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.経済  投稿日:2024/1/19

企業・団体献金廃止こそ「新しい資本主義」につながる【日本経済をターンアラウンドする!】その19


西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

【まとめ】

・企業・団体献金をなくすことは、経済再生につながる。

・政治資金適正化委員会で議論を進め、答申を貰い議会に提案するべき。

・企業・団体献金の廃止こそ、新しい資本主義だ。

 

安倍派の政治家たちの政治資金規正法違反が大きな問題になっている。パーティー券のキックバック分の不記載。検察も色々なことに対して我慢していたのだろう。安倍政権時の黒川弘務検事長定年延長問題以来の特捜部の正義の逆襲がついに始まったというところだろうか。

しかし、最新情報によると安倍派の幹部7名は不起訴のようだ。検察の今後に期待したい。こうした国民の怒りは沸点に達している今こそ、企業・団体献金をなくすべきだと考える。それは経済再生につながるからだ。理由は3つ。

理由1:一部の利益団体の影響力が削ぐことにつながる。

政治献金をした企業・団体の政治的影響力が過剰に反映されてしまう。政治家はその企業・団体のために行動する。特に、業界にマイナスの影響を及ぼす政策には反対するし、メリットを及ぼす政策には賛成する。結果、何も関係のない一般国民は阻害されてしまう。

補助金などは広く一般国民が負担を負い、一部業界・企業にメリットがあることになる。大体何にせよこういったことになりがちであるが、一部利害が反映されすぎているというが日本の「政治」の基本である。

理由2:産業構造改革が進む。

企業・団体献金は、旧態依然とした業界への支援となり、産業構造改革が進まないことになる。まさに、日本経済のこの30年の停滞の原因だった。伸びない賃金、1人当たりGDP、産業競争力など指標の数値を見れば明らかだ。

この理由には色々な要因があり、それを解きほぐすのは難しいが、既得権益の企業の影響力が政治をゆがめたことは事実である。多くの補助金・助成金の中には、効果的なイノベーションを生み出すことに貢献しているものもあるが、単なる補助のようなものが多い。最高の業績を誇る業界にエコカー減税はまだ継続しているし、租税特別措置は公開されない。

「企業の政治寄付は、社会貢献の一環」という方もいるが、自分たちにメリットをもたらすための手段であると思う。既得権益が経済政策を歪ませかねないからだ。政治献金は一部業界にはメリットを及ぼしただろうが、それが労働者のもとに落ちてこない。経営者団体の声を聴きすぎた結果が、大手企業の巨額な内部留保だ。大企業は新規事業を進めるより、コストカットをすることで業績をなんとか出すことに注力してきた。結果、労働者のもとにしわ寄せがいってしまった。

理由3:多くの地元企業の負担を減らすことになる。

公共事業関連以外の多くの企業は、何も政治家に影響を及ぼそうとしてパーティー券を買ったり、政治家に献金しているわけではない。一部、経営者が政治家との関係をアピールしたいという虚栄心のケースもあるが、多くは「お付き合い」「なんかあった時の保険のようなもの」と言うことも多い。業界団体を通じての場合も、個人献金もそれなりに多くの額を支払っている。この負担が減る。その額、24億円。パーティー券も同様だ。

・企業・団体献金の廃止こそ、新しい資本主義

企業・団体献金の廃止を前提に、国民負担による「政党交付金」が導入されたのだ。当時の責任者はどうこたえる。これこそまさに、「約束違反」である。「政治責任」を果たして欲しいと切に願う。

個人的には個人献金もダメと思っているが、「政治献金を封じ込めることは、国民の政治参加を制限することに もつながる」との見方もある。企業の言うことを聞いて、スポンサー(一部の人たち)のための政治ではない、公平な仕組みを入れることが、資本主義を機能させる。

ルールが変われば、ロビーイングも防がれるし、業界からの影響力も是正される。なんの難しいことではない。政党助成金を作った趣旨に戻るだけだ。政治資金適正化委員会を機能させ、議論を進めて、答申を貰い、議会に提案する。地道にきっちりやることこそが岸田政治のアイデンティティでもある。それしか支持率が回復する方策はない。ピンチはチャンス、新しい資本主義とセットに地道に改革を進めてもらいたい。岸田政権に期待したい。

トップ写真:経済3団体賀詞交換会(2024年1月5日 東京都・千代田区)ⒸJapan In-depth編集部




この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家


NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。


専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。

西村健

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