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.経済  投稿日:2014/4/24

[安倍宏行]<日本のクラウドファンディングの新たな「幕開け」>過去最高額3000万円の支援金が集まる!


Japan In-Depth編集長

安倍宏行(ジャーナリスト)

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2014年2月21日、日本のクラウド・ファンディング業界に1つの伝説が生まれた。

クラウド・ファンディングとは、インターネットを通じて一般人からお金の支援を募る活動、またはそのために利用できるサービスのこと (注1)。メンズ・コスメ・ブランドを手掛けるベンチャー企業「BULK HOMME(バルクオム)」が、そのクラウド・ファンディングで、日本における過去最高額の3000万円の支援を得ることに成功したのだ。

BULK HOMMEは、低コストで良質な男性向けスキンケア製品を開発・製造・販売する企業。同社は今回、エステサロンを新設するため、クラウド・ファンディングによって資金を募った 。おしゃれな街・青山に、ハイクラスな顧客をターゲットにしたサロンを出店することで、自社製品の認知度とブランド価値を高める狙いだという。

BULK HOMMEのこの挑戦は、決して簡単なものではなかった。代表の野口卓也氏は言う。

「この2か月間、他の仕事は全部休んで、企業を訪問し、接待もし、あらゆる人にリターン(支援してくれた人への見返り)を説明して(お金の)支援をお願いする日々でした。」

クラウド・ファンディングでは、単に募集ページを公開するだけで支援が集まるわけではない。どれだけ支援の輪を広げることができるかによる。しかし、泥臭い野口氏の活動に批判の声も上がったという。「クラウド・ファンディングの精神とかい離している」、「それでは単なる営業ではないか?」といったものだ。

「日本でもまだクラウド・ファンディングの仕組みを理解している人は少ない。今回、私たちは大きなリターンを提供し、法人営業をすることで、(3000万円を)集めることができた。これくらいの規模感でもできるんだということを示して、他の起業家の方々を勇気づけられたらという思いがあったからだ。今後は、小口の資金が何千、何万の人から集まるというクラウド・ファンディングの理想に近づいていくと思う。」(野口氏)

BULK HOMME代表の野口卓也氏

BULK HOMME代表の野口卓也氏

 

今回、BULK HOMMEが資金調達のために利用したのは、株式会社サイバーエージェント・クラウドファンディングが提供するプラットフォーム「Makuake」だ。なぜBULK HOMMEは、数多くあるプラットフォームの中からMakuakeを選んだのだろうか。

野口氏によれば、2つの大きな理由があるという。

第一に、Makuakeは、事業の賛同者が資金を提供する方法を複数提供していること。他のプラットフォームでは、資金提供はクレジットカードのみ、というところが多いが、Makuakeでは、クレジットカード以外に、コンビニ振込、銀行振込などもあり、資金提供者が増える可能性が高かった。

第二に、Makuakeはリターンの上限額が高く設定できること。他のプラットフォームでは、リターンの上限額は、30万円程度だが、Makuakeでは 300万円まで設定出来る。そのため、1人の応援者から多額の支援が期待できた。

BULK HOMMEはまだ創業1年。メンズコスメ市場がどれだけ拡大するかも未知数だ。それなのに多くの人が支援の手を差し伸べ、3000万円ものお金が集まったことを不思議に思う人もいるだろう。

今回のクラウド・ファンディング・サービス“Makuake”を提供した、株式会社サイバーエージェント・クラウドファンディング代表取締役社長中山亮太郎氏はこう説明する。

「(クラウド・ファンディングで)お金を出す人は、投資じゃない(と考えている)ので、リターンをそんなに気にしていない。これは投資家マインドだと、理解するのは難しい。」

つまり、クラウド・ファンディングであるプロジェクトを支援しようという人は、そのプロジェクトを立ち上げた人の友人だったり、プロジェクト自体に共感して応援したい、という人たちなので、利息や見返りを最初から期待していない、ということなのだろう。

「今回、“共創感”(=みんなで新しいビジネスやサービス作っていくという感覚)を実感した。いずれ、(アメリカのクラウド・ファンディング界の雄)Kickstarter(キックスターター)社を超えたい。」と中山氏は意気込みを語った。

BULK HOMMEが巨額の支援を得たことで、次々とチャレンジャーがMakuakeに応募してくることが予想される。起業家が育ちにくい、といわれてきた日本。クラウド・ファンディングは、起業家たちを飛躍させる仕組みとして、さらに成長できるのか。この業界もまた、新たな「幕開け」を迎えている。

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サイバーエージェント・クラウドファンディング代表取締役の中山亮太郎氏(右)と、BLUK HOMMEのプロジェクトを主導した同社取締役の坊垣佳奈氏(左)

 

注1)欧米で生まれた新しい資金調達の仕組みで、日本では2011年ごろから広がったとされる。Web上で自分が実現したい目的や事業計画を公表し、それに賛同して資金を提供してくれる人を募集する。投資家ではない個人も対象とし広く募集をすることができるため、少額出資を数多く得ることによる資金集めが可能。クラウド(crowd)は、ここで「群衆」といった意味で用いられる。(参考:「IT用語辞典 BINARY」

Makuake:世界一のメンズフェイシャルエステを造り、「日本の男はカッコイいい!」未来を創る」

 

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