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.国際  投稿日:2020/8/8

尖閣防衛に知恵を使え 魚釣島を「民主主義島」と改名せよ


岩田太郎(在米ジャーナリスト)

【まとめ】

・尖閣防衛で日本は圧倒的弱者。知恵で勝負を。

・魚釣島を「民主主義の象徴」の島にして国際社会を味方にせよ。

・尖閣を護る長い戦いへの覚悟と決心で「新しい王道の日本」へ

 

日本は、中国に対する尖閣諸島防衛において、軍事的・経済的・法的に「アウトレンジ」されている。一言でいえば、それぞれの分野の「射程」の面で圧倒されているということだ。

中国のミサイルは日本のそれよりもより精密で長距離を飛ぶことができ、中国人民解放軍の戦闘機や爆撃機、イージス艦などは多くの面で日本のものを性能面で凌駕できるばかりか、数でも圧倒できる。

経済面で、中国が日本を抜き去って世界2位の大国になったことは、戦争の面でも日本以上の体力をつけたということだ。軍事費も比較にならないレベルである。

法的にも中国では、中央内部や地方に分散していた中国人民解放軍のすべての権力を中央軍事委員会に集中し、中国海警局(日本の海上保安庁に相当)や人民武装警察、海上民兵なども加えて全ての武装組織が戦時・有事体制に移行し、習近平・中国共産党中央軍事委員会主席が一元的に作戦行動を指揮できる体制が整っているが、日本は憲法の縛りから自由な行動がとれない。

日本は巨人に圧倒され、憲法の自縄自縛で自衛が困難になっている。中国が尖閣諸島を奪取するまでに、軍備や経済力や法制面で一朝一夕に挽回できるような局面ではない。同盟国の米国が尖閣問題で、中国と一戦を交えて米兵の血を流す覚悟を持つ可能性も低いと見ておいた方がよいだろう。

日本は決して完全な丸腰ではないが、中国との勝負においては圧倒的な弱者に過ぎない。しかも、中国の魔の手はもう尖閣に迫っている。軍事面で太刀打ちできないなら、わが国は尖閣諸島を中国にくれてやるしか道は残されていないのだろうか。

▲写真 沖縄県・尖閣諸島周辺の領海に侵入した中国海警2101(2017年7月26日 出典:海上保安庁ホームページ

 

知恵で勝負しかない

日本は力では中国に敵わないことが明らかである。そのため、柔道において飛び掛かってくる相手の力をフルに利用し、その相手を投げ飛ばしてしまうような「知恵」が今の日本に求められている。中国が襲い掛かってくる力が大きければ大きいほど、ダメージが大きくなる(コストが高くなる)ようにすればよいのである。

突っ込んでくる相手に生じるわずかなスキを見逃さず、その力を利用して「逆らわずに」勝つわけだ。いわゆる「空気投げ」、正式には「隅落し」と言われる技である。

尖閣諸島においては、国際社会を味方につけることが、それに相当する。具体的には、魚釣島など尖閣の島々を、リベラルな欧米社会が深く関心を寄せるイシューである民主主義の象徴に仕立て上げる方策を実行することだ。

それにより、中国が尖閣に実力行使をした場合、中国は欧米のリベラルな価値観の最もセンシティブな部分に刃を向けることになり、日本には強い味方が増える。たとえ尖閣諸島の実効支配を奪われたとしても、「権威主義的な支配を行う中国」と「欧米のリベラルな価値観を共有する日本が、中国に不当な方法で奪われた島々」というイメージが出来上がり、奪われた島々の奪還の戦いに共鳴する国が増える。

それは、中国を国際社会で孤立させ、「中国夢」「人類運命共同体」の信用を落とし、中国のアジア・西太平洋地域の完全支配をやりにくくする。

同じように、中国が台湾を侵略すれば、欧米において尊ばれる民主主義に対する武力的な弾圧と映り、中国は孤立して台湾支配の正統性が認めてもらえなくなるのである。侵略のコストが高くなっているわけだ。

 

「民主主義島」、英名「デモクラシー・アイランド」に改名を

沖縄県石垣市は6月に、尖閣諸島の字名を「登野城(とのしろ)」から、「尖閣」の二文字を加えた「登野城尖閣」に変更した。これに倣い、魚釣島の名前自体を「民主主義島」、英名「デモクラシー・アイランド」に改名することで、島の日本領土としての地位や、国際的な意味合いを高めることができる。その改名の意義を日本政府が全力で世界に情報発信するのである。

中国が「民主主義島」を奪取蹂躙すれば、それは象徴的に民主主義そのものへの挑戦となる。中国共産党は占領後に、「中国は民主主義を尊重する国だ」と主張するかも知れないが、そうであるならば、なぜ香港に悪名高い恣意的な国家安全法を適用したのか、なぜ大陸部では共産党以外の政党や選挙がないのかが問われる。答えは、「中国は真の民主主義国家ではないから」だ。「民主主義島」制圧で、中国は象徴的に民主主義の敵になる。

一方で、魚釣の地名が琉球方言で「魚國」を意味する「よこん」や、与那国方言で銛(もり)を意味する「いーぐん(いぐん)」、鳩間島方言で銛を意味する「ゆくん」、さらに地元で「つれしま」(つりしま)と呼ばれたうるま市の津堅島(つけんじま)との関係性に因んでつけられた由緒ある名であることは重々承知だ。

だが、島の防衛のために止む無く改名することに、地元や国民の理解が得られないかと思う。「民主主義島」、英名「デモクラシー・アイランド」に改名後も、地元の方は従来の名で呼べばよい。法的な名称は「民主主義登野城尖閣」となり、尖閣の名は残る。

改名後は、島のバーチャル名誉戸籍を作成し、民主主義の防衛に共鳴する全国の日本国民に「島民」となってもらう。実際に島に上陸するわけではないから、中国に文句を言われる筋合いはない。

また、世界平和の願いを集めたバーチャルな「デモクラシー神社」を開設し、島の理想にふさわしいアニメキャラなどを使い、世界中の人々から民主的な選挙への思いや香港・台湾の民主主義支援の気持ちをバーチャル絵馬に書き込んでもらう。(「五毛党」の口汚い罵りの書き込みや妨害工作を、自由な言論の力で孤立化させる方策も臨機応変に準備しておく。)

政府は潤沢な予算を確保し、「デモクラシー神社」のサイト訪問者に、各国の日本大使館から、たとえば京都アニメーションにデザインしてもらったクオリティーの高い「デモクラシー・アイランド」のTシャツや素敵な景品を送付する。

海外でも視聴される日本の有名アニメにも「デモクラシー・アイランド」を自然な形で登場させ、周知に努める。海外主要国でテレビCMやネット広告も流す。核心的なメッセージは島の領有権うんぬんではなく、あくまでも「民主主義の理想」のみとする。

目立ちたがりのトランプ米大統領に、「デモクラシー・アイランド」改名を祝福してもらうツイートを連打してもらうのもよいだろう。大統領にとっても「デモクラシーの守護者」のイメージは、大統領選挙対策として悪くはないはずだ。

米議会やその他の民主主義国家の議会にも働きかけ、領有権問題には触れずに「デモクラシー・アイランド」で民主主義を支援する活動に、何らかの形で関与してもらえるとよい。領土問題ではなく、民主主義へのサポートで「デモクラシー・アイランド=日本」「民主主義=日本」と連想してもらえれば御の字だ。(もちろん与野党は、それにふさわしい政治を心掛けなければ国際的な信用を失うから、姿勢を正して精進しなければならない。)

▲写真 魚釣島周辺海域で警戒監視に従事する海上保安庁の巡視船 出典:海上保安庁ホームページ

 

長期戦の覚悟を

このように、「デモクラシー・アイランド」となった尖閣諸島を国際化・有名化することは、将来において日本の立場を強化する。もちろん、これだけでは島は防衛できないのだが、日本が尖閣諸島を守り抜く意思を国際社会に伝えることはできる。

中国が国家安全法で香港の民主主義を破壊し、台湾の民主主義をも侵略で無力化せんとする今、尖閣諸島をアジア全体の民主主義の象徴に作り変えることは、大きな意義を持つ。

その一方で、尖閣を護る戦いはつらく、長いものになることを日本国民は覚悟しなければならない。だが万が一、中国によって島が長期占領される最悪の事態になっても、何世代、何百年かかっても必ず取り返す決心を固め、襲い掛かってくる「覇道の侵略者中国」という巨人を、その勢いで投げ飛ばしてゆこう。それが「新しい王道の日本」「もはや戦後ではない日本」を作る基礎になるからだ。

トップ写真:尖閣諸島魚釣島 出典:内閣官房ホームページ


この記事を書いた人
岩田太郎在米ジャーナリスト

京都市出身の在米ジャーナリスト。米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の訓練を受ける。現在、米国の経済・司法・政治・社会を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』誌などの紙媒体に発表する一方、ウェブメディアにも進出中。研究者としての別の顔も持ち、ハワイの米イースト・ウェスト・センターで連邦奨学生として太平洋諸島研究学を学んだ後、オレゴン大学歴史学部博士課程修了。先住ハワイ人と日本人移民・二世の関係など、「何がネイティブなのか」を法律やメディアの切り口を使い、一次史料で読み解くプロジェクトに取り組んでいる。金融などあらゆる分野の翻訳も手掛ける。昭和38年生まれ。

岩田太郎

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