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.政治  投稿日:2021/5/8

東京五輪、本当にやるんですか?


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

【まとめ】

・緊急事態宣言の5月31日までの延長が決まった。

・オリンピック開催中止を求める署名がオンラインで27万筆に。

・開催するなら、菅首相は国民の不安に向き合いその理由を語るべき。

 

緊急事態宣言の5月31日までの延長が決まった。対象地域に愛知県福岡県も追加された。まん延防止等重点措置について北海道、岐阜県三重県を追加した。

しかし、そうすぐに感染状況は改善されないだろう。東京都の5月8日15時下時点の速報値で新たに1121人が感染した。1000人超えは5月1日以来で、4月25日からの第3回緊急事態宣言下、最多である。

菅首相の昨夜の会見も何を言っているのかさっぱりわからなかった。そして、例のごとく、記者の質問に真正面から答えなかった。首相官邸が公開している記者会会見の文字起こし(新型コロナウイルス感染症に関する菅内閣総理大臣記者会見)を読んでいただきたい。文字で読めばああ、そういうことを言っていたのか、とわかるが、実際にリアルタイムで聞いていると、つっかえつっかえ話すので、すんなり頭に入ってこない。前回も書いたが、心に響かない。

そして、本来は首相が言うべきことを、「基本的対処方針分科会」の尾身茂会長に丸投げするものだから、益々首相って何?という状態になってしまうのだ。官邸の広報は何を考えているのだろうか?

その尾身会長は重要な発言をしている。1つは、「下げ止まり」の問題だ。ようするに、あるところまで行ったらそれ以上は下がらなくなる、と指摘したのだ。そして、「下げ止まったからすぐに解除するということをすると必ずリバウンドが来ます。下げ止まっても、大まかな目安ですけれども、2~3週間はぐっと我慢するということが次の大きなリバウンドになるまでの時間稼ぎをできる」としたうえで、「解除をした後にも必要であればいわゆる重点措置についてもしっかりと活用することも一つの選択肢」だと述べた。国民に対し、そう簡単には感染は減りませんよ、緊急事態宣言を解除しても、その後も「まん防(まん延防止重点措置)」による自粛が必要ですよ、と言っているのだ。

もう一つは、「軽症状者に対する検査強化」だ。尾身会長は広島県で行われた大規模PCR検査の結果などを踏まえ、「簡便で結果がすぐ分かる抗原の検査キットというものがあるのですけれども、それを活用して今申し上げた軽症状者、病院に行くほどではない軽症状者を検査し、感染が確認されれば、その周辺の無症状者がいっぱいいますよね。その周辺の無症状者に広範なPCR検査を是非やっていただいて、そのことによって大きなクラスターを防ぐことができると思いますので、是非これを徹底的にやっていただきたいと思います。その際には、いわゆる健康観察アプリというのがいろいろありますから、そういう方法もうまく活用して、抗原の検査キットを活用した積極的な検査というのを是非政府にお願いしたい」と述べた。

▲写真 菅首相と尾身茂会長(2021年2月2日) 出典:David Mareuil – Pool/Getty Images

尾身会長の話を聞いていて、一体どちらが首相なのかわからなくなった人もいるのではないか?専門家の話を聞き、その上で対策を打ち出すのが政治家の仕事だろう。この会見の建付けは非常にまずいと思う。国民が首相の言うことに信頼を置かなくなってしまうからだ。

そして、会見ではオリンピックについても質問が相次いだ。オンライン署名サイト「Change.org」上の「人々の命と暮らしを守るために東京五輪の開催中止を求めます」と題したキャンペーンの賛同は、5月5日正午に開始されてから3日で約27万筆に達している。海外メディアからも、アスリート以外に来日する数万人の外国人関係者、報道陣と一般人との接触をどうコントロールするのか、質問が出た。

菅首相は「選手や大会関係者と一般の国民が交わらないように滞在先や移動手段、ここは設定をします。それで、選手は毎日検査を行うなど厳格的な感染対策をしっかり行います。こうした対策を徹底することによって、まず、選手と日本国民の命、健康はしっかり守る」と答えていたが、質問の答えになっていない。何万人もの外国人が来日し、8万人ものボランティアが参加する状況で、人と人が「交わらない」などということが可能なのだろうか?仮に選手に毎日検査をしても、検査で感染が防げるわけではないのだから、当然、感染は拡大するだろう。それが分かっているからみなオリンピック開催に疑問を持ち始めているのだ。

ちなみに、海外メディアでは、東京五輪を“Super Spreader”と称する記事を多く目にする。文字通り、「めちゃくちゃ感染を拡大する」イベントだと見られているのだ。日本人にその意識はあるのだろうか?

医療のひっ迫で命が脅かされ、長引く自粛で失業の恐怖に立ちすくんでいる国民に対して、何故今、オリンピックなのか説明できるのか?もし開催するのなら、菅首相には真正面から国民に向き合い、その理由を語ってもらいたい。

▲図 東京五輪開催中止を求めるキャンペーンサイトのバナー 出典:キャンペーン · 人々の命と暮らしを守るために、東京五輪の開催中止を求めます Cancel the Tokyo Olympics to protect our lives · Change.org

最後に、上記オンライン署名サイトに寄せられたコメントを以下に記す。

署名した方々がお寄せくださったコメント(一部抜粋)

 「もう、医療は崩壊しているのに、オリンピックをやる意味がわからない。」(看護師)

 「コロナ禍で最悪化した日本経済。非常事態の今はスポーツによる人の育成や世界平和に人や金を投じるよりも、コロナを抑制するための人と金が必要。一部の利権に偏るな!」(会社経営者)

 「今の日本の状況でオリンピックを、パラリンピックをやっても何も残らない まず先に国民の健康、次に経済の回復に最大限努力しないといけないと 誰もが感じてます。」(個人事業主)

 「医療従事者の命を守りたい」

 「国民の犠牲の上で開かれる祭典になります 早く目を覚まして欲しい」

 「何の為の五輪なのか? 国民の生活よりも五輪優先の考え方が異常です。」

 「今は平常時ではありません。緊急事態です。学校の運動会を中止して、オリンピックを強行するのは歴史に残る愚行です。」

 「私は新成人です。各地で成人式が中止になり残念な思いをしている人がいっぱい居るのにも関わらず、オリンピックは開催する。が理解できません。一生に一度の晴れ舞台に出る事も出来ないのに、なぜオリンピック開催するのか。開催しなくていいです。」

  「政府はオリンピック遂行のためにコロナ対応をサボってきた。怒!」

 「▪世界の状況(特にインドの状況)をみて公平さがなされていない。 ▪日本国民へのPCR 検査が速やかになされていない。 ▪自宅療養者が孤独に亡くなっている。 こうしたコロナ禍の災厄を改善することに税金を投入すべきです。 税金は国民が政府に与えているものです。使い道に意見を主張することは民主主義の根幹です。」(主婦)

 「中止は当たり前です。五輪貴族に甘い汁を吸わせてはだめです。」(取締役)

  「市民には自粛を強いておいて、外国からは人を大勢入れるのか? 民間のイベントは中止、でも五輪は別です。そう考えているのはアホな政府だけです。 協力金の支払いも全く追い付いていないのに、居酒屋を目の敵にして休業に追い込み、アウトドアでも感染するので外でも飲むな!でも五輪のテスト大会はやります。 こんな筋の通らんことをされて誰が自粛するのか? 本当に医療崩壊を防ぎ、国民の命を守る為の自粛要請なのか? 五輪開催の為の自粛要請なんかに協力する気は更々無い。 政府が思っているほど国民はアホではない。五輪開催で甘い汁を吸う一部の人間の為に一丸となって自粛はしないだろう。 本当に緊急事態なら、まず渡航制限、五輪中止を国民に宣言すべきだと思う。 五輪強行のスタンスのせいで、緊急事態宣言の効果がかなり薄れていることに気づいたほうがよい。」

 「子供達の遊び場も無い、自由に外に出られない、札幌市は小中学生の修学旅行さえ延期となった。そこまで我慢させてるんだぞ。うちの子(小学六年)は涙目で『5、6年生になって思い出が何も無い』と言った。そんな中でオリンピックを見ても楽しむことは自分はできない。 一部の富裕層やスポンサーに利益になるからと言って、一般の人や、ましてや子供に我慢させて、何が平和の祭典だ。オリンピックやったらどれだけ感染者が増えるのか、机上の空論で構わないから計算出来ないのか。医療従事者が歯を食いしばって頑張ってる中、国民から選ばれて国の代表者になったのが政治家なんだろう? 賠償金が掛かるなら、それこそ税金増やしてでも補えばいいだろう。 そこまで説明されたら国民だって納得はすると思う。自分達の私腹を肥すために都合の良い事並べて政治家になったのなら、全員辞めてしまえ。政治投票は国民と政治家の騙し合いなのか?そうなのであれば個人的な気持ちとして、2度と選挙に投票はしたくない。政治家全てが信用ならないから。」

 「オリンピック中止こそ最大のコロナ対策」

 「オリンピックで日本がメチャクチャになるのを見たくありません!」

 「五輪やる金あるなら定額給付金を配れ!」

 「私達日本国民の命の重さと、オリンピックの重要性は同じ重さでは決してないはずです」

 「五輪開催に反対、直ぐに中止し、その経費をコロナ拡大防止対策に使用して下さい。」

 「パンデミックという非常事態ですら利権を優先する情けない日本の政府。今、国民が最も求めているのはオリンピックではなくコロナ対策である。(中略)世界中がコロナで苦悩する現実、オリンピック試合の準備すらできない多くの国々が存在する中で、ひたすらオリンピックにしがみつき、自ら中止判断もできない日本政府への世界の評価は既に地に落ち、もし、オリンピック強行するなら日本を始め、世界にさらなる変異ウィルスによる感染を拡げることになり、国としての信用は大きく失墜し、外交問題まで発展する取り返しのつかないことになるだろう。」

トップ写真:国際オリンピック委員会(IOC)トーマス・バッハ会長(画面上)、東京2020組織委員会橋本聖子会長(右)と小池百合子東京知事(左)らの五者協議 2021年4月28日 出典:Franck Robichon – Pool/Getty Images




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト、産業能率大学客員教授。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。


1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。


1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。


2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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