政治不信は頂点に達する【2024年を占う!】内政
安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
【まとめ】
・2023年は、政治スキャンダルのオンパレード。
・安倍派裏金疑惑の操作続くも、岸田政権は続く。
・派閥解消、政治とカネの問題をどうするか、岸田首相の胆力が試されている。
ジョン・アクトンの「権力は腐敗する」の格言通り、2023年は政治スキャンダルのオンパレードだった。
秋の政務三役辞任ドミノに続き、自民党安倍派の裏金疑惑が噴出、現在進行形で検察が動いている。
安倍晋三氏が生きていたらこうなっていただろうか?そう思った人は多いだろう。しかし、そんな「たられば」、今となっては何の意味も持たない。
深刻なのは、政治への信頼が地に墜ちたことだ。
国会議員は英語では“lawmaker”と呼ばれる。当たり前だが、「法律を作る人」だ。そのlawmakerが法律を破ってどうする。国民の怒りはその一点に集中している。
2024年、東京地検特捜部は正月休み返上で裏金疑惑のある議員の事情聴取などを続けるだろう。1月下旬予定の通常国会開会前までに、裏金システムの実態解明が出来るかどうか注目される。
仮に起訴されるのが会計責任者だけ、などということになると、国民の間に失望感が広がるのは間違いない。結局、トカゲの尻尾切りで終わるのか、となり、自民党の支持率はさらに下がる。
一方で、岸田政権が倒れないのは、火中の栗を拾う者が党内にだれもいないのと、「本当に100%身ぎれいな議員なんていない」(自民党幹部)ので、岸田氏の代わりがいないからだ。
同時に悲しいのは、この自民党のていたらくを目の当たりにしても、「野党に政権を任せよう」という気持ちに全くなれないことだ。ここに国民の不幸がある。
最大野党の立憲民主党は共産党と選挙で連携を模索している。日本維新の会は野党共闘には否定的で、国民民主党は今年分裂。その他大勢もいる。こんな星雲状態では、政権交代などとても無理だろう。
国民はといえば、即効性のない減税などには関心が無く、目の前の物価高と、ガソリンを含むエネルギー費の高騰、社会保障費の負担の重さで青息吐息だ。庶民は政治に関心を持つどころか、生きていくのに精一杯という状況だ。マンションブームで多額のローンを組んだ人達は、今後起こりうる金利上昇にどう対応しようか、頭がいっぱいだろう。新NISAどころではないのではないか。
よって2024年のどの選挙も投票率は下がること必至だ。となると組織票のある与党が勝つ、という皮肉な結果になるだろう。
こうした状況下、岸田政権は当面続くことになる。9月の自民党総裁選まで総選挙がなければ、岸田続投となるか、それとも総裁選に複数名乗りを上げるか、永田町では神経戦が続くことになる。
日本の政治がコップの中の嵐に翻弄されている間、笑いが止まらないのは中国だろう。勝手にやっていれば良い、とほくそ笑んでいるに違いない。いつまでも内政の混乱を長引かせることは日本の国益を棄損する。
政治の安定は国力に直結する。一日も早く政治の膿を出し切り、自民党は再出発すべきだ。派閥などいつまでも固執するものではない。政策集団というなら、政策ごとに議員が集まり法律を作れば良いだけの話だ。いつまでも親分子分の関係でつながっていてどうする。昭和じゃあるまいし、時代錯誤もはなはだしい。派閥解散を岸田首相は宣言すべきだ。
そもそもなんでそんなに色の付いてない金が欲しいのか。
「政治は金がかかる」と当たり前の様に語られるが、一体に何に金がかかるのか。国が負担してくれる以上雇う場合の秘書の人件費、チラシやポスターの印刷費、交通費などにかかるという。
しかし毎年、300億円を超す政党交付金が日本共産党を除く各党に分配されているのを私たちは知っている。それでも足りないからパーティーを開いて裏金作りに精を出すというなら、どうしたら良いのか考えるのが政治の責任だろう。「政治とカネ」の問題をどうするか、この古くて新しい問いに明確な解決策を示すことが出来るなら、岸田首相は名宰相の名を歴史に残すことになるのだが・・・。
そして最後に我々有権者も身を質さねばならない、と言いたい。政治家を選んでいるのは私たち有権者だということを忘れてはならない。「政治は国民を映す鏡」なのだ。
ある地方議員が自嘲気味に言った。
「政治に金がかかるっていうのは本当。祭りにいけばなんだ金持ってこなかったのか、と主催者に嫌味を言われる。だから金を包まないわけにはいかない」。
知ってて知らない振りをしているのか、それとも慣習だから、と何も考えずにやっているのか知らないが、お祭りで政治家が寄付をすることはもちろんのこと、有権者が政治家に寄付を要求することも立派な公職選挙法違反である。私たち有権者も襟を正さねばならないということだ。
票を金で買うようなことがあってはならない。子供だって分かる理屈が通ってない現実を直視すべきだ。
2024年、政治の混乱は続く。しかし、それを終息させる為に私たち一人一人が何をしたらいいのか、考える年にしたい。
トップ写真:千葉の補欠選挙で自民党候補者の応援に立つ岸田首相(2023年4月15日千葉県浦安市)出典:Tomohiro Ohsumi/Getty Images
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この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員
1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。
1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。
1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。
2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。