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.政治  投稿日:2021/9/9

総裁選「石破氏自身が判断するしかない」衆議院議員齋藤健氏


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

編集長が聞く!」

【まとめ】

一年前の総裁選のときよりも石破氏の政治生命にとって遥かに重い決断になっている。

・決断は派閥の合意で決めたということではなく、彼自身が判断するしかない。

・コロナ後に来る危機を、どの政党ならよりよく対応できるかも問われている

 

自民党総裁選を29日に控え、石破茂元幹事長の去就に注目が集まっている。9日時点でまだ石破氏は出馬を石破茂衆議院議員を支える水月会の一人、齋藤健衆議院議員に話を聞いた。

安倍: 菅総理の辞任の経緯についてどうお考えですか?

齋藤氏: 私はテレビや新聞で報道されていることがどこまで真実かは分からないので、それをベースにコメントするのは正直ためらわれるものがあるが、一番大きいのは総選挙があるという中で支持率が思わしくない状態が続き、なおかつ下がってくる状況の中で、自民党議員の政治生命を預かる総理としては、最後は判断せざるを得ないところになったのではないか。

その間、色んなやり取りがあったと聞いてはいるが本当かどうかは分からない。付け加えると、私は菅総理の官房長官時代に、政策面で連携をしていたことがあり、彼はすごいシャープで改革意欲がすごかった。(官房長官を)8年やりましたよね。で、その後総理1年で約10年。どんなに優秀な独裁者でも10年経つとセンスが狂ってくるとよく言われるし、世界の歴史がそのことを証明しているが、やっぱりあんなに素晴らしかった菅さんも官邸の中に10年いると、歯車が狂うようなところがあったのかもしれない。素晴らしかった時代を知っている自分としてはそう思います。

安倍: 菅総理の政策の評価できる点は?

齋藤氏: 皆さんと違うこと言うかもしれませんが、一番の貢献は安全保障です。つまり、21年の4月の日米首脳会談の共同声明に台湾海峡の平和及び安定の重要性を強調して、日米ががっちり合意したということと、それをG7でも合意したということ。これは安倍路線の継続ではあるが中々できることではありません。安倍さんがやってきた外交の良い部分をしっかりと継承し、ヨーロッパまで含めてきちんと文言に残して、がっちり固めた。新しい大統領のバイデンとG7でこの台湾の問題にコミットをさせたというのが、日本の将来にかかわる貢献としては大きいんじゃないかと思っています。安全保障をアメリカで勉強してきた人間からすると、よくG7各国を巻き込んだなと思います。

安倍: コロナ政策についてはどう評価するか?

齋藤氏: これは誰がやっても難しい問題で、批判するのは簡単だと思う。でも、よく言われている通りもう少し発信をしっかりできていると良かったと思いますね。例えば、(緊急事態)宣言を乱発しているわけです。経済と感染防止の両立と簡単に言うけれど、そもそも両立できないものです。感染防止をしようとすれば経済にどうしても影響が出るし、経済に気を遣うと感染の方は広がってしまう。(感染防止と経済対策を)繰り返しながらワクチンが効くのを待つしかないという言い方を(国民に)あらかじめすれば、『なんでまた宣言出すのか』とかならなかった。アクセルとブレーキを踏みかえながらやっていくしかないんです。そのうちワクチンで収束していきます、と最初からはっきり言っておけば、『何回宣言出しても効果ないじゃないか』とか言われなかったと思う。そういう点で、国民目線の発信がちょっと足りなかっただけで、やっていることはそんなに間違ってなかったと思います。

安倍: 総裁選について、石破派としては石破氏に出てもらいたいという気持ちはあるか?

齋藤氏: 色々な意見が今の時点ではあります。一枚岩で出てくれっていう感じでもない。慎重派もあります。石破さんも過去何回も負けているし、今度勝てるかということ。そして、負けたときにどうなるかということ。前回の一年前の総裁選のときよりも彼の政治生命にとって遥かに重い決断になっている。だから、決断は派閥の合意で決めたということではなく、彼自身が判断するしかないんじゃないかなと思います。

本人は全部分かっているから、出て勝てるかとか、議員票がとか、出なかったときにどういうことがあるとか、全部分かっている。それを水月会が周りでわあわあ言って決めるには今回の決断は重すぎると思っています。やはり、出ても勝てないかもしれない。出ないってことは石破らしさが失われる。そういう中で、本人が重い決断をするしかない。

安倍: 水月会の仲間内で意見交換は?

齋藤氏: 仲間内ではあります。水月会としては無いけれど。いろんな考えがあります。主戦論もあれば、今回は(見送ろう)・・・、という意見もある。先ほども述べたように今回は非常に重い判断。最後は自分で決めるしかないよね。今回は大衆討議じゃない。

▲写真 ⓒJapan In-depth編集部

安倍: これからの日本は新総裁の下、どの政策に重点を置くべきか?

齋藤氏: まず、今回の選挙の争点になると思うが、コロナ対策は当然です。今コロナ対策で一番重要なのはいかに自宅療養者を減らすかです。命の危険に怯えている自宅療養者が14万人もいる。それを1人でも減らすこと、国民の命を守るのが政治の使命だとすれば、野戦病院でもなんでも作って、自宅にいないでこっちにいた方が安全だよという状態にすべきです。それだけでも不安は全然違う。そういうコロナ対策をしっかりやるのは当然争点になりますね。

■ コロナ後に来る危機

齋藤氏: 私は、コロナの危機が去った後に日本に別の危機が来ると思っています。例えば、財政問題。77兆円を昨年度補正予算に突っ込んだ。いずれ財政再建をやらなくてはいけない。それから産業競争力。中国に追い上げられ、アメリカとの差は広がっている。デジタルで遅れている。デジタルで遅れをとったということは、他の分野でも遅れているに違いない。そういうところを含めて産業競争力を取り戻さないと大変なことになる。

それから少子化。昨年は出生数84万人。今年は80万人を切る。ここまでくると、国家的一大事だと思っている。今までの生温い政策じゃなくて、本気でやらないと日本の国力は取り戻しがつかなくなる。

また、米中の間に挟まって際どい外交もやらなくてはいけない。

そういうもろもろのものがコロナの危機の後に迫っているわけですよ。目前に。だから、今度の選挙は、コロナをどうするかとか、菅さんが気に入らないとか、自民党気に入らないということだけで判断してはいけない。コロナの危機の後に来るそういった問題を、どの政党ならよりよく対応できるかということも問われているんです。国民の皆さんは、そこを忘れないでいただきたい、と言いたいですね。

確かに、コロナで『ワクチンまだ打てない。なんで行列させるんだ』と言うのは分かるけれども、それだけで判断をしないでほしいなと。お怒りは分かるけど、それだけが争点じゃないですよと。わたしは演説でいつもそれを言っています。安倍さん(筆者)にも御理解いただければ嬉しいです(笑)。

(このインタビューは2021年9月5日に行われました)

トップ写真:ⓒJapan In-depth編集部




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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