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.政治  投稿日:2021/4/14

「慰安婦問題は歴史認識を巡る現代国際世論戦」有村治子参議院議員


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

編集長が聞く!

【まとめ】

・「慰安婦問題」は、歴史を扱いながらも国際世論に働きかける国際政治そのもの。

・日本は国際情報戦を仕掛けられており、虚偽に基づいた国際世論は年々広がりエスカレートしている。

・終戦から75年が過ぎ、河野談話から28年以上たった今でも、日韓両国において、強制連行を示す公文書・物証は一点たりとも出てきていない。

 

いわゆる「慰安婦問題」の虚構の核心だった「強制連行が国会で日本政府により改めて正面から否定されたのは、3月22日の参議院文教科学委員会の場だった。質問に立ったのは有村治子参議院議員。その質疑の詳細は、Japan In-depthにて既に報じた。(「慰安婦「強制連行」なし 完全な公式明言」古森義久 3月29日掲載)今回、有村議員に直接話を聞いた。

 慰安婦問題の真相に迫る意義

安倍: 国会で「慰安婦問題」を質問した目的は?

有村氏: 私の30分間の国会質問をご覧になっていただくことによって、「慰安婦問題」の本質がつかめるような展開にしました。

そもそも「慰安婦問題」はテーマ自体が重く、多くの人にとっては身構えてしまう政治問題であり、とっつきにくいテーマです。何が真実なのか、私自身も数ヶ月間連日研究を重ね、ようやく本質を探る質問に立てるぐらいの時間軸・歴史観が出てきました。

この問題は、戦中の題材をテーマにしているものの、実際は歴史認識をめぐる現代の国際政治そのものです。終戦から45年以上も経って政治問題化し、以来30年間続いています。事の本質を理解される国内外の層を厚くしたいという思いで質問を構成しました。

安倍: この問題を取り上げるきっかけは何だったのか?

有村氏: 去年ドイツベルリン市に慰安婦像が設置されたことです。本来、主たる当事国は日韓なのに、近年はアメリカやオーストラリアや台湾、そして今回のドイツ等、第3国であるはずの国々で慰安婦像の設置が試みられ、事実設置されてしまった都市も少なくありません。終戦から75年経っているのにむしろその動きがエスカレートしています。

何が真実で何が虚偽なのかをしっかりと整理をしておかないと、今後も真実に基づかない国際世論戦によって、日本の尊厳や信用を貶められるのでは、という危機感を持っています。

▲写真 慰安婦像の前で行われた抗議集会 2020年10月13日 ドイツ・ベルリン市 出典: Sean Gallup/Getty Images

韓国では元慰安婦の人たちが日本政府を相手とって訴訟を起こし、1月8日にはソウル中央地裁が一人当たり約1000万円を賠償するよう求める判決を出しました。しかしこの裁判はそもそも「独立国は他国の裁判権には服しない」という「主権免除」の国際法原則からも逸脱しており、外務大臣の言葉を借りれば、「異常事態」が続いています。

当然ながら私の想いは、日本にとって不利なことや臭いものに蓋をしようという意図では全くありません。卑下もせず、美化もせず、歴史に謙虚に向き合い、先人が残した知恵も教訓も両方背負って、その学びから未来を確かにしていくことこそが、国のかじ取りを担う政治の大事な本分の一つだと考えています。

何が真実でどんな問題があったのかを整理した上で、国際社会に対して謝るべきところは謝り、虚偽に基づいて日本が不当に貶められているところは「それは事実に反する」と毅然と声を上げ、真実を語る外交の一助になればと考えています。

安倍: 今回の一連の質疑の中で注目を集めたのは「軍の関与」に関する質疑応答だ。日韓両国からも、「強制連行」を示す物証は出てきていない、と日本政府の公式見解が明確に出された意義は大きかった。

有村氏: 有難いご指摘です。私の質問において、終戦から75年、「河野談話」から28年経った今でも日韓両国において、強制連行を示す公文書・物証は一点たりとも出てきていない旨の政府答弁がなされ、公式の議事録に残りました。主権者たる国民の皆様と共有したい、揺るぎない情報です。

「河野談話」を作成する時、日本政府もかなり精力的に調査していました。当時石原信雄官房副長官から、各省庁に資料を探求するように指示が出され、国会図書館・国立公文書館、そしてアメリカ国立公文書館まで行って探したが慰安婦を強制的に連行・徴用せよというような公文書・物証は何一つ出てきていません。当時強制性を認めるべきと再三日本政府に迫ってきていた韓国からも、何一つ出てきていません。

安倍: 国会質問後どういう反響があったか?

有村氏: 国会質問をした3月22日のうちに、第三者の民間の方々が次々と国会質問の様子をYouTube にアップされ、現在動画の数は10を越えています。古森義久氏が書かれたJapan In-depthの記事に対するコメントも2180件あり、全て私自身が拝読しました。慰安婦問題を永年追ってきた研究者や報道の方々の目にも新鮮に映ったようで、ファクトベースで史実を丁寧に迫っていく私のスタイルが、一定の関心と評価を頂いたことはとても有難いです。

有村事務所では、字幕等を付けた「【公式】第16回『慰安婦問題・河野談話の真相』(令和3年3月22日)」をYouTubeに掲載しました。2週間あまりで再生回数が25万回超(4月13日現在)になっています。やはり真相を知りたいと考えておられる世論は着実に存在しています。

安倍:やはり慰安婦問題は触れるのをためらう雰囲気があったのだろう。しかし、一方で韓国ロビイングは海外で非常に活発だ。

有村氏:(慰安婦問題は)韓国国内のみならず、海外で暮らす韓国ルーツの方々によっても戦略的に、国際情報戦を仕掛けられている傾向があります。韓国の国家的主張をなぞり、連動して拡張する役割を担っている人々が国際社会に存在しています。

■ 政治運動的意図を持った「従軍慰安婦」という言葉

安倍: 「従軍慰安婦」と聞いたら、それは国家としての意思に基づいて日本軍が組織的に関与していた、というイメージと結びついてしまう。

有村氏: ご指摘の通り、「従軍慰安婦」という言葉は、日本政府が事実に反すると再三否定している「強制連行、性奴隷、20万人連行説」とセットで使われることが多く、旧日本軍の残虐性を強調する時に多用される言葉です。

「従軍慰安婦」という言葉はそもそも戦中にはありませんでした。1973年に作家の千田夏光(せんだかこう)氏が「従軍慰安婦」と言うタイトルの本を書いており、1970年代に初めて出てきた造語です。終戦から25年以上も経って作られた造語で戦時のことを表現することが果たして的確なのか、という問題提起をしています。

(動画の)コメント欄に、「有村さんの国会質疑を聞いてると言葉の一言一句にどれだけこだわらなければいけないのか分かった」と複数の方々がコメントされています。一番丁寧に、戦略的に語句を選ばなければいけないのは日本政府なのです。

「従軍慰安婦」という造語は、この30年間続いてきた慰安婦問題に関する論争の中核を成す肝の用語であるにもかかわらず、政府としてこの語句に向き合う定見がありませんでした。結果として、明確に否定してこなかったことが教科書に載り、事実に基づかない情報が世界各国にいまだに広がり続けている一因だと私は考えています。

「従軍慰安婦」との造語が中学歴史教科書で記述されていた時代を乗り越え、その記述が一旦なくなったのに、今回この4月から学校で使われる教科書でまた復活してしまいました。政府全体として「従軍慰安婦」という言葉は使わないと言っているのに、政府の一員である文科省が、「『従軍慰安婦』という記述の教科書を検定で通したのは適切な手続きだ」と言うのはジレンマです。制度上の矛盾があるように国民からは見えてしまいます。

「従軍慰安婦」という言葉が日本の教科書に載ってしまうことで、事実上「お墨付き」が与えられてしまっています。教科書調査官は教科書に記載させるべき情報の的確性を審査する専門家ではあっても、これほどまでに国際的にも政治問題化してしまった慰安婦問題に向き合い、神経をすり減らしながら高度な政治判断を迫られてきた日本政府の往年の経過と重圧をあずかり知る立場にないはずです。日本が慰安婦問題にどう向き合うのか方向性を決める上で、教科書記述が極めて大きな役割を担ってしまっているところに、制度的な矛盾があります。

私の質問において、文科大臣が重要な答弁をされています。いわく、「慰安婦に関する用語の整理が政府部内でなされ、政府の統一的な見解としてまとめられれば、その結果について発行者に情報提供するとともに、その内容に基づいて適切に検定を行っていくこととなります」と。このような将来に向けての方向性を示す答弁が出てきたことを歓迎します。

時の政権が歴史教科書に意のままに介入できるというなら、右の政権だったら右に変わるし、左の政権だったら左に変わります。それでは教科書の信用も無くなります。政府見解が統一すれば慰安婦記述に対する教科書検定の進め方も変わり得るということを示唆する大臣答弁は極めてフェアな原理原則です。

政府としてやらなくてはいけないことは、「従軍慰安婦」と慰安婦は何がどう違うのか、しっかり整理することです。

■ 史実を丁寧に論じて毅然とした外交を

今回誠心誠意質問を作り上げていきましたが、当然、この質問が最終目標ではありません。的確な質問を重ね、世論の理解や共感も得ながら、願わくば政府や国際世論を動かしていくためには、次の展開で何が必要かを戦略的に考え、その第一弾を実行したという認識です。

安倍: 今後、更なる動きはあるのか?

有村氏: 近々韓国からまた慰安婦に関する別の判決が出されると理解しています。いずれ、日本政府を代表する最高見解としての内閣総理大臣の公式答弁を、議事録に残す形でお尋ねする機会を得、日本の尊厳や信用を守りたいです。

安倍: 慰安婦の問題は文在寅政権下では解決が難しいのではないか?

有村氏: 河野談話について、2014年に学識者によって行われた検証によって、談話作成過程で、どれだけ深いすり合わせが日本と韓国の間でなされたか、外務省HPで公開されています。(慰安婦問題を巡る日韓間のやりとりの経緯 )22ページもある検証ですが、韓国に相当譲歩した当時の様子がリアルに伝わってくる力作です。

そもそも、1965年の「日韓請求権・経済協力協定」で、日韓間において、国と国との問題として、個人の請求権も含めて、完全かつ最終的に解決することを合意しています。日韓双方が努力し、14年間もかけて国交を正常化した後に慰安婦問題が何度も蒸し返されていること自体が問題です。二国間で合意したはずのゴールポストが簡単に動いてしまう国との国際合意はやはり難しいのです。

そもそも、吉田清治なるうそにうそを重ねた詐欺師が、「朝鮮半島で暴力の限りを働いて、幼子から母親を引っ剥がし、千人近い慰安婦の人狩りをした」などという完全な作り話の数々を創作し、これらの偽情報が朝日新聞等によって長年にわたり何度も喧伝されてきました。この偽情報が30年以上も放置され、国際社会にばらまかれ続けた間に、日本は真実に基づかない偽情報で不当に貶められ、日本の尊厳が傷つけられてきました。単に記事の訂正や、「読者にお詫びします」というだけで済む問題かどうか、極めて厳しい世論もあります。

フェイクニュースに踊らされ、それが国際社会にばらまかれたというのも慰安婦問題の特徴です。史実に基づかない偽情報によって、むしろ現在、日本が不当に非難し続けられています。そのからくりの一端は今回の質問によって国民の皆様に伝わったのではないでしょうか。

▲写真 ©有村治子事務所

■ インタビューを終えて

有村氏が何故このタイミングで質問を行った背景が良く分かった。真実を丁寧に探求し、事実に基づかない情報によって、日本の国際的立場が不当に貶められている現状を変えねばならないという有村氏の想いに共感する。

この問題はまさしく、日本の外交戦略そのものに直結している。今回、政府は公式に強制連行を示す公文書等は出てきていないと認めたが、それは第一歩に過ぎない。

国益を損なうような偽情報に対しては毅然と立ち向かうべきであり、その為の外交戦略があってしかるべきだ。その為にも、より活発な議論が国会で行われることを期待する。

(インタビューは2021年4月5日実施)

トップ写真:©有村治子事務所




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト、産業能率大学客員教授。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。


1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。


1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。


2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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