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.政治  投稿日:2020/7/5

「日本は反撃能力持つ可能性十分にある」長島昭久衆議院議員


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

編集長が聞く!

Japan In-depth編集部(淺沼慶子)

【まとめ】

・イージス・アショア撤回止む無し。コスト面と長期的脅威に備える為には良い判断。

・日本の防衛体制は不十分。攻防を組み合わせ、抑止力高めるべき。

・憲法議論は70年間進まぬまま。議論を前に進めるべき。

 

北朝鮮の南北共同所爆破、金与正氏による韓国に対する恫喝。南北関係の急激な悪化など朝鮮半島情勢が揺れに揺れる中、日本の防衛はどうあるべきか。民主党政権時代に防衛副大臣を務め、現在は自民党の長島昭久衆議院議員に話を聞いた。(6月30日インタビュー実施)

まず、6月25日に明らかになったイージス・アショアの山口県・秋田県への配備計画断念について聞いた。

長島氏:イージス・アショアの撤回はやむを得なかったと思う。ボールドデシジョン(英断)であり、河野大臣ならではの判断だった。私はイージス・アショアそのものは否定しないが、機種選定には疑問を持っていたので、一から見直しになったのはよかったと思う。

射撃試験施設から何から全部日本が新たに作る必要があり、コスト面の膨らみも防ぐことができたのも良かった。

より本質的なことを言うと、2016年、2017年当時の弾道ミサイルによる飽和攻撃や奇襲攻撃といった脅威が念頭にあり、海自イージス艦部隊を補完しようと、少ない人数で運用できる陸上施設であるイージス・アショアが導入された。しかし、当時と2019年、2020年とでは脅威の質が大きく変化した。弾道ミサイルの脅威に対応するために作った物と、それ以外の脅威に対応するものとでは、備えも違ってくる。BMD(Ballistic Missile Defence:ミサイル防衛)からIAMD(Integrated Air and Missile Defense:統合防空ミサイル防衛)へ、ありとあらゆるミサイルに対応するものを作っていくことになるので、今後10年、20年先の脅威に備えるためには(今回の撤回は)良いものだった

 

安倍: 当初から費用がかさむことや、北朝鮮ミサイルの技術進歩へ対応などの議論もあった。対応が遅かったのでは。

長島氏: 本来なら2017年の導入決定時からIAMD型の導入を目指すべきだったと思うが、当時は国民の危機感も強く、BMDを早期に配備する判断をした。一方、日々ミサイル技術も進歩する中、どこかで導入や納入も決めなければならない。防衛装備品調達の難しさを改めて痛感させられた。

安倍: イージス・アショアの撤回の決定は、中国に間違ったメッセージを与えてしまうことにはならないのか?

長島氏: それはなかったと思う。防衛の空白が生じるのでは、という懸念が言われるが、最短でもイージス・アショアが配備されるのは2025年以降だ。あと5年間は今まで通りであり、穴は空かない。

ブースターの落下地点が撤回の第一の理由に挙げられているが、もし中国が誤解するとすれば、弾道ミサイルに迎撃ミサイルを当てることが主目的であるのに、ブースターの落下地点を懸念する様子は滑稽に聞こえるかもしれない。日本は狭いところに(多くの人が)ひしめき合っているが、日は軍事施設の配備に適さないと捉えられてもいけない。(そこは)誤ったメッセージを送っていることになりかねないので、きちんと説明していきたい

安倍: 中国は長距離誘導ミサイルがあるが、日本の防衛体制は十分なのか。

長島氏: 十分ではないことを認識すべきだ。先制攻撃をするということではなく、単に守りを固めることから一歩踏み出して、限定的な攻撃能力を上げ、防御の確率を上げることが重要だ。つまり攻防両方のバランスや組み合わせによって、相手から日本を狙いにくいよう抑止力を高める

安倍: 現在、日米韓の演習が出来ていない状況にある。

長島氏: 日韓には様々な問題が存在するが、朝鮮半島情勢を考えると別途行っていく、というのが正解かもしれない。貿易管理の厳格化問題などはしっかり解決を目指して、他方で現実の脅威に対して日米韓の警戒監視、情報共有を何とか協力体制でやっていきたい。韓国側に真剣に働きかけなければならない。

安倍: 包括的な東アジアの安全保障という観点も必要ではないか。

長島氏: 去年のミサイルの殆どは韓国への短期的ミサイルだったため、韓国も脅威に感じていると思う。また、アメリカは長距離ミサイルを、日本は中距離ミサイルを不安視しているように、それぞれが心配しているものは異なる。これらを上手く組み合わせて、東アジアの全体的な抑止力を向上させることは重要な課題だ。

▲写真 ⒸJapan In-depth編集部

安倍: 日本ではF35B搭載のミサイルなど射的距離が伸びたシステムの購入も決定するなど、着々とミサイル防衛体制の軍事費がついている。

長島氏: 情勢は切迫しており、ギアは上げなければならないが、準備は着々と進めてきた。島嶼防衛を(防衛省は)謳っている。国民の皆さんが一番心配している点を解きほぐしていくため、尖閣などの離島侵攻の際の対応も重要だ。日本は巡航ミサイルの保有についても考えていかなければならない。

安倍: 敵基地攻撃は法的に可能なのか。

長島氏: 「誘導弾などによる攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられない。(中略)誘導弾などによる攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾などの基地をたたくことは、法律的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべき」という鳩山一郎氏の国会答弁が今でも生きている。(昭和31年2月29日 衆議院内閣委員会鳩山総理答弁船田防衛長官代読)*注1

この答弁があるにも関わらず、今まで敵基地攻撃の装備を持っていない理由には、憲法9条で保持が禁止されている戦力の中には「性能上もっぱら相手国の壊滅的な破壊のみに用いられる攻撃型兵器は持てない」とあるからだ(防衛白書より)。

技術的に移動式ミサイルを直接攻撃することは難しく、法理的に相手国都市の破壊は許されないとなると、相手の通信基地や滑走路などをたたくなどのカウンターフォース、つまりは「攻撃型兵器」と認定されない中間的な装備について議論していく余地がある。この2つの合わせ技で、日本は反撃能力を持つ可能性は十分にあり、抑止にもつながる

安倍: 日本がミサイル攻撃された場合、実際にミサイルが着弾し壊滅的なダメージを負ってからではないと日本は動けない、という意見もある。

長島氏: 状況にもよるが、10年前に比べたら反撃の敷居は低くなっている気がする。これだけミサイルが放たれているので、国民の皆さんの危機感も10年前とはかなり異なっているのではないか。

安倍: 情報収集・管理・偵察、いわゆる、ISR能力の向上も重要なテーマだ。

長島氏: 今日本には地上レーダーとイージスのレーダーしかなく、水平線の向こうは見えない。しかし、アメリカのミサイル防衛局によると、170基の小型衛星を連ねると全世界を24時間365日監視できるそうだ。このような小型衛星のコンステレーション(一群)は重要だ。

また、有人機や有人艦だけで監視し続けるのは難しい。これからは無人システムによる監視と組み合わせることが主流になるのではないか。

安倍: 今後、更に必要な防衛能力は何か。

長島氏: レーザー兵器だ。3年程前、ワシントンのハドソン研究所にいるミサイル専門の研究者に聞いたが、無人機にレーザーを積み、赤外線センサーでミサイルを発射を探知し、ブースターの段階でレーザーで焼き切れば落とすことができる、と。狙いが動いていても赤外線で見てすぐレーザーで撃てるといったシステムが、2025年頃には出てくると思う。有人機が決死の覚悟で近接攻撃に行くというのではなく、日本はアメリカと共に無人機の研究開発などを強化するべきだ。

安倍: 憲法については?

長島氏: 議論していく必要がある。(自衛隊を明記することで)自衛隊が違憲かどうかよく分からない、という議論は克服できるが、更に踏み込むと、自衛隊を明記したからといって、いきなり現実的な国防論議が前に進むわけではないと思う。自衛隊と書き込むだけだから現状と変わらない、という説明がなされている以上、難しい部分も多い。

安倍: 憲法を前面に出すと、具体的議論が前に進まないという懸念もある。

長島氏: 日本は必ず憲法論になり、安全保障論にならない。安全保障の話になると憲法9条論に足を取られ、外的な脅威に対する具体的な対応策の議論にならない。(昭和31年、鳩山一郎内閣の)良い答弁があるのに、70年何も出来ないままになっている。

 

注1)敵基地攻撃

「わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段としてわが国土に対し、誘導弾などによる攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられないと思うのです。そういう場合には、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、例えば、誘導弾などによる攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾などの基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います。」(56(昭和31)年2月29日 衆議院内閣委員会 鳩山総理答弁船田防衛庁長官代読)出典:防衛省

トップ写真:ⒸJapan In-depth編集部


この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト、産業能率大学客員教授。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。


1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。


1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。


2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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