仏、電力不足で停電の危機
Ulala(著述家)
「フランスUlalaの視点」
【まとめ】
・フランスでは今年の冬、電力不足により停電になる可能性がある。
・原因は原子炉設備の腐食や干ばつ、今冬予想される寒さなど。
・計画停電に備え、停電の全国テストが行われる予定。
フランスの今年の冬は、電力不足により突然のブラックアウト(突然の停電)になる可能性も出て来たため、電力が許容量を超える場合は計画停電を実施することが発表された。また、TF1で3日に行われたエマニュエル・マクロン大統領のインタヴューでは、電力が不足した場合は計画停電を行う必要があるとしたうえ、それでもあくまでも仮定の話であり、パニックにはならないで欲しいと説明された。
この冬、フランスが電力不足になった理由
もともと2022年のフランスは、電力生産にとって転換期であった。というのも、2021年の12月に出力1450MW規模で比較的新しい3基の原発の冷却水のステンレス鋼配管に腐食や腐食割れが発見されたのだ。さらに2022年に入って他の2基でも見つかったため、より精密な検査のため一時停止された。その後、他の原子炉にも同様の問題がないか調査することとなり、最終的に56基のうち、29基が保守点検のために停止されたのだ。この結果、電力の生産量としては過去30年間で最低の水準にまでおちることとなった。またさらに、この夏は干ばつも重なり、フランスは電力を輸出していた立場から電力を輸入する立場にもなっているのだ。
それに付け加え、気象学者が2022年12月〜2023年2月の期間は、平年より寒い冬となる確率が60%であると試算している。そこで、電力消費量のピーク時に十分な電力量が確保できない可能性がでてきたのだ。
1978年12月19日に大規模な停電が発生した時も、寒波の影響により電力消費量が大幅に増加した。1978年の突然の停電時はイタリアとドイツから電力を輸入し4時間後には復旧したが、信号は突然消えて道は混乱し、エレベーターに閉じ込められる人が出たり、電車が突然止まるなど、国全体に大きな影響が広がり大パニックとなった。
計画停電は、そういった状態にならないように備えるためなのである。
計画停電の内容
計画停電が必要な場合は、まず3日前にその可能性が警告されることになる。そして、計画停電の実施が決まった場合は、前日の午後5時頃に決定され、午後9時半ごろに計画停電される地域が発表される。
計画停電の時間帯は、午前8時から午後1時までと午後6時から午後8時までだ。ただし、停電する場合も、主要な期間である、病院、警察署、憲兵隊、消防署、裁判所などは、電力の遮断は行われない。学校は閉校になる。
また、この計画停電に備え、12月9日の金曜日に、停電の全国テストが行われる予定だ。
実際のところは、もし、電力に問題があるときはドイツなどの欧州から電力の輸入がすぐにできるようになっているうえ、現在はベルギーからの送電線が2倍となりさらに輸入可能な供給量も増加しているため、確実に危機がくると断言されているわけではなく、あくまでも仮定の話に対する計画だ。もちろん危険な状況にならないことが一番なことはまちがいなく、そのためにも、平行しさらなる電力の節約も呼びかけられている。
<参考リンク>
電力:フランスとベルギーは、今年の冬の停電を避けるためにラインを強化する。
停電:ENEDISとRTE は12月9日金曜日に全国テストを実施
電気:回転負荷遮断、運休する電車と地下鉄、閉鎖された学校… 政府は、可能な削減を予測するよう知事に求める
#OnVousRépond:この冬の恐ろしい停電に関する質問への回答
トップ写真:冷却塔を備えた原子力発電所の風景(フランス)出典:Gert-Jan van Vliet/gettyimages
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この記事を書いた人
Ulalaライター・ブロガー
日本では大手メーカーでエンジニアとして勤務後、フランスに渡り、パリでWEB関係でプログラマー、システム管理者として勤務。現在は二人の子育ての傍ら、ブログの運営、著述家として活動中。ほとんど日本人がいない町で、フランス人社会にどっぷり入って生活している体験をふまえたフランスの生活、子育て、教育に関することを中心に書いてます。