無料会員募集中
.政治  投稿日:2020/3/6

「不妊治療の負担軽減を」塩村あやか参議院議員 


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

編集長が聞く!」

 

【まとめ】

・不妊治療の標準治療を定めることと負担軽減が必要

・働く女性が増えている。仕事と不妊治療の両立が必須

・再生可能エネルギーの主力電力化は可能

・政権を取るために野党の連立

 

2019年参議院議員選挙東京選挙区で立憲民主党公認で出馬し初当選した塩村あやか議員。「不妊治療に関するワーキングチーム」に所属し、活動している。現在の活動状況について聞いた。

 

・不妊治療問題

塩村氏は、現在5.5組に1人が不妊治療・検査をしており、また16人に1人のこどもが不妊治療で生まれていると語る。しかし不妊治療には金銭的に大きな負担がかかる現状がある。そのため、公費補助の拡大が必要だと主張する。

塩村氏:今も補助は出ているが、年収730万円の制限があるため補助が使えなかったり、高額な治療費の問題で不妊治療を諦めたり、中断せざるを得ない人がたくさんいる。気持ち、精神面、体力面も大変だが、費用面が大変だ。補助の拡大、保険適応を目指している。

不妊治療にかかる費用を公費で負担するとなると、財源問題をどう考えるのか聞いた。

塩村氏:まさに、そこを議論するために「保険適用」を問題提起させてもらった。まずは不妊治療に関する議論をし、標準治療というものを作り上げていくのが理想だ。不妊治療に(不妊治療に対する税金投入は)お金がかかった、と考えるよりも、子供が生まれて将来的な納税者になる、と考えれば将来的に十分コストとしては相殺できるという意見もある。

費用的な問題もそうだが、精神的な面も見逃されがちだと塩村氏は指摘する。

 

塩村氏:とくに仕事をしている人からしたら、仕事との両立が精神的に苦痛になる。治療と採卵が始まると時間の工面が必要だ。「(卵子の育成・成熟が)どちらかの日にちだと思うからこっちの日に来院してください」などと言われると、仕事との両立が難しい。不妊治療をしていることも(職場で)言いにくく、休みにくい。今回私が声をあげたら「私もそうだ」と言う人がたくさんいた。元議員仲間の中には日本で治療することを諦めて、タイに行った人もいた。

 

また、働く女性が増えている中、キャリアを積み重ね、仕事が落ち着いて不妊治療を始めた時には、所得制限にかかるという問題も出てくる。

 

塩村氏:仕事が軌道にのったあとにようやくこどもが欲しいと思った夫婦がいたとすると、年齢の問題もそうだが、所得制限で補助を受けられない人が多い。共働きだと所得制限である730万円を超えてしまう。基本的に不妊治療は1〜3年かかる。20代で始めている人もいるが、費用も150万円~300万円以上、私も採卵だけで50万円以上かかった。(編集部注:塩村氏は卵管疾患から卵子の凍結保存を行っている:本人談)

 

今年度内の少子化社会対策大綱のまとめに、不妊治療を入れてもらいたいと考え、厚労省に申し入れを行った。党に申し出てワーキングチームの設立と政府申し入れが実現した。

 

一方、日本には児童養護の問題がある。施設にいる子供たちは約4万人弱おり、その内、乳児院には3000人近くがいる。特別養子縁組をどう考えるか聞いた。

 

塩村氏:結婚していないと(特別養子縁組は)受け入れることができない。結婚していたとしても、自分のこどもが欲しい夫婦もいるだろう。人によって価値観が違う。これらは別問題として考え、本人たちがのぞむところを尊重したい。

 

 

・ベビーシッターの税制問題

 

塩村氏:自分が都議の時に、税制がおかしいんじゃないかという質疑をした。仕事に行くのに車を駐車場に停めたら経費、クライアントと食事をしながら会合をしたら交際費として認められるのに、仕事に行くためにベビーシッターに預けることは経費として扱われない。これは税制上、税額控除にもならないし、変えるには国から変えるしかないとのことだった。なのでこれも取り組みたいと思っている。その先には介護についても経費にするのか、という問題にもぶつかるとは思う。まだ全員が腑に落ちるというところまで来ていない。

 

ベビーシッターについては補助だけでなく税額控除の考え方もあるが、どちらも「税制」を変えなければいけない。現在、ベビーシッターの補助を受けると差額が雑所得として確定申告をしなくてはならず、翌年の所得税がはね上がる問題がある。何のために働きに出ているのかと利用者から怒りや戸惑いの声が出ている。こちらも税制の問題であり見直しが必要だ。

ⓒJapan In-depth編集部

 

・再生可能エネルギー問題

 

塩村氏は、参議院資源エネルギー調査会の委員だ。再生可能エネルギーについての考えを聞いた。

 

塩村氏:先ほどエネルギー調査会に行って専門家の話を聞いた。環境エネルギー政策研究所所長 飯田哲也さん、関西大学社会安全学部教授 小沢守さん、秋田大学大学院国際資源学研究家教授 荒戸裕之さんの三人だ。3人は立ち位置がそれぞれ異なるが、再エネに関しては同じ見解を持っていた。将来、再エネの主力電力化は可能であるが、現在の日本の政治が理由でできないということであった。まずは政治に決断させる世論作りをすることが大事。

 

京都大学の特任教授、安田陽さんは「技術的にはできるが、市場設計と制度設計の問題」だと話している。ドラスティックな政策の転換は必要だが、混乱を招くなら計画的にやる必要がある。日本がリーディングカントリーになっていかなければならない分野だが、政治はなかなか変えられないものだと感じる。

 

 

・野党は一つにとの問いについて

 

今の自民党・安倍政権に対峙するためには、野党は多少の意見の違いで分断されることなく、政権を取ったら連立する気持ちで臨まなくては、今の政治を変え、望む未来は来ないと考える。

 

 

トップ写真 提供)塩村あやか事務所

 

 

 


この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

copyright2014-"ABE,Inc. 2014 All rights reserved.No reproduction or republication without written permission."