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.経済  投稿日:2024/5/29

京急と東急、自動運転バスの「共同実証」でタッグ 


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

Japan In-depth編集部(仲野谷咲希)

【まとめ】

・京浜急行バス、東急バスおよび東急の3社が5月28日から6月3日までバス自動運転の実証実験を行う。

・2社協働の実験は国内初、背景に運転手不足と住民ニーズの多様化。

・今回の知見を生かし、いずれレベル4の実験を目指してほしい。

 

いよいよ尻に火がついたということだろうか。

遅々として進まない日本の自動運転だが、運転手不足が深刻なバス業界がまず動いた。

京浜急行バス株式会社、東急バス株式会社および東急株式会社の3社が5月28日から6月3日まで、バス自動運転の実証実験を行う。

2つのバス会社が共同で実証実験を始めるのは業界初だというので、多くのメディアが取材に集まった。カメラの放列に当のバス会社トップもビックリだ。

京急バス野村正人社長

「こんなに注目されるとは思わなかったので、緊張して、カメラの前で笑うこともできなかったです(笑)」。(報道陣に笑顔で、と声をかけられて)

東急バス古川卓社長

「うちは今回で自動運転の実証は3回目なんですが、前の2回の時は全然注目されなかったんですけどね。(苦笑)今回は(京急さんとやるということで)問い合わせがすごいですよ」。

とにかく注目度はすごいのだ。

▲写真 がっちり握手する東急バス古川卓社長(右)と京急バス野村正人社長(左)ⒸJapan In-depth編集部

■ 自動運転バスにするメリット

今回の実証委実験の背景に、業界の深刻な運転手不足があるのはまちがいない。それに加えて、公共交通機関特有の問題がある。ユーザー側のニーズだ。高齢化が進んだ郊外の新興住宅地や地方都市などは、住民の足の確保が重要課題となっている。免許を返納した高齢者は日常の足の確保が死活問題だ。

▲写真 今回実験に使われている磁土運転バス(6人乗り)ⒸJapan In-depth編集部

自動運転コミュニティバスは、そうした住民のニーズに応えるために必須のものとなっていくだろう。

理由は以下の通りだ:

バス会社にとっては

レベル2(特定条件下の自動運転:運転手有→運転手の負担が減る。

・レベル4(完全自動運転:運転手無)→コストを削減できる。

安全性向上、事故の低減。

ユーザーにとっては

・ちょっとした移動の足が確保できる。

バス会社にも住民にもメリットがあるのだ。

いいことづくめだ。

 テクノロジーの進化と安全性

「自動運転は怖い」などという意見をよく聞くが、中国やアメリカではもうレベル4の完全自動運転タクシー(ロボタクシーともいう)が何年も前から走っている。ちゃんと国や自治体がその商業化を認めているのだ。まずは実用化し、問題があれば修正していくのが海外流だ。

テクノロジーは日進月歩で、自動運転車にはカメラからミリ波レーダーから、LiDAR(ライダー:電子の眼)を装備している。とくにLiDARは分解能、視野、処理速度、どれを取っても人間の眼より優れている。何か異常な状態が車の周囲で発生した時、瞬時にブレーキをかける、障害物を回避する、といった挙動を車に指示するスピードは人間のそれとは比べものにならないくらい早い。

自動運転になれば、そもそも運転手がいないから、運転手が突然死して事故を起こすことはない。運転手がブレーキとアクセルを踏み間違えることもない。飲酒運転もなければ、クスリで意識が混濁することもない。人間の運転の方が安全だ、などという意見は単なる思い込みでしかない。

▲写真 今回の実証実験バスフロント部に装着されたカメラやセンサーⒸJapan In-depth編集部

■ レベル4を目指せ!

最近では町にあるインフラ(ビルや電柱など)にセンサーを取り付け、車を自動操縦するシステムを韓国企業らが開発した。車1台1台に高性能センサーをいくつも取り付けるより安上がりだとして注目されている。以下の動画を見てほしい。世界はもうここまで来ている。

翻って日本。中国や欧米流と違って、この国は石橋を叩いて渡らない文化。したがって中国やアメリカにあらゆる産業で後れをとり、競争力が落ちる一方だ。いわんや自動運転においてをや、だ。

今回の実証実験はレベル2。当然運転手は同乗している。遠隔監視は本来レベル2では求められないが今回の実験では東急本社ロビーに遠隔コントロールセンターを設けて万全を期した。

問題はレベル4だ。いつ移行するのか。筆者は、レベル4の実証はいつやるのか聞いたが、「まだ未定」とのことだった。

だがレベル4の商用サービスはすでに始まっている。小規模ながら福井県永平寺町が2023年5月21日に開始した。

ただ、京急、東急2社の心意気やよし、だ。両者は、レベル2における実証で得られた知見をいかし、早くレベル4の実証にトライしてほしい。それが起爆剤となって全国のバス事業者が自動運転に向け動き出すことを期待したい。

▲写真 自動運転バスに試乗する地域の住民らⒸJapan In-depth編集部

【今回の実証実験の概要】

 ① 京急バスは能見台エリア(横浜市)、東急バスは虹ヶ丘・すすき野エリア(川崎市・横浜市)にて、 自動運転バスを運行

 ② 遠隔監視設備(以下、「遠隔コントロールセンター」)を京急グループ本社ビルに設置し、1人の遠隔監視者が異なるエリアで運行する2社2台の自動運転バスを運行管理 【本実験における検証項目】

 ① 両運行エリアにおける共通または個別の課題の検証

詳細はこちら https://www.keikyu.co.jp/assets/pdf/20240515HP_24007TE.pdf

トップ写真:自動運転中のコミュニティバス。自動運転中、運転手はハンドルを握っていない(2024年5月28日神奈川県横浜市)ⒸJapan In-depth編集部




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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