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.国際  投稿日:2020/8/2

韓国に米軍の核兵器再配備を


古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視」

【まとめ】

・ブルックス元大将、朝鮮半島周辺に核の再配備を提唱。

・米の金正恩政権に対する厳しい抑止の態勢固めと見られる。

・米軍事態勢強化の影響は日本にも。独自の対応考えるべき。

 

朝鮮半島情勢が緊迫するなかで在韓米軍の司令官を最近まで務めたビンセント・ブルックス米陸軍大将がワシントンの大手安全保障研究機関の討論会で米軍が韓国や朝鮮半島周辺に核兵器を含む高性能の戦力を再配備することを提唱した。

 

その目的はこのところ挑発的な言動をエスカレートさせる北朝鮮に対する実効のある抑止力明示にあるという。

 

ブルックス大将はまた米韓合同軍事演習も頻繁に実施することを提唱した。同大将はトランプ政権下の米軍首脳にもきわめて近い立場にあるため、この発言は同政権の北朝鮮への新たな軍事政策の反映とも受け取れる。

 

韓国駐在の国連軍と米軍の最高司令官を2018年11月まで務めたブルックス大将は6月17日、ワシントンの大手安全保障研究機関の「国際戦略研究センター(CSIS)」が開いた朝鮮半島情勢に関するインターネットでの討論会に出て、こうした見解を表明した。

写真)ビンセント・ブルックス米陸軍大将

出典)Flickr; U.S. Secretary of Defense

 

ワシントンでは最近の北朝鮮の韓国やアメリカに対する挑戦的、好戦的な言動への警戒や懸念が高まっており、トランプ政権もこれまでの北朝鮮の非核化実現という最優先課題への比重を落としても、金正恩政権の冒険主義的な動きに対する厳しい抑止の態勢を固めるような兆しもみせ始めていた。

 

ブルックス前司令官はこうした朝鮮半島情勢の緊迫を踏まえて、自分自身の最近の韓国在勤の経験を基に意見を表明した。

 

ブルックス前司令官のその発言の骨子は以下のようだった。

 

 ・北朝鮮の最近の挑発的な言動への抑止として米軍は核兵器使用も可能な一連の戦略、戦術兵器の韓国と朝鮮半島への再配備に着手すべきである。

 ・米軍は具体的には2018年春から事実上、配備や飛行を自粛していた核爆弾搭載可能な戦略爆撃機、F35統合打撃戦闘機、航空母艦、原子力潜水艦などを朝鮮半島周辺に再配備、再出動させるべきだ。

写真)F35

出典)NELLIS Air Force Base(U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Daryn Murphy/Released)

 ・米軍は韓国軍との合同軍事演習を年来の予定どおりに実行すべきだ。米韓合同軍事演習のあり方を北朝鮮との協議にからませるという方針はもう終わりにすべきだ。

(米韓合同軍事演習はここ二年ほど米側の北朝鮮の非核化への配慮などから中止や延期の措置をとってきたが、この6月20日に一部が再開した)

写真)米韓合同軍事演習

出典)米国防総省

 ・米軍の戦略兵器の再配備などに対して北朝鮮は激しく反発し、さらに強硬な言動をとるだろうが、米軍の強大な抑止力の存在を再認識することにもなる。北朝鮮側のその認識が最近の過度な好戦的態度を抑えるだろう。

 ・米軍のこの種の軍事力再強化への動きはなお北朝鮮の非核化や北朝鮮と韓国の緊張緩和などに関する外交交渉と同時進行の形でなければ意味がない。

 

ブルックス前司令官はこのように述べたが、米軍のこの種の北朝鮮に向けての軍事態勢の強化は当面、北側の激しい反発を招き、朝鮮半島情勢全体はさらに緊迫を深めることにもなろう。

 

その影響は当然、日本にも直接に及ぶわけである。日本としては北朝鮮の軍事脅威や朝鮮半島の軍事緊迫への日本独自の対応を改めて考える機会ともなるだろう。

 

 (**この記事は 一般社団法人日本戦略研究フォーラムのサイトの「古森義久の内外抗論」という連載コラムからの転載です。)

トップ写真)2013年9月30日、北朝鮮と韓国を分離する非武装地帯にあるウエレット観測所。

出典)米国防総省

 


この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「ODA幻想」「韓国の奈落」「米中激突と日本の針路」「新型コロナウイルスが世界を滅ぼす」など多数。

古森義久

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