メディアが報じない政策を語る!Part1「こども・子育て」Japan In-depth創刊10周年記念対談 元環境大臣小泉進次郎衆議院議員
安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
【まとめ】
・第2子の育休の一番の正解は、妻が一番求めてる形の育休を取ること。
・出産育児政策は着実に前進しているが、国民にはあまり知られていない。
・議員の情報発信の在り方も問われるが、有権者も政策に関心を持つことが重要だ。
■親としての心構え
安倍: 今日は小泉進次郎氏にお越しいただきました。
小泉: 10周年おめでとうございます。
安倍: 進次郎さんも第2子ご誕生おめでとうございます。最初男の子でしたけども、今度は女の子ということで。
小泉: そうですね。僕は元気に生まれてくれればどちらでもと思ってましたけど、もう本当によかったです。
安倍: 私のフジテレビ時代の仕事上のパートナーである滝川さんとの第2子ということで、結構世論的にもおめでとうございますという声が多いです。
小泉: 妻も高齢ですからやっぱり最後まで不安もありましたね。もともと出産っていうものは、最後まで何が起こるかわからないでしょう。その中でもリスクが高いわけですから立ち会いましたね。第1子の時も第2子の時も出てきて泣き声を聞いた時は本当にホッとしました。
安倍: そうですか。2人目が女の子だと分かった時は嬉しさもありましたか?
小泉: そうですね。それとやっぱり戸惑いもありましたね。私自身が男兄弟ですから、女の子を自分が父親として育てるとなった時に、全く未知の世界だな、と。これからそれをどんどん味わっていくんで。
安倍: 娘の父親の気持ちを傍からいろいろ聞くことはあると思いますけれども、まさか自分が当事者になるとはね。
小泉: そうですね。また新たな経験ができるな、と思っています。
■第1子の育休との違い
安倍: 小泉さんというと、当時環境大臣だったころに育休を取られてすごく話題になりましたけども、第2子の場合はどんな風に考えてらっしゃるんですか?
小泉: 第1子の時は大臣だったのが、今回は一衆議院議員だったということで、時間的な拘束のあり方がまず全然違いました。
そんな中、今回の育休は何が私にとって一番の正解かなって考えると、結局、妻が一番求めてる形の育休を取ることになります。やっぱり第1子が園に通って、帰ってきてから2人を見なければいけなくなる時が一番大変なんですね。なので、最近は極力、会食の日程を入れなかったり、会食をランチに変えたりを心がけています。
あとは今国会が閉会をしている中、できる限り日程も抑えてこの機会にしっかり時間を取ったり、朝は送り担当だったり。年末年始というと安倍さんもご存知のとおり、国会議員は忘年会、新年会をとにかく回りますが、今回は断腸の思いで、「すみません」っていうお断りをさせていただいております。
安倍: 結構支援者の方は驚愕されているのではないですか。
小泉: 実は最近でも、なかなか簡単にはわかってもらえないな、と思うこともあるんですよ。「来てくれると思ったのに来なかったね」とか。それはもうしょうがないですね。今が自分にとって大切な時間なんだということを少しでもわかってもらえるようにしなくてはいけないので、葛藤もあります。
安倍: なるほど。もちろん自分たちが支援してる議員に来てほしい人が、なるべく生の声を聞きたい、もしくは届けたいって気持ちはわかりますよ。でも有権者も変わらなきゃいけないと思うんですよね。
小泉: そうですね。なので、これは私が大臣で育休を取った時に、やっぱりトップダウンで取らないと変わらないことってあって、それは環境省の若手の職員は大臣のあなたが取ってくれれば我々も取りやすい、職場の空気を変えてほしいというのがあったんですよね。
■国会議員の育休
小泉: それを考えると、今国会議員の中でも私と同世代の議員が結構いて、私以上に育児の両立にすごく苦労している議員がいるんです。
その議員たちが胸を張ってそれを説明できる環境を、ちょっとでも作っていく方向になればと思いますよね。
安倍: そうですね。他の議員や若い議員も育休を取ったりしてるんですか。
小泉: 実際私の仲のいいある同世代の議員の一人は、家族の中でルールを作っていて、平日の週2回は夜の会食は入れないルールを持っているんですよ。そういった議員に対してもその地元の方や周りの方が理解をしてあげてほしいなと思いますよね。
安倍: 本当にそう思いますね。では今回は実際に年明け、閉会中ですがその間は?
小泉: できる限り休もうと思っています。
■育休ではなく「育業」
小泉: というか、休もうって言うと、小池百合子都知事から怒られるんですよね。
安倍: なんでですか?
小泉: 小池さんからよく言われることは、「育休って言うと休みだと思われるんでしょう」と。「でもあなた、休んでるわけじゃないでしょ?仕事の方が楽じゃない?」。確かにそうです。
安倍: そういうことですね。休んでるわけではない。
小泉: だからもう一つの仕事、育児という仕事をやっているという思いで、小池さんは育休じゃなくて、「育業」と言ってほしいと。
安倍: いいですね。いいと思います。さすがゆり子姉さん。
小泉: いや、それを言われているので、私も「年末年始休みます」と言いながら、自分自身休んでいるどころか、睡眠不足がずっと続くし、いろいろ家の仕事が出てきているから「確かになあ」と。それでも自分が今休みますと言っちゃっていることはいけないんだと思いました。
安倍: そうですね。
小泉: 仕事します。育業します。
安倍: 「育業」、番組タイトルにもなるのではないかと思いますけどね。
小泉: 小池さん、言いましたよ!(笑)
■伴走型支援
安倍: 子育て政策なんですけれども、なぜここに関心をお持ちになったんですか。
小泉: もともと独身時代から、絶対国がもっと力を入れなきゃいけない政策分野だというのがありました。それがもう全ての国家議員が思っていることだと思います。ようやくそれが政治のど真ん中に上がってきて、今回、岸田政権で「異次元の」ということにはいろんなご指摘がありますけども、間違いなく今まで以上に予算が投じられることになって政策が強化されたことは、今回第二子が生まれて、改めて第一子の時との違いを痛感してるんです。
例えば私の第一子は約4年前に生まれて、その時になかったのが、妊娠時に妊娠届を役所に持っていきますよね。5万円もらえます。さらに出産届で、さらに5万円、合わせて10万円。先月生まれた娘の時はもらえるんですね。これは第一子の時にはありませんでした。
安倍: ゼロが10万。
小泉: これは単純に10万円ですよという意味じゃなくて、役所に来てもらったり、あとは周産期の妊婦さんの伴走型の支援、相談とかカウンセリングとか、ちゃんと来てくださいねという、そのための一つのインセンティブ付けみたいな思いもあるわけですよ。
安倍: 呼び水的な。
小泉: そうなんです。だから単純に給付されるんじゃなくて、ちゃんと来てその伴走型の支援を受けて、5万円という意味なんです。それを2回にわけて、5万円、5万円とやることによって、ちゃんと行政も妊婦さんに目が行き届くようにしたい。なかなかこういうことも伝わっていないでしょう。
安倍: 伝わってないですね。
小泉: まさに私の場合は、第一子の時と第二子の時での違いも感じるのがまず一つです。
安倍: まず実感しているわけですね。
小泉: 実感してます。絶対に政策的な前進はある。それと、出産、育児一時金という、出産に対する国の補助、第一子の時は42万円です。今回は50万円です。これも違いますよね。なので、これを見ていくと確実に前進しているんです。
安倍: そうですね。
・子供用車椅子の支援
小泉: ただ、なかなか今みたいに政局が政治報道のほとんどを占めていると、こういうことが伝わらないなと思うので。最近心がけてるのは自分のインスタグラムとかフェイスブック、ブログ、こういったSNSを通じて、これは知ってほしいなと思う政策発信などをやっています。
そうした中、最近すごく反応があったのは、子供の中でも特に重度の障害を持っている方は、子ども用の車いすを利用されていますよね。この方々、子どもの成長に合わせてこの道具を変えなきゃいけないので、とてもコストがかかります。一般的に調べてみると、子ども用の車いすって60万円くらいするんです。
安倍: そんなにするんですか。
小泉: 高いですよね。一定の所得がある方は自己負担でお願いしますという状況だったのが、今月国で決定があり、自己負担額について最大37,200円という上限が設けられたので、60万円のものが37,200円で購入できるようになったんです。
安倍: それはドラスティックですね。
小泉: 一定の所得に満たない方はこれまで上限がありました。しかし今月、所得制限の撤廃をして、障害を持たれてる方のご家庭の支援も含め、一般の制度の中で対応しましょうということになりました。こういったことは今月決まったんですよ。
安倍: 知らなかったですね。
小泉: 全然報じられないでしょ。
安倍: どこの新聞にも書いてないですね。
小泉: そうですよね。だから私がインスタやブログ、フェイスブックとかで発信をすると、知らなかったという声や、教えてくれてありがとうございますという声や、周りで車椅子を利用している人を知ってるから喜びますとか、あんなにSNSで前向きなコメントだらけなのは珍しかったです。
安倍: 岸田政権下で随分変わってるっていうことですね。
・国による出産の支援
小泉: 変わっていますし、これからもまだまだ出てきます。例えば今日私が役所から話を聞いたのは、神奈川県の横須賀市と三浦市という、三浦半島の南端の方、この三浦市は残念ながら今、分娩を受けてくれるところがありません。出産できないんですね。
安倍: 産科がどんどん減ってますよね。
小泉: 実はこれはまだ良い方で、三浦市から横須賀市に行けば出産できる。隣の自治体で出産できるのですが、全国にはさらに遠方まで行かないと出産できないケースが多くあるんです。
国として今後対応するのは、分娩のために大体1時間の移動が必要になるケース。出産施設や周産期の医療センターについては交通費を、ハイリスクの妊婦さんには出産前に宿泊するホテルを、国が一部サポートする方向に進んでいます。
具体的な調整はこれからですが、自治体の声を聞いて移動時間1時間という制限が果たして妥当なのか、ケースバイケースで対応できるところは対応しますが、これも今月です。予算が最終的に固まって制度が最終決定するのが大体年度内、つまり来年の3月ぐらいですよね。そこまでに固めていきます。
安倍: もう法案はできてるのではないですかね。
小泉: これは法案でやることじゃなくて予算でできるんですよ。
安倍: 予算はもう取ってあるから。
小泉: そうなんです。予算は閣議決定が近々あるので、その閣議決定がされれば予算はつく。あとはその予算を運用する細かいルールを決め、来年4月からはその制度が走ってきます。
■動画やSNSを利用した政策宣伝効果
小泉: そうした中、予算や税制が決まるのが今月ですから、今月決まる政策と来年4月以降に始まる政策が多々あります。しかし報道は全部政局で消えていきますね。
安倍: 政治部は政局部なのでしょうがないですが。経済部や文化部には子育て政策は絡むかもしれませんけど。家庭欄などに書けますね。文化家庭担当記者なんかに書いてもらうといいかもしれませんね。
小泉: そうですね。今日このように安倍さんの番組に出演させて頂くだけでも、今後いくつかの政策が実施されると発信できます。例えば、各省庁で国会議員が「今後の動きを分かりやすく教えてください」と言えば、現状を理解することは難しくないです。しかし今の時代、そうした場があまりないのが悩ましいですね。発信するにも限界があるので、現在は政策広報の重要性が一層高まっているし、試行錯誤の時代と言えます。
安倍: SNSがこれだけ発達し、議員個人が発信できるようになったと言われて久しいですよね。
小泉: それは大きいですよね。
小泉: とはいえ、積極的に政治家のSNSをフォローしてくれる人は圧倒的に少数派ですよね。私のインスタはありがたいことにフォロワー12万人。ですが、一般的に世の中でインフルエンサーと言われてる方のフォロワー数は桁が違いますよね。
安倍: 何百万ですよね。
小泉: もしくは何千万フォロワーみたいな方だっていますよね。そう考えると、12万人のフォロワーに対し少しでも情報を届け、彼らがシェアするなどして情報が伝播するようにと願うところですね。
安倍: 以前、フォロワーに若年層があまり多くないというのが悩みだとおっしゃっていませんでしたか?
小泉: 基本的に、若い人に政治を見てくれる人が少ないというのは構造的な問題です。なので、まずはフォローしてくれるきっかけを作る点で言うと、何がそのきっかけになるか分からないので、政治家はできる限り多くの方と直接お会いする機会を持とうと考え、地元活動とかをやるわけです。
安倍: 地元活動は全然否定するものでもないです。以前小泉さんもおっしゃってましたが、神奈川県横須賀市で選ばれた政治家なわけだから、その地区を盛り立てて活性化していくというのは、当然仕事になりますよね。
小泉: それを国会議員としてはやりつつ、でも国会議員の仕事で大事なのは、世界の中の日本をどうするか、日本全体の課題をどうするかを真摯に考える点だ思います。
安倍: もちろんそうですね。内政と外政、それは両方分けなきゃいけないのですけれども、多分小泉さんから子育て政策の話を細かく聞くと誰も思わなかったと思うんですけれども、別にそういう議連に入っているわけではないですよね。
小泉: これは当事者としての問題意識というのがすごく大きいですし、またこの立場になったから実感を持って話せるというのはありますね。
安倍: そうですね。このタイミングでお呼びでき本当に良かったと思います。視聴者の皆さん、他にもいろいろお聞きしたいことがあると思うので、そちらはPart2でお話を聞こうと思います。ありがとうございました。
(Part2につづく)
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この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員
1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。
1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。
1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。
2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。