インド、対中戦力格差縮小に向け武器の緊急調達推進
中村悦二(フリージャーナリスト)
【まとめ】
・印、ラダック地方で中国との戦力格差縮小に向け武器の緊急調達を進めている。
・2022年9月からの1年間の陸軍の調達費用だけで約1,969億円にのぼる。
・今回の第4次調達では自国の国防産業育成を図る方針。
インドが、中国との国境紛争が続くラダック地方での中国との戦力格差縮小に向け武器の緊急調達を進めている。
今回の緊急調達は、2016年のウリテロ攻撃、2019年のバラコート空爆、2020年の東ラダック地方での中国との対峙での緊急調達に次ぐ第4次緊急調達で、その中には遠隔操作兵器システム、防空ミサイル、対戦車ミサイル、精密誘導弾、衛星など監視機器、通信機器、レーダー、全地形・高機動偵察車両、AI(人工知能)利用のドローンなどが含まれる。
タイムズ・オブ・インディア紙(2023年10月9日電子版)によると、調達費用はファストトラック手順を踏み、2022年9月からの1年間の陸軍の調達費用だけで約1,100億ルピー(1,969億円)にのぼり、買収案件は70件以上になった。同期間の空軍関係では800億ルピー・65案件、海軍関係では450億ルピー・35案件となった。当初の買収先は、ロシア、イスラエル、フランスなどからと見られるが、第4次調達では自国の国防産業育成を図る方針だ。そのため、国防技術の研究開発の強化も図られつつある。
11月初旬には、ロシアとウクライナの戦闘に鑑み、大規模な訓練“Trishakti Prahar”をラジャスタン州で3万人規模の部隊で行うことになっている。1月にベンガル州で行った“Trishakti Prahar”の模様はYou Tubeで公開されている。
東ラダック地方での、中国との国境紛争は4年目に入り、インドは中国との戦力格差是正に動いている。中国との国境は3,488キロメートル。その長い国境線に4万人程度から7万人程度から成る14の防衛隊を配している(タイムズ・オブ・インディア紙(2023年10月5日電子版)。
陸軍と空軍は、東ラダック地方やヒマラヤの氷河地域の防衛で、国産の軽戦闘ヘリコプター“Prachand” の採用に動いている。このヘリコプターは、口径20ミリメートルの砲塔砲、同70ミリメートルのロケット・システム、空対空ミサイルを装備している。Prachandは標高5,000メートルの高さまで離着陸でき、国産化率は実質45%とされる。
トップ写真:カシミールのシュリーナガル・レー高速道路が再開。除雪されたスリナガル・レー高速道路で警備に立つインド軍兵士ら。108キロメートルのゾジラで、73日間の閉鎖を経て今年峠が開通した。(インド・カシミール州ゾジラ 2022年3月19日)
出典:Photo by Yawar Nazir/Getty Images
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この記事を書いた人
中村悦二フリージャーナリスト
1971年3月東京外国語大学ヒンディー語科卒。同年4月日刊工業新聞社入社。編集局国際部、政経部などを経て、ロサンゼルス支局長、シンガポール支局長。経済企画庁(現内閣府)、外務省を担当。国連・世界食糧計画(WFP)日本事務所広報アドバイザー、月刊誌「原子力eye」編集長、同「工業材料」編集長などを歴任。共著に『マイクロソフトの真実』、『マルチメディアが教育を変える-米国情報産業の狙うもの』(いずれも日刊工業新聞社刊)