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.社会  投稿日:2021/11/6

「私人・小室眞子さん」も前途多難 王家の結婚について 最終回


林信吾(作家・ジャーナリスト)

「林信吾の西方見聞録」

【まとめ】

・秋篠宮家の長女・眞子さんが、結婚して皇籍を離脱し、小室眞子さんとなった。

・2人にとって、海外にしか居場所がなくなる日本社会はやはり問題があるのではないか。

・今後の米国メディアの動向も気になる。

 

予想以上にひどい会見だった。

秋篠宮家の長女・眞子さんが、結婚して皇籍を離脱し、小室眞子さんとなった。その報告会見が行われたのだが……

のっけから余談で恐縮だが、私はこれまで「プリンセス」「婚約者の男性」といった書き方をしてきた。

この結婚に関しては、あまりにも色々な人が色々なこと言うので、万が一破談になった場合の、彼の将来をおもんばかってのことである。

連日マスメディアが大きく取り上げているのに、我ながら無駄な配慮だとも思っていたが、一人くらい無駄に良心的なジャーナリストがいてもよいだろう、という信念を変えるつもりもなかった。

話を戻す。

各局がライブ映像を流すなどしたので、多くの方が目にされたことと思うが、二人して原稿を読み上げるだけの、まったくもって血の通わない会見であった。私はニュースサイトで見たが、最初12分と表示されたのを見て、まさかダイジェスト版が流れるのではないだろうな、と思った。もちろん、本当にこれが全てであった。

会見は開くが質疑応答は行わず、事前にメディアから示された質問には文書で回答する旨、宮内庁筋からの発表があったので、もはやなにも期待できないな、と思ってはいたのだが、それにしても、くどいようだが予想以上にひどかった。

煎じ詰めて言うと、自分たちの結婚を応援してくれた人たちに対してだけ礼を述べ、事実ではない情報が流されて自分たちがいかに傷ついたか、というメッセージを、それこそ一方的に発信して「これで終了です」となったのである。

具体的にどのような「事実ではない情報」が流されていたのか、また、それならばどのような事実が存在するのか、そこをきちんと説明するのが二人の「立場に伴う責任」ではなかっただろうか。

こうしたことになった理由として、眞子さんが「複雑性PTSD」と診断されたことが挙げられる。

発表の直後から、いわゆるアンチのネット民の間では「詐病」などと言われた。このような書き込みは相手にする価値もないが、精神科医の中にさえ、この発表に疑義を呈する向きがあったことは事実だ。

そもそも、「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」という病名が人口に膾炙するようになったのは、1970年代の米国においてである。あまりに過酷な戦争を体験したヴェトナム帰還兵たちが、不眠や被害妄想に悩まされる、といった症例や、いわゆるレイプトラウマで、男性と会話さえできなくなったという女性の症例が数多く報告され、研究が進んだ結果、新たな病名が認知されるようになったのだ。

したがって、くだんの精神科医に言わせると、長期にわたる虐待があったわけでもなく、

「悪口レベルで発症するなど考えにくい」

ということになる。

専門医の言うことであるから安易な口出しはしたくないが(もっとも、それを言うなら診断を下したのも専門医である)、悪口レベルで……と片付けられてしまうと、首をひねりたくなる面はあった。

私自身も経験したことだが、ネットの悪口というのは、それこそネット民が好む表現を借りれば「破壊力ハンパない」ので、げんに誹謗中傷を苦にして自殺に追い込まれた有名人も複数いたではないか。

しかしながら、会見で眞子さんは、原稿棒読みであったとは言え、話し方もしっかりしていたし、なかなかの目力であった。

▲写真 結婚会見に臨む眞子さま(2021年10月26日) 出典:Photo by Nicolas Datiche – Pool/Getty Images

特に、多くの報道関係者が驚きをもって伝えたことだが、小室氏の母親と元婚約者との間で生じた金銭トラブルに関して、彼の対応は眞子さんが示唆した通りのものであったことや、米国留学も、将来の計画を前倒しして海外に生活の拠点を設けてほしいという彼女の要望に沿ったものであったと、彼女自身の口から語られた。

よくも悪くも、想像以上に強い女性なのだな、というのが偽らざる印象である。なにが「よくも悪くも」なのかと言うと、これは自分が悪役になってでも小室氏に対するバッシングを牽制しようという意図がこめられた発言かも知れない、と思えたからである。

会見の後、宮内庁筋からは、眞子さんは最後まで

「自分の言葉で(国民の)皆様の理解を求めたい」

と述べていた、などという情報が発信されたが、こういうことを昔から「出し遅れの証文」と言うのだ。

あくまでも私の推測であることを明記しておくが、宮内庁筋の本音は(なにしろ幼少時から側にいて、彼女の性格は熟知しているはずなので)質疑応答を行ったらどのような発言がでるかわからない、という「逆忖度」だったのではあるまいか。その伏線としての複雑性PTSDという診断であったとすれば、辻褄は合う。先ほど述べたことと矛盾するようだが、権力に媚びる「専門家」などいくらでもいるということは、10年前の震災と原発事故に際して、満天下に示されたことではないか。

ともあれ会見は終わり、二人はこれから米国での生活が待っている。

後はそっとしておいてあげましょう、というアナウンサーの発言が、一部の執拗なアンチを除いてネット上でも拍手喝采となったし、私も個人的には同調したい気持ちもある。

ただ、ふたつの点は指摘しておきたい。

ひとつは、どこまで行ってもこの結婚は国民から祝福されたものではなく、ある意味で「駆け落ち」に等しい。だからと言って、海外にしか居場所がなくなるという日本社会には、やはり問題があるのではあるまいか。

いまひとつは、今後の米国メディアの動向が気になる。

当たり前の話だが、米国のメディアと一口に言っても、そのスタンスは千差万別で、リベラルな新聞などは、日本での世にいう小室バッシングに対して「大人げない」と苦言を呈したりしているが、この手のゴシップが大好きな雑誌もあって、日本でのバッシングにわざわざ便乗した記事まで見受けられた。

今後も、彼らの米国暮らしを伝える映像に商品価値がある、と判断されれば、パパラッチにつきまとわれるのは必定であろうし、今のところ米国世論の大勢は二人の移住に対してウェルカムであるようだが、いつどこで風向きが変わるか、知れたものではない。

再び「よくも悪くも」だが、二人の結婚をめぐる一連の騒動は、皇女の結婚問題から皇位継承のあり方についてまで、国論を二分したと言って過言ではないほどの論争を引き起こした。

はなはだ気の毒ではあるけれども、その当事者が、今は皇籍を離れた私人です、と言ったところで、そうは問屋が卸さないのがメディアというものなのである。

その1その2その3その4。全5回)

トップ写真:結婚会見をおこなう眞子さんと小室圭さん(2021年10月26日) 出典:Photo by Nicolas Datiche – Pool/Getty Images




この記事を書いた人
林信吾作家・ジャーナリスト

1958年東京生まれ。神奈川大学中退。1983年より10年間、英国ロンドン在住。現地発行週刊日本語新聞の編集・発行に携わる。また『地球の歩き方・ロンドン編』の企画・執筆の中心となる。帰国後はフリーで活躍を続け、著書50冊以上。ヨーロッパ事情から政治・軍事・歴史・サッカーまで、引き出しの多さで知られる。少林寺拳法5段。

林信吾

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