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.国際  投稿日:2023/7/5

米で原子力発電に対する支持率高まる


中村悦二(フリージャーナリスト)

【まとめ】

・米で原子力発電の支持率が高まる。

・「原子力発電所増設に賛成」も増加。

・開発が期待される核融合技術の動向を反映か。

 

米国の複数の世論調査で、原子力発電に対する支持率が高まり、注目されている。

米Bisconti Research Inc.が実施した今春の調査では、米国民の76%が電力供給法の一つとして原子力エネルギー使用することを強く支持ないしやや支持と答え、70%近くが原子力発電所の新規建設を支持した。この支持率の高さは3年連続だ。

また、世論調査会社であるギャラップ社が行った調査では、原子力発電に対する支持率が2012年以降で最も高い55%となった。

 

■原子力を強く支持する割合は29%、強く反対する割合は5%

日本原子力産業協会によるとBisconti Research Inc.は米原子力エネルギー協会のA.Bisconti元副理事長が1996年に設立したもので、1983年以降40年間にわたり年に少なくとも一回、市場調査の専門機関と一緒に米国民の原子力に対する意識調査を実施。その回数は87回に及ぶという。

今春の調査(図1参照)は全国の成人1,000人を対象に4月28日から5月5日に実施。

同社は今回調査の主要な結果について以下の6点を挙げている(日本原子力産業協会の翻訳資料による)。

・原子力支持率が3年連続で高いレベルを維持

・原子力を強く支持する割合は29%で、強く反対する人の割合5%の6倍近い

・「原子力関係の情報が十分得られている」と回答したのは全体の14%に過ぎなかったが、「原子力について多くのことを知っている」と感じている人の中で支持率が高い

・「米国民の大多数が支持している」と考える人の割合が56%だったのに対し、実際の支持は76%であり、20ポイントの開きがある

・原子力規制委員会(NRC)が各原子力発電所を日々監督していることを知る人の中で、原子力発電所の安全性を信じる人の数が大幅に増えた

・原子力が話題になるのは、信頼性、クリーンな空気、エネルギー・セキュリティ、そしてエネルギーの独立性に関連している

■「原子力発電所増設に賛成」が増加

Bisconti Research Inc.の調査において、米国人の86%が、原子力エネルギーは今後数年間で電力需要を満たす上で重要になると答え、86%が連邦の安全基準を満たしている原子力発電所の運転認可を更新することに賛成している。これは、米国で新規の原子エネルギーとして開発が期待されている核融合技術の動向を反映していそう。

また、87%は先進的な設計の原子力発電所が電力を供給できるよう準備すべきとし、71%が原子力発電所増設に賛成、としている(図2、図3参照=日本原子力産業協会の資料による)。

■属性による賛否情況

原子力発電所に賛成、新規建設に賛成の男女別、学歴別、世代別、支持政党別などの状況は図4の通り(米Bisconti Research Inc.oyobiおよび日本原子力産業協会の資料による)。

 

■ギャラップ調査での原子力発電支持率、2012年以降で最高の55%

世論調査会社であるギャラップの調査における原子力発電に対する支持率は2012年以降で最も高い55%を示した。反対は44%だった(図5参照)。この調査は今年3月1日―23日に全米の成人1,009人を対象に固定・携帯電話を通じて実施。「支持する」と答えた55%のうち、「強く支持」が25%、「やや支持」が30%で、「強く反対」と「やや反対」はそれぞれ22%だった。党派内の原子力発電に対する支持者の割合では、共和党が62%、民主党が46%だった。無党派層内の支持率は56%だった。男女別と大卒か否か別では、男性の67%が賛成で女性の賛成割合は42%、大卒の63%が賛成で大卒でない層の賛成割合は51%だった。

トップ写真:原子力発電所(イメージ)

出典:Iurii Garmash/Getty Images

 




この記事を書いた人
中村悦二フリージャーナリスト

1971年3月東京外国語大学ヒンディー語科卒。同年4月日刊工業新聞社入社。編集局国際部、政経部などを経て、ロサンゼルス支局長、シンガポール支局長。経済企画庁(現内閣府)、外務省を担当。国連・世界食糧計画(WFP)日本事務所広報アドバイザー、月刊誌「原子力eye」編集長、同「工業材料」編集長などを歴任。共著に『マイクロソフトの真実』、『マルチメディアが教育を変える-米国情報産業の狙うもの』(いずれも日刊工業新聞社刊)


 

中村悦二

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