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.社会  投稿日:2021/12/28

新聞業界の苦境、歯止めかからず「2022年を占う!」メディア


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

【まとめ】

・新聞凋落止まらず。発行部数は過去20年で4割減った。

・各社デジタル版の有料化に動くも、日経の一人勝ち変わらず。

・新サービスも不発、取材力と膨大なアーカイブを活かしてマネタイズできるか。

 

■ 新聞の発行部数減続く

新聞の凋落は今に始まったことではない。過去20年間、一貫して右肩下がりに部数を減らしてきた。2000年には発行部数、約537万部(一般紙+スポーツ紙)を誇ったが、2021年は約330万部にまで減った。実に約4割減である。1世帯当たり部数でみると、2000年には1.13部だったものが、2021年には0.57部だ。(一般社団法人日本新聞協会調べ)

表)一般社団法人日本新聞協会のデータより筆者作成

それでも新聞はメディアの雄として生き延びている。かつて筆者はその膨大なアーカイブを有効活用してデータ分析やインフォグラフィック化など新たな分野に活路を見いだす可能性について期待したが、そのような動きはほとんどといっていいほど見られなかった。

新聞各社がやったことと言えば、デジタル版の有料化だ。しかし、各社は一早くそれに取り組んだ日本経済新聞(以下、日経)の後追いをしたにすぎない。

しかし、ちょっと考えてみて欲しい。既に多くのビジネスマンは日経を購読している。日経Wプラン(日本経済新聞+日経電子版)は、セット版地域で月額5,900円(税込み)、全日版地域で月額5,000円(税込み)と結構な金額だ。電子版のみだと、月額4277円(税込み)となる。

他の全国紙は、日経に加えて有料購読してもらいたいだろうが、そのハードルはかなり高いと言わざるを得ない。

朝日新聞デジタルはスタンダードコースで月額1980円(税込み)、プレミアムコースで月額3800円(税込み)だ。毎日新聞デジタルは、スタンダートで1ヶ月コース:月額1078円(税込み)、6ヶ月コース:月額825円(税込み)、12ヶ月コース:月額770円(税込み)となっている。プレミアムは、1か月コース月額3520円(税込み)、6か月コース2739円(税込み)、12か月コース2640円(税込み)だ。産経新聞電子版は月額1980円(税込み)となっている。

独自路線は読売新聞。読売新聞オンラインは、紙の読売新聞購読者がデジタルサービスをゼロ円で利用できる。購読料は月額4400円(税込み)だ。

日経デジタル利用者がプラスアルファで他紙のデジタル版を契約するだろうか?新聞購読に月額1万円を払う人はかなり限られるだろう。どう考えても日経の一人勝ちは変わりそうにない。他紙は日経が持たない独自サービスを打ち出さない限り、有料会員は増えないだろう。

■ 新聞とプラットフォーマーとの関係

新聞の取材力は圧倒的だ。それは新聞記事を配信するプラットフォーマーもよく分かっている。Googleは2021年9月に「Googleニュースショーケース」なるサービスを開始した。パネルというところにニュース提供社の記事が一覧表示される。既に大手新聞社や地方新聞社、通信社らと提携している。

もともとプラットフォーマーが新聞など大手メディアのコンテンツ(記事)をタダで利用しているとの海外での批判に応えたものだ。豪州や欧州などで、法的にプラットフォーマーにニュース使用料をメディアに支払うよう義務づける動きが活発化しており、それに対応するために生まれた。

日本ではなぜかメディアとプラットフォーマーとの摩擦は海外ほど表面化していない。しかし新聞社が消失すれば、その記事を配信しているプラットフォーマーに跳ね返ってくる。記事を書く存在が消えてしまっては元も子もない。Googleのみならず、新聞の記事を提供しているプラットフォーマーたちは多かれ少なかれ、こうした潮流にあらがうことはできないだろう。

しかし問題は新聞が、プラットフォーマーから記事提供の対価を得られたとしても、プラットフォーマーに主導権を握られていることには代わりない、ということだ。

新聞が主体的に記事の対価を得ることはできないのだろうか?

■ 試行錯誤する新聞

新聞だとて手をこまねいているわけではない。コンテンツの多様化や付加価値向上を目指した方策を模索し続けている。

日経は2020年12月から「Think!」なるサービスを電子版で開始した。内外のエキスパートがコメントするものだ。経済ウェブメディア「NewsPicks」の後追いの感は免れ得ないが、2021年徐々にエキスパートの数を増やし、現在は100人以上になった。強みは自社の編集委員・論説委員・コメンテーターがいることだ。ただし、Think!の場合、コメントするのは文字通り「エキスパート」のみであり、一般のビジネスパーソンや識者、学生ら、多様な読者のコメントが読めるNewsPicksとは異なる。コメントの数も1記事当たりせいぜい2~3本、コンテンツの付加価値というには少々さみしい。

毎日新聞は、「政治プレミア」という政治に特化したコンテンツを提供している。政治家が寄稿し、それに対して一般読者がコメントを書き込めるサービスだ。議論整理は、識者が行う。興味深いサービスだが、2018年の6月にスタートしているのに、余り活発に議論がなされているとは言いがたい。そもそも記事が有料なので政治家の寄稿も最後まで読めない。議論にまでたどり着かない読者が多いのだろう。有料読者会員を増やしたいがためにペイウォールを採用すると、読者参加型サービスの普及が足踏みしてしまう、というジレンマに陥る。なんとも頭の痛い問題だ。

問題は、「Think!」にしても「政治プレミア」にしてもコストがかかっているということだ。どちらのサービスも、外部の識者にコメントを求めたら原稿料が発生するだろう。なにより、サービスを提供するためにはウェブデザイン、寄稿者・コメンテーターとの交渉、校正、記事アップロード、SNS拡散、アクセス分析等々、様々な作業が発生する。

結局、記事制作にしても、付加価サービスも人手がかかる。その対価を読者からもらうことは、至極当然のことに思えるが、それがうまくいかないのが新聞業界の辛いところだ。

なぜこんなことになっているかというと、ひとえに競争原理が働かない中で、長年広告モデルに依存してきたからであり、デジタル革命が急激に進む中、新たなビジネスモデルを構築してこなかったからだ。

2022年も新聞業界の苦境は続くだろう。その取材力と膨大なアーカイブをどうマネタイズしていくのか、引き続き問われる1年となろう。

トップ写真:米国バイデン大統領就任を報道する日本の新聞(2021年1月21日) 出典:Photo illustration by Takashi Aoyama/Getty Images




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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