日本「人材」のやばさをどうする!【日本経済をターンアラウンドする!】その16
西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)
【まとめ】
・IMD世界人材ランキングで日本は過去最低の43位。
・特に、経営教育、有能な上級管理職の分野でランキングが低い。
・上位のスイスやルクセンブルク、シンガポールなどから学べ。
世界で43位。
スイスローザンヌに拠点を置くビジネススクール、IMD(国際経営開発研究所)が9月に発表した「世界人材ランキング」の結果は、まさに日本の人材の現状をしめしています。
前年より2つ順位が下がって43位となってしまった日本。2005年の調査開始以来最低の数値です。客観的なデータなのでこれを真正面に受け止めるべきでしょう。
どうしてこうなっちゃったんでしょうか?
・過去の高度成長期の成功と教育モデルを過度に賞賛して改善を怠った?
・学習よりも教育、個人よりも集団、自由主義よりも権威主義的な文化が重視された?
・時代が求めるビジネス環境の転換を見極められなかった?
・教育の伝統やイデオロギー的な議論や価値観闘争が続いた?
・そもそも教育投資や研修投資が不足していた?
理由は様々であり、複合的である。しかし、モノづくりをして世界を席巻したビジネスのままイノベーションが起きず、新商品や新サービスを開発・世界のビジネスで「敗北」したことは確かでしょう。
■特徴は?
さてIMDの調査を見てみましょう。
Talent landscapeは、Investment & Development、Appeal、Readinessなど3つの分類から構成されます。そのうち、Readiness(学習準備状態)では
▲図【出典】IMD
もちろん、海外経験、言語スキルなども低いのですが、特筆するのは以下の2つ。
・Management education (経営教育) :60位
・Competent senior managers (有能な上級管理職) :62位
の低さは特徴的です。
マネジメント層の育成に失敗したと言っていいのかもしれません。特に、マネジメント層は学ばない割合がとても低いのは日本企業の課題です。筆者連載第二回でも述べましたが、勤務先以外での学習や自己啓発を行っていない割合は46%と世界でも屈指の高さ。つまり、学んでいないのです。実感としても名門大学や名門企業に行った友人が、業務や出世競争やらで頭が精一杯になっていることを考えると、そんな気もします。大人になってまで学ぶ必要を感じていないからでしょう。そして、学ぶ楽しさを経験出来てこなかったということもあります。日本の教育は「学ぶべきこと」重視で、「学びたいこと」、つまり、学びの楽しさを提供するという点で弱かったのも事実でしょう。日本の受験システムは意欲をそぐ面もあります。個人的には大学に行って、いきなりディスカッション中心のアメリカ式の教育には衝撃をうけたこともありました。そして、会社も学ぶことを奨励していたとは思えず、外資系のように「学び成長しないと生きていけない」という会社は少ないのです。
■ 世界から学ぶしかない
▲写真【出典】IMD
2022年3月ベネッセコーポレーション実施「社会人の学びに関する意識調査2022」によると、学習経験の有無と学習意欲の有無で4つのマトリクスにした結果、「なんで学ぶの」層(学習経験・意欲とも無)が41.3%という数字を示しました。これが実態です。これはかなり深刻だと考えてもよいでしょう。
①学びは楽しいのだと感じる経験がない
②大学などでも主体的な学びをしてこなかった
③キャリアにおいて学ぶ必要性を納得できていない
④仕事がハードすぎて学ぶ意欲すら持てない
こういった仮説が考えられます。この問題に経産省や企業や関係団体は着目していくべきでしょう。ではどのように改善していくかですが、IMDの上位層を見てみると1位はスイス、2位はルクセンブルクなど欧州、アジアではシンガポールなどです。そこから学ぶしかないのではないでしょうか。
トップ写真:出勤する会社員(イメージ:本分とは関係ありません)出典:paprikaworks/GettyImages
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この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者
経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家
NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。
専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。