Go To祭り 次は商店街だ!
安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
【まとめ】
・「Go To キャンペーン」事業の第3弾、「Go To商店街」が開始。
・1団体当たり上限300万円、複数申請は500万円上乗せ、1申請当たり上限最大1400万円。
・商店街再生に繋がるものにするため、検証と今後の施策が必要。
中途半端なままどんどん突き進む「Go To キャンペーン」事業。第3弾が発進だ。その名も「Go To商店街」。経済産業省が10月16日に発表した。
■ キャンペーンの概要
経産省によるとその狙いと概要は以下の通り。
狙い:
本事業は、3密対策等の感染拡大防止対策を徹底しながら、商店街がイベント等を実施することにより、周辺地域で暮らす消費者や生産者等が「地元」や「商店街」の良さを再認識するきっかけとなる取組を支援するもの。
- 各地域で、消費者や生産者との接点を持つ「商店街」が、率先して「地元」の良さの発信や、地域社会の価値を見直すきっかけとなる取組を行い、地域に活気を取り戻していくことを通じて商店街の活性化につなげることがねらい。
- Go To商店街事業として実施するイベント等について、事務局から提案を募集。
- 商店街等は申請し、事業内容を提案。
- 審査を経て採択された提案を国が支援。
事業のイメージ:
地域の期待に気づく
(例)
- 販促やイベント認知を兼ねたオンライン・アンケート実施
- 地域の生産者や消費者に呼びかけてのフリーマーケット実施
- 消費者・生産者等の生声を反映したタウン誌の発行
地域、商店街の良さを伝える
(例)
- 地域住民や生産者等のふれあいの場を創出するための集客イベント実施
- デジタル技術を活用したオンライン予約の導入や、共同デリバリーサービスの実施等の新たな協業モデルの実証
- オンラインイベントやメディアを通じた地域の魅力発信(例えば、地域で頑張るエッセンシャル
- ワーカーのことを知ってもらうイベント、 子供達やアーティストの発表の場を用意するイベント、商店街内の個性的な店主を紹介するサイトの作成など。)
成果を次につなげる
(例)
- ホームページやタウン誌を活用した取組成果の公表
- アンケートを活用したニーズの継続的な掘り起こし
- 成功した実証的取組やメディア活動の継続化
その上で、以下のGo To商店街における感染症対策の徹底を求めている。
- オンラインの活用や、来訪場 所・時間帯の分散誘導等による接触機会の縮小
- 消毒液の設置、マスク着用の周知等の開催条件に則った感染症対策の徹底
- オンライン予約制や、住居エリア別販促品配布等を通じた、参加者把握の実施
- 商店街内部の企画会議等での、オンライン会議の積極活用
事業対象は:
商店街組織(任意団体含む)、商工会、商工会議所、温泉街、飲食店街、 民間事業者など。
対象事業:
- 商店街イベント等の実施(オンラインを活用したイベント実施も含む)
- 地域の良さの再発見を促すような、新たな商材の開発やプロモーションの制作
となる。
対象は「イベント等を実施するために必要な経費」とされ、以下の図の通り広範囲にわたる。
図)Go To 商店街事業の募集概要 出典)経産省
支援額:
1団体あたり上限300万円、複数で申請する場合は500万円の上乗せがあり、1申請当たりの上限は最大1400万円となる。
経産省は、第1弾として34事業を採択したと発表、50団体が参加し、10月19日から順次、各地で取り組みが始まる予定だ。
写真)東京都品川区戸越銀座商店街 出典)flickr:Michael Vito
■ キャンペーンの効果は?
たしかに新型コロナは商店街にとって打撃に違いない。しかし、コロナ以前から商店街やアーケードは消えつつある。理由は明確だ。一つは、大型商業施設やドラッグストア・家電などの全国チェーン店、そしてコンビニなどに取って代わられた為であり、二つ目には経営者が高齢化し後継者がいないため廃業が相次いでいること、三つ目には従来から同じ対面販売などを続けているために新型コロナによる急激な客の減少や消費行動の変化に対応できていないからだ。いまさら、こんなカンフル剤を打ってどうにかなるものだろうか?
東京都渋谷に7月開業した低層複合施設「RAYARD MIYASHITA PARK(レイヤードミヤシタパーク」を訪問した。もともとは老朽化した宮下公園があった場所を三井不動産が再開発したもので、全長が約330mもあり、屋上が公園で、商業施設やホテルと一体となっている。
写真)RAYARD MIYASHITA PARK 出典)三井不動産
なにより目を引くのが全長100メートル、敷地面積1000㎡、バラエティ豊かな全19店舗が集結する「渋谷横丁」だ。総席数は店内1200席、テラス300席の計1500席を誇る。北海道から九州・沖縄までご当地フードが楽しめる。午後3時とまだ早い時間から店内はお客さんで一杯だ。路地の賑わいが復活し、渋谷の新しいスポットとなっている。再開発のモデルとして注目されている。
写真)渋谷横丁 ⒸJapan In-depth編集部
ここまでの巨大資本による再開発とまでは行かなくとも、地元の商店街が復活した例は他にもある。香川県高松市の中心部にある「高松丸亀町商店街」は、再開発にあたり、全国で初めて「所有権と利用権の分権」というユニークな事業スキームを採用した。
地権者は土地を所有し続け、まちづくり会社と定期借地権契約を結び、土地を貸し出し、建物はまちづくり会社が所有し運営するものだ。土地費を事業費に計上しなくてすむというメリットがある。
写真)高松丸亀町壱番街前ドーム広場 提供:(公社)香川県観光協会
また、「オーナー変動地代家賃制」というものを採用した。地権者はテナントの売上から家賃収入を得るが、テナントの売り上げによって収入は増減する。したがって、地権者、テナント、まちづくり会社が三位一体となって商店街全体の魅力向上と集客に努めなければならないシステムとなっているのだ。
「GoTo 商店街」を否定するものではないが、一過性のもので終わるのでは真の商店街再生など望むべくもない。シャッター街の再生は簡単なものではない。今回のこのキャンペーンが、商店街再生のきっかけになるのかどうか、経済産業省はしっかり検証し、今後の施策につなげるべきだろう。
トップ画像)GoTo商店街ロゴ 出典)経産省
あわせて読みたい
この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員
1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。
1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。
1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。
2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。
