無料会員募集中
.政治  投稿日:2024/9/12

【立憲民主党代表選挙】2 野田佳彦氏「政策分析」と「人事評価」


西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

【まとめ】

・立憲民主党代表選で野田佳彦元首相が「中庸の政治」を掲げ再チャレンジ。

・政治改革の必要性を断言、政治資規正法の再改正などを唱える。

・首相の経験や問題意識が反映されず、具体策が不明確。

 

立憲民主党代表選。元首相としての重厚感、低い声での安定感、安倍首相追悼演説で示した心を動かす言葉・・・。「中庸の政治」を掲げ、再チャレンジをはかる野田佳彦さん。プロレス好きであったり、朝6時に駅頭に立ってチラシを配るといった「行動」に注目が当たりがちだが、その政策を見てみることが必要だろう。

▲写真【出典】野田佳彦HP

◆ 野田佳彦氏とは

野田佳彦さんは立憲民主党所属の衆議院議員。1957年5月20日に千葉県船橋市で生まれ。船橋市立薬円台小学校、二宮中学校、千葉県立船橋高校を経て、早稲田大学政治経済学部に。大学卒業後、松下政経塾の第1期生として入塾し、学んだ。千葉県議会議員を2期務めた後、1993年に衆議院議員に初当選。議員としての実績を重ねた。2010年に財務大臣、そして2011年から2012年まで第95代内閣総理大臣を務めた。ちなみに9回当選を誇る。

◆ 野田佳彦氏の政策の特徴

第一に、政治改革の必要性を明確に断言していること。「徹底的な政治改革を主導し、自党のウミを出し切る」と言い切る姿勢は、強く訴えかける。具体的にも以下のような明確な提案をしている。

1 ⾦権腐敗政治を終わらせる政治資⾦規正法の再改正

⽴憲⺠主党案に盛り込んだ「連座制の強化」「企業団体献⾦の禁⽌」「政策活動費の禁⽌」の実現、国会議員関係政治団体からその他政治団体への資⾦移動の透明化、政治資⾦「収⼊」への監査義務化等。

2 政治資⾦の更なる規律強化

企業・団体によるパーティー券購⼊の禁⽌(まずは、徹底的なガラス張り化)、旧⽂通費の使途公開と残⾦返納。

【出典】野田さん政策

企業団体献金の禁止こそ、政治改革の本丸であり、自民党が避けている、そこに話題がいかないように防衛しているテーマでもある。

第二に、保守としての問題提起である。自民党政権下で急増した防衛予算の使途を精査し、防衛増税は行わないと明言している。

・⽇⽶同盟を基軸とするこれまでの外交・安全保障政策(経済安全保障を含む)の基本を踏襲しつつ、基本的な価値を共有する国々との連携を強化し、平和創造外交の展開によって地球規模の課題解決に貢献する。近隣諸国との困難な課題についても、毅然とした対応を旨としていく。外国で抑圧されている⼈々の救済に向けた⼈権外交も⼒強く展開する。

・⽇本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中で、平和国家として専守防衛に徹し、我が国固有の領⼟・領海・領空は断固として守り抜く。国境の離島管理を適正に⾏うとともに、「領域警備・海上保安体制強化法案」を成⽴させ、尖閣等の警備にも万全を期していく。外国資本による⼤量の遊休地等の買い占めといった事態が⽣じないよう、国内の⼟地管理も強化していく。

【出典】野田よしひこの政策

尖閣についての言及、外国資本による土地買収などへの警告は「さすが保守」といったところだ。

第三に、「地方自治の強化」という分権構想を提示している。人口減少が急激に進んでいること、将来展望が描けないことへの問題意識であろう。過去に「地方自治」「地方分権」など政策業界では非常に注目をあびたキーワードではあったが、大阪で成功を収める日本維新の会にその政策的立場・主導的な立場を奪われていた感があった。そこに対しても言及し、「東京と地方の格差に起因する諸課題」という問題認識を持っている。

課題は、首相としての経験、そこで気づいたこと、思ったこと、問題意識が反映されているようには思えないことである。ガバナンス改革も含めてもっとあるだろう?という期待からの意見である。

また、「新しい公共」という旗、民主党政権がこれまでの「日本社会」に対して提示していたものをリバイバルのような形で提示している。しかし、「インパクト国家」、「公益⽬的の投資(「インパクト投資」)を促すための仕組みをはじめ、市場経済の発展と社会課題の解決を両⽴する、新たな社会システムを構築する」というのはよくわからない。

また、「多様性を認め合う共生社会」と掲げ、「他者に対して寛容で多様な意見や価値観を包摂する社会」と言っているが、社会政策、公共政策で当たり前の価値観として理解されていることであり、具体的な政策への落とし込み、具体化が十分ではない。そのほか、「仕組み」「システム」を提案しているが、その設計図はあいまいだ。

◆ リーダーシップ・人事評価

筆者は人事評価の専門家として「政治家の人事評価」などを提起してきた。ここで、「首相の人事評価」を考えたい。総理大臣の「能力」「成果が出せる行動特性(コンピテンシー)」は以下になる。

◆1.未来の方向性を示せる、共有できる

◆2.組織マネジメントができる

◆3.決断・意思決定ができる

野田さんをこの視点で細かく見ると以下のようになる。

▲図 筆者作成

直接知るわけではないが、謙虚さ、慎重さなど人間的な深みを感じる人物でもある。しかし、総理大臣時代のアドバイザーなど人事面で疑問も多い。課題はあるけど頑張ってもらいたい。野田さんに期待したい。

トップ写真:国連総会で演説する野田佳彦首相(当時)2012年9月26日アメリカ・ニューヨーク 出典:John Moore/Getty Images




この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家


NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。


専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。

西村健

copyright2014-"ABE,Inc. 2014 All rights reserved.No reproduction or republication without written permission."