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.国際  投稿日:2021/5/17

仏、パレスチナ支援デモ激化


Ulala(著述家)

フランスUlalaの視点」

【まとめ】

・仏でパレスチナ支援デモを禁止。2014年「騒乱」再発を懸念。

・放水車や催涙弾も投入。デモ強行で51人逮捕も大きな被害なし。

・ニース市長「デモはハマスのテロに加担」と参加者の制裁を要求。

 

イスラエルと、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとの間で交戦が続く中、世界各国でパレスチナ支援者によるデモが計画された。しかし、フランスでは、「2014年にパリで起きた、ひどい惨状を再現してはいけない」として、ジェラルド・ダルマナン内務相により、パリでのデモ禁止が要請された。

それにもかかわらず、15日土曜日には、パリではパレスチナ支援者によるデモが開催された。そのデモを解散させるために放水車が出動し、催涙弾が飛び交うなど混乱もあったものの、結果的には2014年ほどの大規模な混乱に至ることはなかったようだ。

■ パリでのパレスチナ人を支援するデモ

今回、ダルマナン内務相がパレスチナ人を支援するデモを禁止したのは、2014年のガザ攻撃への大規模抗議デモで起こった騒乱を、パリで再び発生させないためである。また、ユダヤ人の礼拝所への攻撃を阻止する目的もあったのだ。この要請に対して、左翼からは大きな反発があったものの、当時の状況を知るパリのアンヌ・イダルゴ市長も、今回のデモを禁止することは「賢明な」決定であると支持を示していた。

最終的に首都でのイベントを禁止することは行政裁判所によっても認められ、イル・ド・フランスのパレスチナ協会の弁護士による控訴は棄却された。そこで前日には警視庁により、デモを開催する違反者は135ユーロの罰金を科せられることも警告されたのだ。

▲画像 「デモの禁止」と「違反した場合の罰金」を警告するパリ警視庁のツイッター 出典:パリ警視庁公式ツイッター

しかし、パレスチナ協会にはこの決定は支持されることはなかった。パレスチナ自治区では「虐殺が続いている」として、「私たちはパレスチナ人との連帯を沈黙させられることを拒否し、土曜日午後3時に18区のバルベス通りに集まりデモを行う」と宣言したのだ。

これを受け、警察本部の方も、この違法なデモに対処するため、正午からバルべス通りの店舗の閉鎖を命令し、18区の一部を封鎖し、着々と準備を行っていった。

そして15日の土曜日当日。主催者はバスティーユ広場まで「平和的に」デモ行進を行うことを計画し、宣言通り、パレスチナに関連する約30の他の組織と共にパリでデモが行われたのだ。

デモ開始は午後3時から予定されていたが、すでに午後2時35分にはデモ隊が集まっていた。バルベス通りでは動員された4,200人の警官と憲兵隊により、集まったデモ隊に対して、解散を促すための放水や催涙ガスが投入されていったが、デモ参加者は、「イスラエルの殺人者」、「私たちは皆パレスチナ人です!」と声を上げた続けたのだ。

▲写真 デモ隊を解散させるため、治安当局は催涙弾や放水車を投入(2021年5月15日 パリ市) 出典:Sam Tarling/Getty Images

その後は、一部のデモ参加者が道路に高いバリケードを設置したり、ゴミ箱を燃やしたり、警官が負傷するなど、激しいやり取りが続いた。ただ、デモ隊は午後7時半ごろには解散した。結果的に、2014年よりも参加した人数は少なく、警官や憲兵隊の人数が多かったこともあって、大きな被害を出すことなく一日の終わりを迎えた。

■ フランス全土で2万人以上がデモに参加

内務省によれば、この日のデモ参加者はフランス全土合計で2万2,000人。パリでは、最大3,500人ほどが集まり、首都の外では1万8,500人以上が集まった。合計で60か所でデモがおこなわれ、「パレスチナでの虐殺をやめろ」、「イスラエルに対するボイコットを」、「ガザは死にかけている」などと行進したが、パリ以外の都市ではかなり平和的なデモであったという。

最大のデモが行われたのはストラスブールで4,000人が行進。マルセイユでは1,500人、リヨンとナントでは1,000人、ナンシーで700人、ボルドーで600人と続き、デモでの逮捕者は、パリでの44人を含む51人となった。

▲画像 警察や憲兵隊への謝意と、デモ参加者51人逮捕を報告するダルマナン内務相のツイッター。 出典:ダルマナン内務相ツイッター

なお、ニースではデモは禁止されたが、ニースの市長によれば、計画されているデモはただのパレスチナ支援者とは考えられておらず、イスラム主義を掲げるパレスチナ組織ハマスの支援者で、テロの共犯者だと主張している。

▲画像 ニース市のエストロジ市長のツイッター。デモはハマスを支持し、テロに加担するものだとして、政府にデモ参加者への制裁を求めている。 出典:クリスチャン・エストロジ市長のツイッター

パレスチナ当局の情報によれば、金曜日には、31人の子供を含む126人が死亡し、月曜日以降、ガザ地区でのイスラエルの砲撃で950人が負傷したと報告されている。月曜日以来、2,000発以上のロケットがイスラエル領土に発射され、子供と兵士を含む9人が死亡、560人以上が負傷し、そして、現在も、その争いは続いているのだ。

2014年の時はパリでは数日デモが続いたが、今回はどうなるかは、現時点ではまだ不透明である。

《参考リンク》

Manifestation pro-Palestine interdite: 4200 policiers et gendarmes mobilisés à Paris :『パレスチナ支援デモ禁止:パリで4200人の警察官とジャンダルム(憲兵)を動員』

Rassemblements pro-palestinien à Paris : entre 2500 et 3500 manifestants, 44 interpellations, un gendarme blessé : 『パリでの親パレスチナ集会:2,500~3,500人のデモ参加者、44人の逮捕者、警察官1人が負傷』

トップ写真:パレスチナに連帯する、反イスラエルデモ(2021年5月15日 仏・パリ市レピュブリック広場) 出典: Kiran Ridley/Getty Images




この記事を書いた人
Ulalaライター・ブロガー

日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、著述家として活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。

Ulala

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