【立憲民主党代表選挙】1 枝野幸男氏「政策分析」と「人事評価」
西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)
【まとめ】
・枝野氏は累進課税の強化と最低賃金の段階的引き上げを提案。
・日米同盟の強化と沖縄基地問題の見直しを進める方針。
・自然エネルギー推進と働き方改革に課題があり、リーダーシップが求められる。
徹底的に「人」に着目して「人」を支え、すべての「人」の能力を最大限に引き出す経済をつくる。
立憲民主党の初代代表として党を立ち上げた男、枝野さんが再び立ち上がった。掲げるのは「ヒューマンエコノミクス、人間中心の経済」というビジョンである。1人1人に寄り添うまっとうな政治への転換を成し遂げられるのは自分だという決意で今回立候補したそう。
今回から、自民党総裁選・立憲民主党代表選の候補者の「政策分析」と「人事評価」をしていこうと思う。最初は立憲・枝野さん。
▲写真 【出典】立憲民主党HP
◆ 枝野さんとは?
枝野幸男さん、1964年5月31日に栃木県宇都宮市で生まれ、県立宇都宮高校、東北大学法学部を卒業後、司法試験に合格して弁護士として活動。1993年に日本新党の候補者公募に応じ、「市民の常識が通じる政治」を訴えて出馬。初当選。その後、政治経験を重ねて、民主党政権時には官房長官を担った。
民主党が下野後も、「希望の党の理念は私の目指す社会と異なる」として合流を拒み、ネット上でわき起こった「枝野立て」の声に応え、1人で「立憲民主党」を結党、初代の立憲民主党代表を務めた。
◆ 枝野さんの政策
第一の特徴は、再配分の視点である。
・金融所得課税、所得税、相続税、贈与税などの累進性を強化する。
・中小零細企業を中心とした公的支援を実施しつつ、最低賃金を当面少なくとも1,500円にまで段階的に引き上げる。
【出典】枝野さんHP
はっきりいって、お金持ちには各税増税、負担増加をしてもらうということだ。「富裕層には応分の負担を」と立候補者討論会で話したように、累進強化を明確に打ち出している。政治家として言いにくいことを明確に言った点は、評価したいところだ。
労働者の賃上げを進めていくことについても、企業の立場へ配慮をしていて、「人間中心の経済」を体現している。最低賃金増の手法としても、いきなり50%程度賃上げではなく、段階的に進めること、かつ、公的助成をしつつすることで、企業の経営にも配慮している。
第二の特徴は、外交における問題提起である。
・健全な日米同盟の一層の強化を進めるとともに、自衛隊員の処遇向上や、施設の改善、十分な装備の給付など、基礎的部分の環境を改善して、我が国自身の防衛力を強化する
・沖縄県民の民意を踏まえ、辺野古新基地建設を含めた沖縄における基地のあり方や日米地位協定を見直すため、米国との交渉を開始する
【出典】枝野幸男HP
「健全な」日米関係ではないと理解していることが推察される。アメリカから日米合同委員会を通じて通告される要求や要望を受け入れることが日米関係、いや外交になってしまっている現状がおかしいということだ。アメリカ軍関係者が刑事犯罪を起こしても、米国の軍法裁判で裁かれるため、身柄引き渡しを認めた場合ではないと日本では裁判を受けない。なぜなら、日米地位協定で規定されているからだ。そして、この一度も改定されていない日米地位協定が沖縄県民を苦しめている。そして、そのほか地位協定は、いろいろと「属国的地位」のように感じさせる内容も多い。多くの与党議員は踏み込まないが、そこに踏み込んだ時点で素晴らしい。
しかし、課題も多い。
・「自然エネルギー立国」を目指し、広域連係系統の強化や、住宅用太陽光発電設備と蓄電池の大幅導入をはじめとした省エネ・再エネに対する大規模投資を進めて、250万人規模の雇用創出と、年間50兆円の経済効果を実現する
【出典】枝野さんHP
どこに自然エネルギーを推進できる土地があるのだろうか。太陽光パネルが自然破壊をして各地で問題になっていること、風力は限られていること、山岳ゆえの森林の干ばつから木材を輸送するコストなど現場をわかっているのか、と思ってしまう。
・残業代の支払い厳格化や、長時間労働の是正など、働き方改革をさらに抜本的に強化して推進する。
【出典】枝野さんHP
すでに、安倍政権の「働き方革命」で手を付けているし、それなりに企業では働き方改革を進めている。どこを抜本的に変えるのだろうか。
◆ リーダーシップ・人事評価
人事評価の専門家として「政治家の人事評価」などを提起してきた。ここで、「首相の人事評価」を考えたい。総理大臣の「能力」「成果が出せる行動特性(コンピテンシー)」は大きくいって以下の3つになる。
◆1.未来の方向性を示せる、共有できる
◆2.組織マネジメントができる
◆3.決断・意思決定ができる
視点を細かく見ると以下の図のようになる。
課題はあるけど頑張ってもらいたい。枝野さんに期待したい。
トップ写真:代表選を前に演説する枝野幸男氏(2020年9月10日)出典:David Mareuil – Pool/Getty Images
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この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者
経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家
NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。
慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。
専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。