仏、コロナ死減少も警戒続く
Ulala(ライター・ブロガー)
【まとめ】
・夜間外出禁止の仏。英独に比べ死者は減少。東部では感染再拡大。
・変異種の感染例相次ぐ。英国との国境閉鎖、飲食店の営業再開延期。
・羽目を外したクリスマス以降の感染状況はこれから。要警戒続く。
新型コロナウイルスの感染が拡大し、夜間外出禁止、6人以上の集まりを禁止するなど規則を強化しているフランスであるが、新年早々からその規則を守らない人たちの話題がニュースをにぎわせた。北西部リュロンでは新年を祝う違法なレイブパーティーが開かれ、約2500人が参加したあげく警察との衝突に発展し、車が放火されるなどの騒ぎも起こったのだ。
だいたい、フランスでは身近でもそのような話は尽きない。年末を祝うために家族が集まったのであろう10人以上いる集団が散歩に来ていたり(しかも複数グループ)、普通に「週末の夜、アペリティフで集まらない?(夜間外出禁止であるため朝6時まで帰れない)」との誘いがいまだにくる。こういった状況を受け、「これだからフランスでは感染が収まらないのだ」とため息が止まらない人も多いのではないだろうか。
しかしながら1月に入っての結果はその不安を裏切るものであった。規則を守らない人が多く、一見、危機感がまったくなさそうなフランスだが、なんと、その日あたりのコロナによる死者が、ドイツや英国など近隣の国の中で一番少ないのだ。
早めに行動制限したフランス、一定の成果
1月10日にEUROPE1に出演したオリヴィエ・ヴェラン保健相は、「新規感染者数は依然として多いものの、現時点では隣国より感染を抑えられている状態であり、学校を閉鎖するレベルでもない」と胸をはって答えた。確かに、フランスは11月の一時期は、死者数も一気に増加したものの、現在は、確実に減少傾向にある。反対にドイツ、英国は現在いきおいよく増加し続けており、その数はフランスのピーク時を超える状況だ。
ヴェラン保健相によれば、それは10月30日から早めに外出制限などの対策を取ったことが功を奏しているという。早い決断が、感染拡大を急速に激減させたのだ。違法なパーティーを開催する一部のフランス人や、規則を守らない人が目につくのは確かではあるが、それでも大多数のフランス人は規則を守って自己防衛しており、政府が行った感染対策は一定の効果をあげているようだ。
だが、ヴェラン保健相がいうように新規感染者数が減っているわけではない。現在フランスの東側にあたる地域では、再び感染が拡大している。
英国新型コロナウイルス変異種への警戒が必須
ドイツなどの国境が近いフランスの東側にあたる地域では、再び感染が広がっており、現在18時から夜間外出禁止というより厳しい対応がとられている。
フランスにおいても、英国で報告された新型コロナウイルスの変異種は感染力が強いためより一層の警戒がされているが、ドイツは11月には変異種の感染者がいたことが分かっており、これが現在フランスの東側の国境に近い地域に感染が広がっていることと関連性があるのか気になるところではある。
いずれにせよ、中心部のトゥールなどでも各地で英国在住者などからの感染者が確認されており、すでにフランス国内に変異種が入り込んでいるのは間違いない。フランス西南部に位置するバイヨンヌでは10人のラグビー選手が変異種に感染した。感染が発覚したのは、2020年12月19日に行われたラグビー・ヨーロッパ杯で英国のクラブ・レスターと対戦した1週間後のことであった。
また、マルセイユで26人の陽性が確認された。英国に駐在していた家族5人がマルセイユで年末を過ごしていたところ、コロナに感染していることが分かり、そこでその家族に接触した46人を検査したうち、なんと26人が陽性だったのだ。今のところ全員が変異種に感染しているかは確認が取れていないが、少なくとも8人は変異種の感染であることが特定された。陽性と判定された接触者の移住地が複数の地区にまたがっていることから、すでにウイルスがマルセイユ広域にわたって拡散されているのではないかと不安が広がっている。マルセイユでは空港での検査強化などを行うと共に、住民へ予防の徹底を呼び掛けている。
フランス政府からは、英国との国境は「追って通知があるまで」閉鎖、飲食店の営業再開を延期、変異種を検知できる検査方法に改善、変異種に対するワクチンの効果を注視するなどの対策が打ち出されている。
最初の頃は、なかなか接種人数が増えず心配されていた予防接種も、現在は感染が広がっている東側を優先し、高齢者や医療関係者に接種が始まったところであり、1月末には100万人以上がワクチン接種を受けられる予定だ。
年末の結果が出るのはこれから
フランスでは、早めの非常態勢でコロナ感染抑制に一定の効果を上げ、現在は小康状態を保っていると言える。しかしながら、クリスマスから年末にかけて羽目を外した結果が症状として現れるとすれば、感染から発病までの時差を考えるとこれからではないだろうか。そして今後も、規則を守らない人たちはそこら中に現れることは間違いない。そんな状況下、それでも感染しないように自己防衛を続けていく日はまだまだ続きそうである。
トップ写真:パリ市内で行われているPCR検査 出典:パリ市公式ホームページ
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この記事を書いた人
Ulalaライター・ブロガー
日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、著述家として活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。