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.経済  投稿日:2023/3/14

「アクティブシニア」理想の住まいとは


Japan In-depth編集部(安倍宏行、秋山彩葉)

【まとめ】

・「アクティブシニア」に企業が注目している。

・新駅直結の住宅型有料老人ホーム、交通利便。健康寿命延伸サービスも。

・人生100年時代、老後をシニアもジュニアも自分事として考える時代になった。

 

■ 「アクティブシニア」の理想の住まい

少子高齢化が進行していることは誰でも知っているだろうが、下の図を見てもらいたい。65歳以上人口の割合(高齢化率)は上がり続けており、2022年にはすでに約30%に達している。3人に1人は高齢者というのもすごい。2065年には高齢化率が4割近くに迫る。

▲図 日本の人口推移 出典:厚労省

こうしたなか、趣味や仕事に積極的で、元気で健康志向が強い層、いわゆる「アクティブシニア」と呼ばれる人たちに企業が着目し始めた。

「アクティブシニア」とは、明確に定義されているわけではないが、主に65〜75歳くらいの前期高齢者を指すことが多い。バブルを経験しており、その時代に本格的なレジャーやグルメなどを知り、本物志向が強い。自分の生き方は自分で決めるという意識を持ち、好奇心が強く、なんにでも挑戦する、などの傾向を持っている。彼らは老後をどう過ごしたいと思っているのだろうか?

老後というと、まず「老人ホーム」を想像する。きょう見学してきた施設はまさにアクティブシニア層に向けて開発されたもので、首都圏では初の駅直結の住宅型有料老人ホームになる。

東急不動産株式会社と株式会社東急イーライフデザインが2023年11月末に開業予定の「グランクレール綱島」がそれで、一番の特徴はなんといっても交通の利便性だろう。

来る2023年3月18日に東急新横浜線「新綱島駅」が開通するが、この物件は地下でこの新駅につながっているのだ。新駅は、東海道新幹線が通る「新横浜」駅にわずか4分でつながり、関東エリアで有名な温泉地「熱海」にドアツードアで30分程度しかかからない。

「熱海」からさらに伊豆半島の他の温泉地に足を延ばしてもよい。「新横浜駅」から東海道新幹線で一駅先の「小田原」駅からはこれまた有名な温泉地「箱根」にすぐだ。都心に出るのも便利で渋谷までは東急東横線で24分、横浜へは10分で行くことができる。

▲図 「新綱島」駅周辺の路線図 出典:東急不動産

また、「新綱島駅周辺地区土地区画整理事業」により、車道や歩道、バス・タクシー乗り場、公共駐輪場、など街のインフラが一新されるのも住民にとって大きなメリットだろう。「綱島」駅にはデッキで直接つながり、駅前に新しくできる商業施設に接続される。また施設の隣に開発中の商業施設(2024年3月開業予定)にも接続するというから、雨にぬれずとも買い物に行くことができる。便利なことこのうえない。

▲図 「グランクレール綱島」完成予想図 出典:東急不動産

2番目の特徴は「健康寿命の延伸」に寄与するサービスの提供だ。

日本では平均寿命と健康寿命が年々伸びており、まさに人生100年時代を迎えている。アクティブシニア層の最大の関心事は、まさに健康の維持であろう。

▲表 日本の平均寿命と健康寿命の推移(左が男性、右が女性のデータ)出典:厚生労働省

「聖マリアンナ医科大学」と連携した医療サポート体制や、「順天堂大学」監修の健康維持プログラムなどを導入するとしている。

前者においては、住宅内にあって医師と対面での健康相談やオンライン診療を受けることもできるという。健康不安は高齢者にとって最大のストレスだ。医療サポート体制が充実していることはこうした施設入居への大きなインセンティブになる。

また後者では、体操教室、体力測定会などに参加を促し、生活習慣病や認知症の予防改善などに取り組むという。「ロコモ予防運動プログラム」(ロコモ=ロコモティブシンドローム:身体能力が低下した状態)などに基づき「筋活」をうながす仕組みだ。これはとても重要だ。足腰が弱ると人間は一気に衰え、要介護への道まっしぐらとなる。健康維持がなにより重要であり、それをサポートする体制が整っていることは施設の価値を大いに高めるだろう。

■ 入居資格・費用

高齢者の仲間入りをしていないくとも、こうした施設に興味がある人は少なからずいるだろう。気になるのは入居にはどのくらいお金がかかるかだ。

入居時に終身にわたる家賃相当額を一括で払い、月額費用を軽減する「前払い方式」と、家賃を毎月払い、入居時の費用を軽減する「月払い方式」がある。

「月払い方式」だと、部屋の広さにもよるが、一番ベーシックな1Rの部屋で、敷金(月払い家賃x3カ月分)が入居時にかかり、月額費用としては、月払い家賃約25万円、管理費約7万円、サービス費約12万円がかかるとのことだ。

もう一つ気になるのは、介護保険制度の要支援・要介護の人は入居できないのか、という問題だ。こちらも質問してみると、要支援、要介護の程度により、「自立した暮らし」ができるかどうかが入居の基準になるという。

また、仮に入居時に健康でも、年月が経つにつれ要介護状態になる可能性はある。その場合どうなるかというと、要介護者用の別の施設に移り住むことになるとのことだった。

▲写真 「グランクレール綱島」建築現場 ⒸJapan In-depth編集部

 今後の課題と展望

超高齢化社会である日本において、駅近で交通アクセスの良い場所に住みたいという高齢者のニーズは高いものがある。しかし、駅近の高齢者向け施設の展開はほぼないのが現状だ。それは、駅周辺はすでに商業施設や他の建築物が建っており、高齢者施設を建築することは難しいからである。デベロッパーにとって、今後はいかに用地を確保するかが課題となる。

一方、施設のユーザーであるシニア層だが、経済的に考えても、誰もがこうした施設に入る事ができるわけではないのは明白だ。

自分自身で健康寿命を延ばし、要介護になる時期を少しでも遅らせる努力をすることが重要だろう。体力もさることながら、認知症リスクを減らす生活を送ることも重要だ。

▲写真 「グランクレール綱島」建築現場(写真右の低層の建物)高層の建物は、マンション「ドレッセタワー新綱島」ⒸJapan In-depth編集部

こうした話は、働き盛りのビジネスパーソン、もしくは若年層には無縁に聞こえるかもしれない。しかし、「老い」は誰にでも等しく訪れる。少子化により将来、高齢者の社会保障費を支えるために税負担が大きくなるのが今の働き盛り世代以下の層である。若い世代も早い段階から老後を意識した資産形成や健康維持が求められよう。

シニアの問題はすぐれてジュニアの問題でもある。それを実感した一日だった。

トップ写真:「グランクレール綱島」模型 ⒸJapan In-depth編集部




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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