[嘉山幸子のイタリア留学リポート]何故、イタリアのデザインは世界を魅了し続けるのか。
イタリアというと、インテリア、家具などを連想する人も多いのではないだろうか。少し前の話になってしまうが、4月に、ミラノサローネ国際家具見本市開催された。ミラノサローネ国際家具見本市(写真右)は、1961年にスタートし、世界でも最大規模の家具の展示会である。
小規模な展示会から始まったこの見本市も、今では世界中から注目を集めるまでに成長した。
イタリア製の家具と聞くと、なぜかその価値を無条件に認めてしまう。そんなイタリア製というネームバリューは世界中で通用するだけに、デザイナーからも自分の作品に対する思いや自信を感じるし、個性が否応なしに伝わってくる。消費者側もそれぞれこだわりを持っているし、自分なりの価値基準をきちんと持っている。そんなイタリア人のモノに対するこだわりは、日常からも感じ取ることできる。
イタリア人にとって、家とは、日曜日は家族、そして時には友人を招き、彼らをもてなす場、そして、時間を共有する場である。家具やインテリアは、その空間を彩り、豊かにするための道具として存在している。だからこそ、彼らは自分の所有物にこだわりを持つし、そこから精神的豊かさを得ようする。機能性だけでなく、自分の感性に訴えかけるものが彼らにとって意味のあるものなのだ。
例えば、先日、友人宅に訪れたとき、“ここは、ピカソのために作った部屋よ”と、案内された。そこには、名前の通り、ピカソの絵が飾ってあり、インテリアには、家族から受け継いだ100年も前のテーブルや旅が好きな彼女が集めた小物が飾られていた。
そのテーブルからは家族とのつながりを大切にするイタリア人の国民性、そして小物からは、旅が好きな彼女の姿が感じることが出来た。他人にとって、意味がないように感じられるものでも自分なりのストーリーや意味を持たせることが重要なのである。
イタリアで生活する中で、電子レンジがなかったり、エアコンがなかったり、不便だと感じることが多い。でも彼らのものに対するこだわりからは、日常をより豊かにし、充実した日々を送ろうとする姿勢からくるのだと感じる。
機能性を重視する日本では、イタリアデザインは値段のわりに使い勝手が悪かったりして、理解できないデザインもあるかもしれない。でもイタリア人的視点に立った時、自分が美しいと思うそのデザインが、自分の人生を豊かにする一つの要素になるのだと思う。だからこそ、彼らは自分の所有物にこだわりを持ち、家や、身の回りを美しいもので彩りたいと思うのだろう。
日常生活の中でこだわりを持ち続けるイタリア人だからこそ、多くの人の感性に訴えかけるデザインを考え、世界を魅了し続けることが出来るのではないだろうか。
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【リポーター紹介・嘉山幸子】
コンサルティング会社勤務を経て、エシカル・ファッション・ブランドの立上に参画。
次のステップを踏むことを決意し、新たな挑戦の場として、イタリア・ミラノに留学中。