<東南アジアで日本企業が勝ち続けるわけ>競争企業が少なく、競争力が低い市場で、勝てないハズがない[フィリピン・セブ島で活躍する日本人]
渡辺和喜(ユナイテッド・リグロース株式会社取締役)
まず初めに、日本で事業を成功出来るレベルの能力・経験を持っている方は、東南アジアで成功出来る可能性が極めて高いと、過去約3年間の経験から思っている。 この話を日本の経営者の方にすると「そんなことはないでしょ?」と言われるが、 大真面目な意見である。
私自身、前職では企業投資ファンドの運営者として数百社の経営者と対峙してきた経験上での考え方であり、あながち見当外れではないと自負するところである。
その根拠としてまず一番に上げるのが、競合企業の「数」。例えば我々が手掛けている語学学校事業を例にあげると、セブ島では語学学校が約30校程度であるが、日本だとどうだろう。正確な統計には基づいていないが、少なくとも数十倍以上とすれば、その中で勝ち抜いていかないといけないのは、当然容易な事ではない。
市場規模が違うので単純比較は出来ないが、一般的には日本ほど競合企業がひしめき合ってる状況は、セブ島はじめ東南アジア市場では見られず、また大資本を有した企業が独占一人勝ちしている状況も比較的少ない。少ない企業数でパイの奪い合い(分配に近い?)をしていると認識していいだろう。
二点目であげるのが、競合企業の「競争力」。 我々の競争相手は主に韓国企業が経営する語学学校となるが、正直申し上げて、競合としての競争力は極めて低い。
15年以上前から韓国勢がセブ島に語学学校市場を開拓してきたが、どの学校も似たり寄ったりのカリキュラムやコース、価格帯、マーケティングでしかなく、そこに独自性やイノベーションの片鱗を見ることは出来ない。 極論だが場所・教科書・教師を自前で揃えられれば、明日からでも同じビジネスをスタート出来てしまう状況がそこにはあった。近年、日系企業の進出により韓国系語学学校の倒産が相次いでいる状況を見れば、競争力に差があるのは明らかである。
日本における語学学校経営はどうだろうか。 各社それぞれ独自のカリキュラム・コース、授業形態などを打ち出し、他社と切磋琢磨しながらサービスの質を年々上げていく。とても新参者が容易なアイデアで参入出来るほど競合企業は甘くない。
こういった日本市場の厳しさが、日本企業の根本的競争力を作っているのだろう。我々は国内での激しい競争環境に身を置いてる事で、自然と世界で戦えるレベルの競争力が身に付いてると考えるべきである。
上記に上げた2点以外にも理由はあるが、まとめると「日本に比べて競業企業が少数かつ競争力が低い市場」なのである。さらに労働コスト始めあらゆるコストが安いことは言うまでも無い。ここまでの条件が揃っている中、日本市場で戦い、勝って来た経営者達が、セブ島を含めたアジアに来て、負ける理由がどこにあるのだろうか?
冒頭の考え方は実は3年前にセブ島に来た時の考え方であったが、その考え方は、東南アジアでの経営を経験した今でも変わっていない。ただし、東南アジアに進出した企業の一定数が撤退という選択をしているのも事実。
東南アジアで経営していく中で何点かは心得ていない・外してはいけない「コツ」のようなものがあり、実はそれを理解出来ずに撤退する企業が多いというのは意外に知られていない。 その理由については、次回の投稿にて詳しく記載させて頂こうと思う。
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