[相川梨絵]<日本の約14億の無償援助で総合病院>作るだけでない援助あり方 課題は引き渡した後のメンテナンス
相川梨絵(フリーアナウンサー/バヌアツ共和国親善大使)
バヌアツで唯一の専門的治療が受けられる総合病院「ビラ中央病院」。その病院が、日本の約14億の無償援助によって生まれ変わりました。
以前の病院は、独立前の1974年にイギリスによって建てられ、それ以降大規模な改修工事は行われていませんでした。一階建ての平屋。お世辞にもキレイとは言えません。バヌアツへ来た当初、ここが病院か・・・とかなり心配になりました。
それが、今では、日本と変わらないくらい綺麗で近代的な病棟が新たに増設されたのです。既存の、内科、外科、産婦人科などに加えて、2階建ての新たな病棟に外来・救急、手術室、レントゲン室、検査室などが設置されます。
建築を請け負ったのが日本の企業。日本と同等の建築基準で作られています。例えば、レントゲン室の壁を厚さを20cmにし、窓やドアには鉛が入っています。地震対策もばっちりでした。また、今後、地元の人たちだけで管理できるように配慮。排水装置や雨水利用、太陽光利用はもちろん、電気代がかかりメンテナンスも必要なエレベーターではなく、ストレッチャーも通れるスロープを作ったり、なるべく風通しの良い設計にしたり。建設中はバヌアツ人も積極的に雇用していました。
きれいに仕上げる、土日に働くという感覚のないバヌアツ人を指導して働いてもらうのは大変だったそうです。完成後、バヌアツ政府に引き渡す前に、新病院を見学させてもらいました。建物はもちろんですが、医療器具もすべて日本からの供与。そこら中に日の丸が付いていました。レントゲン室、手術室、ここがバヌアツかと思うくらい、設備が整っている。バヌアツらしいマラリア特別室なんていうのもありました。ここなら、安心して受診できると素直に思いました。
発展途上国にいて、一番の心配が病院だったので、こうした医療現場の改善はとても心強いです。現場で働く人達の希望で、これらの機器は最新型の複雑なものではなく、既存の機器に近いものをいれているそうです。使い慣れたものであれば、さらに安心です。責任者の方も、最新型ではないけれど、こんなにコンパクトにうまくまとまっている病院はないと太鼓判を押していました。
今後の課題は、やはりメンテナンスです。向こう一年は日本が保障するのですが、その後はバヌアツ政府が自身でがんばっていかなくてはならない。トイレ一つにしても、トイレットペーパー以外は流さないで下さいと張り紙をしないと何でも流してしまうというバヌアツ人の感覚。
たった一年で意識改革をさせるのは、大変だと思いますが、せっかくいいものができたので、末永く大事に使って欲しいです。そして、日本側も今後も、ボランティアなど違った形でうまく支援し続ける必要があるなと感じました。
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