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スポーツ  投稿日:2024/3/27

大谷会見で痛感した英語の大切さ


安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)

【まとめ】

・元通訳の違法賭博問題に関し、大谷翔平選手が声明を発表。

・新通訳の逐語訳は的確ではあったが、はしょった部分も。

・メジャーリーガーはやはり英語はできた方がいい。

 

日本時間3月26日(火)午前6時半ごろ、大谷翔平選手が会見した。声明文を読み上げる形式ではあったが、正面を向き、自分の言葉で、真摯に、そして率直に語り、説得力があった。彼は本当のことを話している、と感じた。

ただ、通訳を介して聞いていた米国人はどう思っただろうか。今回は質疑応答がなく、特に肝心な部分、すなわち、大谷選手の銀行口座からどのような手口で水原氏が金を盗んだかについては、「(水原氏が)僕の口座を勝手にアクセスしてブックメーカーに送金していた」と語っただけで、それ以上は語らなかったので、疑問は残ったままである。つまり、「なぜ水原氏は口座にアクセスできたのか?」という疑問である。

捜査中で、詳細は明かせないのかもしれないが、もう少し踏み込んでもよかったのではないか。

さて、日本でもアメリカでもあらゆるメディアが勝手に憶測を書き散らしているのをみて、うんざりしていたが、この会見を聞いていて、つくづく英語は話せた方がいいな、と思った。そう感じたのは以下の部分だ。

大谷選手は、一番信頼していた水原氏に裏切られたことがそうとう堪えたはずだ。

冒頭で、こう話した。

「僕自身も信頼していた方の過ちというのを悲しいというか、ショックですし、いまはそういうふうに感じています」。

そして、最後にもう一度こう語っている。

①「正直、ショックという(溜息)ことばが正しいとは思わないですし、えー、まあそれ以上の、うーん、うまく言葉では表せないようなえー感覚でこの1週間ぐらいはずっと過ごしてきたので、いまはそれをうまく言葉にするのは、えー難しいなと思っています」。

これを通訳は

②“To summarize, how I’m feeling right now, I’m just beyond shocked. It is really hard to verbalize how I’m feeling right now.”「ようするに、今、私はショック以上のものを感じています。今の気持ちを言葉にするのはとても難しいのです」。

とかなりはしょって訳した。

大谷選手が言いたかったエッセンスは入っているし、コンパクトで的確な訳だとは思うが、大谷選手は「この1週間ずっと苦悩してきた」、と言っているわけで、そのニュアンスはカットされてしまったな、と聞いていて思った。

もし自分が大谷選手の立場だったら、こんな風に話すだろう。

③“Well, I said I was sad and shocked at the beginning, but I do not think these are the right words to express my feelings. Well, I mean, more than shocked.., I’ve been spending all this time for the past week looking for the appropriate words, but so far it’s hard to put into words right now.”

②と③を比べると、やはり③の方が、その人の複雑な心中や人となりが伝わるのではないだろうか。

誰もがこんな会見をやることにはならないとは思うが、メジャーリーグでプレーする日本人選手は、やはり、英語はマスターしておいたほうがいいなと思った。

筆者も住んでいたとき実感したが、アメリカでは英語が話せない人間を見下すような空気がある。英語は話せて当たり前、という感覚を彼らは持っているのだ。英語が母国語でない移民もたくさんいるが、彼らの中でも、英語がうまい層が下手な層をバカにする傾向がある。

また、アメリカでは自分の意見を明確に言うことが求められる。否定すべきは否定し、賛成するところは賛成する。日本人が苦手なイエス・ノーの世界だ。自分の意見をはっきり言わないと、何も考えていない、中身のない人間だとの烙印を押されかねない。

そういう社会でプレーする以上、英語が話せないのは相当不利だ。自分のブランディングのためにも英語は話せた方がいい。

これを言ったら酷かもしれないが、何でもかんでも通訳に頼りっきりになった結果、こうした事態を招いたともいえるのだ。人任せではなく、自分のことは自分でやらなくてはだめ、ということだろう。

メジャーリーグに挑む選手は日本にいるときから、将来自分がどのようなシチュエーションでコメントを求められるか想定した英会話の勉強をしておくべきだろう。

大谷選手が今置かれている立場を見て、将来のメジャーリーガーたちが語学の習得に励むことを期待する。

トップ写真:ロサンゼルスドジャースvsロサンゼルスエンゼルス 5回裏の太谷翔平選手(2024年3月25日ドジャーススタジアム)出典:Michael Owens/Getty Images




この記事を書いた人
安倍宏行ジャーナリスト/元・フジテレビ報道局 解説委員

1955年東京生まれ。ジャーナリスト。慶応義塾大学経済学部、国際大学大学院卒。

1979年日産自動車入社。海外輸出・事業計画等。

1992年フジテレビ入社。総理官邸等政治経済キャップ、NY支局長、経済部長、ニュースジャパンキャスター、解説委員、BSフジプライムニュース解説キャスター。

2013年ウェブメディア“Japan in-depth”創刊。危機管理コンサルタント、ブランディングコンサルタント。

安倍宏行

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