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.社会  投稿日:2022/6/4

若者が気軽に性の悩みを相談できる場所「ユースクリニック」とは


Japan In-depth編集部(横塚愛美、黒沼瑠子、仲野谷咲希、田邉創士)

【まとめ】

・6月4日(土)、神奈川県藤沢市の『藤沢女性のクリニックもんま』で、若者を対象にしたオープンユースクリニックが開かれた。

・困ったことがなくても立ち寄れる場所があることで、自尊心の傷つきに気がつくことができる。

・性に関するトラブルを特別扱いせず、『健康』に関わることの一つとして扱う意識改革が必要である。

 

現在の日本には性について相談できる土壌が育っておらず、生理や性行為、性感染症などについて「恥ずかしいこと」として一人で悩む少女も少なくない。性の正しい知識を持たないまま、望まない妊娠や性暴力に巻き込まれるケースもある。

ユネスコが発表した「包括的性教育」(注:ジェンダー平等や性の多様性を含む人権尊重を基盤とした性教育)を代表として海外では性教育が進む中、日本では学校教育においても家庭教育においても、性がタブー視されているのが現状だ。

若者に正しい性知識を広めるためにも、より包括的な性教育を推進していくためにも『相談できる場所』の確保は必須である。今回、日本ではまだ珍しい、若者の性の悩みを対象とした「ユースクリニック」を開催しているクリニックがあると知り、取材することにした。

6月4日土曜日、神奈川県藤沢市の『藤沢女性のクリニックもんま』で、若者を対象にしたオープンユースクリニックが開かれた。

▲写真 院内の様子(2022.6.4)©︎Japan In-depth編集部

毎月第1土曜日の14時~17時まで、若者の悩み相談の場として無料開放しているという。このオープンユースクリニックに来院した方々にお話を伺った。各々に取材をした後、座談会のような形で様々な性に関する問題について議論することができた。

母親とともに来院した、高校一年生の鈴木さん。母親がもともとこのクリニックに通院していて、今回「生理痛が重い」という悩みを抱えてユースクリニックに来たのだという。

最初、婦人科での診察に抵抗があった鈴木さんは「まずはユースクリニックにきて雰囲気を感じたかった」と話す。直接クリニックの雰囲気を感じたり、門間美佳院長に診察の様子などを聞くことで、婦人科に対する不安なども解消できたそうだ。

大学3年生の吉岡さん。彼女はジェンダー平等について深い関心を持っており、ゼミではSRHR(セクシャル・リプロダクティブ・ヘルス・ライツ)啓発のためのプロジェクトを考案中だという。今回、性的合意などについて知見を広めるためにユースクリニックを訪れた。

彼女は「大学の保健センターが、ユースクリニックのような存在になればいいのに」と、若者が気軽に相談できるような場所が必要だと語った。

看護学生の川村さんはHPVワクチン接種に伴う体調不良がきっかけでこのクリニックを知ったのだという。HPVワクチン2回目接種の際に体調不良になり、3回目のワクチン接種を他のクリニックで断られてしまった。そこで、ワクチン接種に力をいれている本クリニックに来院し、3回目の接種を行ったと話していた。

座談会では「自分の症状が人と比べてどう違うのかはなかなか知る機会がなく不安だった。「普通」を知ることは持病に気づくきっかけにもなった。」と述べた。

▲写真 座談会の様子。(2022.6.4)©︎Japan In-depth編集部

「ユースクリニックを、困ったことがあってくるのではなく、困ってなくても気軽に通える場所にしたい」と門間医師は語る。

「体の不調で来る人もいるが、よくよく話を聞くと心の不調が現れた結果、体を壊していた人もいる。自分から気づくのは難しいが、こうして話す機会を設けることで気づき、エンパワーされ、話しやすくなる。性に関わらず自尊心が傷つけられてモヤモヤした時に考えられる場所を提供したい」

ユネスコが推進している包括的性教育には、性に限らず、「自分がどうしたいか」という主体的な価値観を元に、相手を傷つけずに「嫌だ」と伝える練習も含まれるという。

門間医師は「性に関するトラブルを特別扱いせず、メタボや高血圧と同じような『健康』に関わることとして考えていければ」と語り、国全体の「性に関する意識」改革の必要性を訴えた。

ユースクリニックの存在はまだ浸透しきっておらず、若者といっても性の問題に関心のある人の来院が多いという。本当に困っている人に気軽に相談できる場所を提供する必要があり、そのためにもユースクリニックの認知を広めることが急務だ。SNSなどを通じて一人でも多くの若者の関心を集めるべきだ。

今回、我々編集部は「性をもっとオープンに」というプロジェクトを立ち上げ、性にまつわる問題やHPVのワクチンなどについて継続的に取り上げていくつもりだ。

(了)

トップ写真:オープンユースクリニックでの集合写真。後列右から2人目が門間美佳医師。(2022年6月4日)©︎Japan In-depth編集部




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