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.社会  投稿日:2022/11/19

広報は何故大切か その1 中小企業編


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

【まとめ】

・近年、広報にインターネットを使うのは当たり前になった。

・しかし、中小企業の中には、広報の概念がないところが多い。

・経営者にネットリテラシーが無くても、HPの充実と問い合わせへの対応はしっかりやりたい。

 

企業に取材をするようになって、30年経つ。ありとあらゆる業種を取材したが、メディアの窓口である広報という組織はこの30年どう変化しただろうか?

フジテレビ時代は規模の大きい企業を取材することが多かったが、独立してからのここ数年は中小企業やベンチャーと接することが増えてきた。そうした中、広報」のあり方について、色々と思うところがあるのでご紹介したい。

1 近年の広報のトレンド

代替わりして若い経営者が率いる中小企業やベンチャーは、自社製品やサービスの広報に、プレスリリース配信サービスであるPRTIMESなどを利用することが多い。

かつては、企業の広報担当者が紙のプレスリリースを兜倶楽部(東京証券取引所にある記者クラブ)の中にある各マスコミのボックスに投げ込むことが広報の基本動作だった。それができるのは大企業だけだったが、そんなことをしなくとも、今や、規模の大小を問わず、ウェブ上に誰でもリリースを掲載することができるようになった。

メディアはネットで検索をすることで、必要な業種の企業のリリースを簡単に目にすることができるようになったし、必要なら添付されている写真や動画をダウンロードすることもできる。これは革命的だ。

企業にしてみれば、どんな企業でも自社の広報が簡単にできるようになったし、大手マスコミの目にも止まるようになった。すべてインターネットのおかげだ。

また最近の傾向としてMAKUAKEなどのクラウドファンディングサイトを新商品・サービスの広報の場として活用するケースも増えてきた。本来は、新商品・サービス開発のための資金集めが目的のクラウドファンディングサイトであるが、最近では潜在顧客を調査する、もしくは獲得する場となっている。クラウドファンディングはSNSとの親和性が高く、商品・サービスを買った人はSNSに拡散してくれるなど、大きな広告効果も期待できる。もはやテストマーケティングの場を超え、販売促進の場となっている感がある。

しかし、こうしたネット時代には当たり前の広報も、中小企業にとっては往々にしてハードルが高い。

2 中小企業、最初の一歩

そもそも経営者が高齢で、ネットリテラシーに乏しく、にもかかわらず息子や娘の言うことには耳を貸さないというケースは少なくないと思われる。

そうした場合、何から手をつけたら良いか、いくつかアドバイスを送ろう。

1つ目はホームページ(HP)の充実だ。中小企業の場合、HPがない、もしくはあってもほとんど手を入れてないケースが多い。しかし、HPは今や、会社の看板だ。多少お金をかけてでもクオリティの高いHPを作りたい。

現代では、顧客はネットで検索し欲しいものを探すのが当たり前だ。いくらよい商品・サービスを持っていても、潜在顧客がHPにたどり着いたとしても、その会社と取引をしたい、と思えるようなHPでなかったら意味が無い。HPには手を抜かないことだ。何百万、何千万という設備を入れることを考えたら安いものだ。しかも人を雇ってどぶ板営業をするより、はるかに効果的なのだ。

2つ目は、問い合わせへの対応をきちんとすることだ。何を当たり前のことを、と思うなかれ。中小企業やベンチャーにありがちだが、会社の担当部署の電話番号やe-mailアドレスがHPに掲載されておらず、お問い合わせフォームだけしか、コンタクト方法がない場合が驚くほど多いのだ。メディア泣かせといっていい。これではせっかく取材したいと思ってもどうしようもない。広報する気がないのかと思ってしまう。

お問い合わせフォームにメディアが取材の依頼を送っても返事すらない企業が結構ある。つまりは取材のチャンスをみすみす逃しているのだ。

仮に連絡がついても、担当者段階であっさり取材が断られるケースも多い。企業の側からしてみれば、みすみす自社を社会に知ってもらうチャンスを逃しているのだ。

人手がなく、取材対応などできない、という事情もあろう。しかし、知名度がない企業にとって、取材のチャンスは絶対逃すべきではない。

「どのように報道されるか分からないから怖い」、「対応が面倒くさい」、「自社で発信していればこと足りる」などなど。取材を断る理由は様々だろうが、メディアという情報拡散装置を使わない手はない。むしろ企業側から積極的にアプローチしても良いくらいだ。メディアという第三者の目が入る事で、情報の公平性が担保され、付加価値が増すのだ。

取材されるかどうかも分からないのにメディアにアプローチするなんて時間の無駄だ、と思うかもしれない。しかし、1つのメディアに取り上げられたことがきっかけで全国区になるケースだってありうる。

だから、人手がないことを言い訳にするべきではない。取材の依頼はまずはトップに確実に届くようにし、自分で判断するべきだろう。

(つづく)

トップ写真:イメージ 出典:iStock / Getty Images Plus




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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