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.社会  投稿日:2023/4/19

資本主義ゲームを楽しもう「新入社員に贈る言葉」その11


西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

【まとめ】

資本主義とは、公平なルールで成り立っている「まともなゲーム」。

・資本主義社会はSDGs、人的資本経営、社会課題解決など「社会にとってよい」方向に向かっている。

・新入社員には、誰かのために頑張りつつ、自分の能力を発揮し楽しくやってほしい。

 

資本主義、万歳!若い人たち、ゲームを楽しもうぜ!

一言でいえばそんな感じです。

読者のみなさんは、おいおいおっさん、まじすか?って思ったことでしょう。格差社会だし、努力は報われないし、そもそもガチャで人生は大体決まっちゃっているし、空気を読むのに疲れるし、言いたいことは言えないし、自由がないし、昭和のおっさん・おじいさんたちが権力を握っていて、問題を先送りにする、こんな権威主義社会はくそだと思っている人も多いはず。しょうもない世界だろうと薄々わかっているかもしれません。中には、フィリピンで活動していた「ルフィ」一味に共感してしまう人だっているでしょう。

20年以上前、就職を控えた私は皆さんと同じ思いをしていました。資本主義経済を非難し、特に、企業や会社なんて、利益をむさぼる悪者とみてました(笑)金をえげつなく稼ぐ悪い輩くらいに蔑んでましたから・・・。企業は政治に影響を及ぼして利益をむさぼる悪い組織、その利権構造を大学院で研究しようとまでしたくらい。そんな私がなぜ資本主義万歳!と思ったのでしょうか。

会社を半ば首になったり、裏切られたり、騙されたり、生活保護すれすれになったり、電車に飛び込もうかと思ったり、金が尽きてやばい・・・と色々ありましたが、その紆余曲折の20年のビジネス生活でそう考えるようになった理由をお話ししましょう。

■ 働くことの意味?

働くということは何なのかというと、お金を稼いで生活すること、メインは食糧を得るためです。そのためには、この資本主義経済では働くしかないのです(田畑や資産を持っている人は別ですが)。メタバースに逃げてやると思っても、何かしら食料を得る手段を得なければなりません。食べないと死んじゃうから。だから資本主義経済のもと、何かしら稼ぐこと、働くことは必須です。稼ぐ手段を既に持っていたり、そもそも資産が豊富な人はいいですが、ほとんどの人は労働をして、お金を稼ぎます。資本主義経済のもと、働くってことは厳しい面も多いものですが、私にとって当初とはイメージが違ったことが結構ありました。

・お客や相手のために知恵を絞ったり頑張ったりすると認められる

・期限を守らなかったり、約束を守らないと信頼を失ったり、仕事を回してもらえない

・他人が言う意見やメディアでの言説は相手のポジションや価値観を分析してケースバイケースで冷静に聞かないと勘違いする

・競争のない業界や組織にいると自分もあまり成長しない(転職市場で給与があがらない)

・相手のためにやると気持ちいい、自己肯定感があがる

・相手のために頑張って、期待を上回り続ければ、いい話が舞い込む(新たな仕事がもらえるチャンスが増える)

・仲間と助け合えばハッピーになるし、困った時に助けてくれる可能性がある

・ハラスメントをした奴とか、相手をだましたり、ずるいことをした奴とか、約束を守らないとか悪いことをした奴は淘汰される、因果応報を食らうことが多い

これらは20年、資本主義経済のルールで活動してきた僕が感じたことです。資本主義って公平なルールで成り立っている「まともなゲーム」というのが率直な感想です。市場の中での競争は大変だし、面倒も多いですが、中には「楽しい」と思える瞬間もたくさんあります。

資本主義経済や社会はどうしようもないとかって思ってましたが、実際、その中にて過ごしてみたら結構まともな「世界」です。最近は、SDGs、人的資本経営、社会課題解決といった「社会にとってよい」方向に徐々に向かっていますからより未来は「明るい」ものだと思っています。

とはいえ、資本主義社会の一番偉い人は投資家さんなわけで、そこは理解しておいた方がいいです。自分の儲けばかりで地球環境とかどうでもいい、自分だけ良ければよいと言った性格の悪い奴らは一定数いますから。

お金を稼ぐことの本質的な意味は、相手のためにどれだけやれるか、です。少しは効率よく、相手を動かしたり、損しないように冷徹になる部分もありますが、基本相手のためにやった分、報われることが多いものです。

ただし、「相手のために」の「相手」がポイントです。相手がお金をもってないといけないですし、相手が自分に対価をきちんと支払ってくれる、という条件がつきます。そのため、ただ単に「相手のため」に頑張るのではなく、「まともな」相手とビジネスをしないといけません。まともな相手と出会うために、自分自身が学んで、成長して、苦労して、我慢して、仕事を引き受けて、約束を守って、相手との関係性を構築して、いかなければいけません。あと世の中、何事もメリットとデメリットがあるのでその点も意識した方がよいかと思います。

■ 楽しい瞬間を探してほしい!

未来、みなさんのライバルはロボットやAIになることでしょう。やりたくもない仕事に人生の時間を奪われる可能性も昭和のおじさん世代よりは減るかもしれません。やりたくない仕事でお金を稼がざるを得ないなんてことは幸福でもなんでもないですからね。自分は「何をしている時に楽しいのか」「どういった業務を得意とするのか」をじっくり探っていれば、そんなことにならないと思います。

資本主義社会のゲーム。誰かのために頑張りつつ、同時に自分の能力を発揮し、楽しくやってほしいと思います。自分のできる範囲のなかで挑戦して、失敗から学んで、自身のスピードで紆余曲折しながらも成長して、楽しい時間を過ごして欲しいと思います。

酒場で愚痴っている昭和のおじさん・おばさんの常套句「あの時、挑戦すればよかった」という言葉を皆さんも繰り返さないようにしてもらいたいものです。期待しています。

トップ写真:部下の進捗状況をチェックする上司 出典:kazuma seki / Getty Images Plus




この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家


NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。


専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。

西村健

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