治学部留学。1995年「娘のいいぶん~ガンコ親父にうまく育てられる法」で第15回日本文芸大賞女流文学新人賞受賞。「細川珠生のモーニングトーク」(ラジオ日本、毎土7時5分)は現在放送20年目。2004年~2011年まで品川区教育委員。文部科学省、国土交通省、警察庁等の審議会等委員を歴任。星槎大学非常勤講師(現代政治論)。著書「自治体の挑戦」他多数。日本舞踊岩井流師範。熊本藩主・細川家の末裔。カトリック信者で洗礼名はガラシャ。政治評論家・故・細川隆一郎は父、故・細川隆元は大叔父。