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.社会  投稿日:2014/7/29

[為末大]<早すぎる最適化>日本の20歳以下の競技はレベルが高いのに、なぜ20歳以降で伸びなくなるのか?


為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)

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日本の20歳以下の競技はかなりレベルが高い。野球のリトルリーグでも優勝しているし、ユースという17歳以下の大会では日本はトラックでもメダルを獲得している。

そこで大体よく言われるのは「なぜ20歳以降で伸びなくなるのか?」である。

私は原因の一つは早すぎる最適化だと思っている。中学、高校、大学と各カテゴリーの試合が余りにもシリアスで、且つそこでの結果がその後のキャリアに影響する。だから中学時代からなるべくポテンシャルを引き出そうとかなり前倒しで練習している印象がある。

中学時代、僕の指導者の口癖は「まだやらなくていい」だった。僕は早熟だったからたぶん本気で400mをやらせていたら相当に速かったと思う。でも統計を見てみると400mの中学チャンピオンでオリンピックに行けた人はほとんどいない。その年代で鍛えるべき能力。

コーチから聞いた話。中学校の野球チーム。身体の線が細く足が速い子がいる。チームの能力を最大化する為にコンパクトな打撃とバントを教え込む。20歳を過ぎて身体がどんどん大きくなったが、ある時期にスラッガーとして必要な練習をしていない事が成長を阻む。

早すぎる専門化。中学時代に二つ以上スポーツを掛け持ちしている選手は少ない。一意専心文化から、競技転向も日本は極端に少ない。下手すると十代で15年というキャリアの選手もいる。実は他の運動をほとんどやった事がないという選手も多い。動きに幅がない事が将来響く。

まず問わなければならないのは「いつ、どんなスポーツでピークを迎えるのか」。競技人生終盤、自立してコーチ選びから自分で考えなければならなくなった局面で悩む選手は多い。素直で疑問を持たないいい子は、戦場では食い物にされる。

 

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