[東芽以子]<2014FIFAワールドカップ>8大会連続「不参加」でも盛り上がる!南米ペルー流、W杯の楽しみ方
今月28日(ペルー時間)に行われた、W杯決勝トーナメントのブラジル対チリ戦。この南米対決は、ここペルーで、これまでのところ最も熱気の高まった一戦となった。
ブラジルサポーターの集まるリマ市内のバーでは、延長戦の末、PKにまでもつれ込んだ接戦に、声援、というより、うなり声に近い雄叫びが、終始轟いた(写真右)。
しかし残念ながら、ペルーは、今大会の参加国ではない。
代表チームは、FIFAランキング45位と、日本のワンランク上に評価されているが、強豪国がひしめき熾烈を極める南米地区予選では歯が立たず、8大会連続でW杯出場から遠ざかっている。
それでも、ブラジル、アルゼンチン、コロンビアなど、隣国の試合になると、ペルー人は、在ペルー外国人と共に他国のチームのユニフォームを着込んで、まるで自国を応援するような盛り上がりをみせる。
「中南米の出場国を全部応援できるから幸せだ」
「ペルーが出場していないからこそ、国にこだわらず純粋にサッカーを楽しめる」
ただ単にお祭り騒ぎと割り切って、W杯を楽しむ人もいる一方、小遣い稼ぎに勤しむ人も…。ブラジル・チリ戦、キックオフの2時間前。W杯くじのスタンドに男性たちが群がっていた。スポーツトレーナーの男性は、手堅く4ソル(※144円:2014年6月29日現在)をブラジル勝利に賭けた。
「毎回、わずかでもお金がかかると緊張感が出る。小額を多くの試合に賭けて、当たったらそれを元手に、次の賭け金を増やすつもり」
また、100ソル(※3623円)を、同じくブラジルに賭けた会社員の男性は、くじの購入理由をこう話す。
「友達同士で盛り上がるため。ただ他国のサッカーをみても盛り上がらない」
自国が出場国でない中、賭け事で自らW杯にコミットし、サッカーを楽しむモチベーションにしているようだ。しかし、購入者は、皆、常連と言う訳ではない。
くじの販売員によれば、好カードの試合直前、スタンドに行列ができると、サッカーをよく知らない女性や、付き添いの家族や友人達も、ついつられて、財布の紐が緩むケースがよくあるという。賭け事であろうと、面白そうなことには便乗する、これがペルー流のようだ。
「ギャンブルが先行するのは思わしくないが、サッカーを観戦するきっかけになるなら、喜ばしくもある」
こう話すのは、国内プロリーグ、Primera Divisionを運営する、Asociacion Deportiva de Futbol Profesional(以下ADFP)広報の、カルロス・エンシソ・ペレスパルマ氏(写真右)。
60年以上の歴史を誇る国内リーグだが、有望な選手は他国に帰化してしまうことが多く、スタープレーヤーを欠いた戦いは、しばしば、“子供のサッカー”と揶揄される。
国民やメディアからの注目度も低く、一試合の平均観客動員数は約3900人と、Jリーグの4分の1に留まる。
W杯のギャンブル人気に目を付けたADFPは、現在、国内リーグの公式くじに、W杯の試合結果を予想する欄も加え、リーグ観戦を促すという苦肉の策を採っている。
「W杯は自国を応援するのが本来の楽しみ。そのためにも、まず国内サッカーを盛り上げ、選手が育つ環境を作りたい」(カルロス氏)
他国の試合でも十分に活気づくペルーが、W杯復帰を果たせば、国内の興奮は如何なるや。ペルーサッカー界の今後の振興が期待される。
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【執筆者紹介・東芽以子】
2003年~2009年、仙台・名古屋でテレビ局報道記者として活動。2014年2月より、ペルー・リマ在住。一児の母。南米ペルーに関して、マチュピチュ、ナスカ、セルベッサ ポルファボールなどの世界的観光地とフレーズ以外、何の知識も持ち合わせていなかった私が、「えっ!そうなの!」が口癖になるほど驚きがあちこちに溢れ、自分の常識を改めて問う日々。そんな地球の「裏側」の姿を、アラフォー女であり、妻であり、母であり、元報道記者である私の目を通して紹介する。