情報格差ゼロへ:Staffbaseが日本企業にもたらすデジタル化の波
Japan In-depth編集部(楊文果・高橋十詠)
【まとめ】
・ドイツ発のHRテック企業「Staffbase」が日本市場への参入を発表。
・Staffbaseでは顧客企業の全情報をアプリ上に集約、現場で働くノーデスクワーカーにも瞬時に情報共有できる。
・やりがいを求める労働者が増加する中で、Staffbaseは従業員のエンゲージメント向上にも寄与する。
いま、日本のHRテック市場に注目が集まっている。HRテックとは、「Human Resources Technology」の略で、人事(HR)領域においてテクノロジーを活用したサービスやソリューションを指す。
そうしたなか、ドイツ発のHRテック企業「Staffbase」が3月11日、日本への参入を発表した。
■ Staffbaseとは
Staffbaseは2014年にドイツで設立された。従業員向けコミュニケーションクラウドソリューションを企業に提供しており、代表的な顧客にAdidas、Audi、DHLがあげられる。現在では2000社以上の企業、そして1500万人以上の従業員が利用するサービスとなり、売上は1.2億万ドル以上にまで成長した。以下、紹介動画である。
(Staffbase YouTubeチャンネル Staffbase – No.1 従業員コミュニケーションプラットフォーム)
本ソリューションの最終目的は戦略的コミュニケーションと従業員のエンゲージメント向上である。
Staffbaseの特徴として、メールやニュースだけでなく、その他の企業にまつわる全情報が一つのアプリに集約し、スマホからでも簡単に確認できることがあげられる。従業員は企業アプリとしてStaffbaseをスマートフォンにダウンロードするだけで他のデジタルソリューションと連携した検索エンジンを利用して社内情報を簡単に検索することができる。
さらに透明性の高いスケジュール管理システム、AIによるコンテンツ生成といった人的リソース削減のための機能も充実している。日本を含め世界40カ国以上に進出しており、自動翻訳やAIライティングなど、多国籍企業に向けたサービスが強みである。
図)Staffbaseのプラットフォームイメージ
出典)Staffbaseプレゼン資料 2025年3月11日
そして昨年11月には日本初の顧客を獲得したStaffbase。本日の会見では、創業者兼CEOのマルティン・べーリンガー氏とCPOのニール・モーリソン氏が登壇し、日本市場における今後の発展について語った。
■ 日本市場での戦略、課題とソリューション
ニール氏によると、製品の日本語化は既に完了しており、3月中に販売代理店を決定、今年下半期に法人化を予定しているという。現在は日本の大手企業とPoC中であり、カントリーマネージャーの採用も実施している。
Staffbaseが日本に進出した理由の1つとして、ドイツとの共通点があるという。「ドイツは製造業が強い国で、ものづくりとそれに携わる方に高い価値を置いています。日本そして日本経済、日本文化との親和性も非常に高いと考えています」と述べた。
次に日本企業の課題があげられた。一つ目は、日本企業の現場とオフィス間の情報格差だ。二つ目は、人手不足から海外にアウトソーシングすることによる言語の壁、三つめは、従業員の定着率の低さだという。
そこで、Staffbaseでは多言語対応のモバイルアプリという形を取ることで、全従業員が容易に社内情報にアクセスできる環境を作っている。例えば、日本で働くドイツ人がアプリをダウンロードした場合、その時点でアプリ内は日本語でなく利用者の母国語であるドイツ語で表示される。
加えて、Staffbaseを通じた社内コミュニケーションにより、従業員のエンゲージメント率を向上させ、結果としてこれらの課題を一気に解決することができるのだ。
図)日本企業の課題とStaffbaseが提供するソリューション
出典)Staffbaseプレゼン資料 2025年3月11日
■ 誰ひとり取り残されない現場
なぜ今、社内コミュニケーションのデジタル化が重要視されているのか。
Staffbaseの顧客となる企業のうち、製造業を中心とした多くが元々紙によるコミュニケーションを図っていたという。しかし、リサーチの結果、ノンデスクワーカー現場の従業員に情報が行き渡っていないことが判明した。特に多国籍に工場拠点を置く企業だと、紙媒体の情報が工場に到着した時には、そこに書かれている内容自体がもう既に古くなっていることも多々ある。
製造の最前線で働く人々が取り残されることの無いように、Staffbaseはオフィスと現場との情報格差を埋めるスムーズな社内コミュニケーションを実現するわけだ。
■ モチベーションの新潮流
従業員側のモチベーションも時代と共に変化してきている。
人々が会社に勤める第一の理由は、報酬を得ることであろう。
しかし、ニール氏は市場調査で「最近では給与以上に会社自体の価値、社会に対する貢献度、つまりやりがいなどを重視する若者が増えてきていることに気づいた」と述べた。
また、ギャラップ社による最新の世界各国における従業員エンゲージメント調査報告書によると、日本の「仕事に対して意欲的かつ積極的に取り組む人(Engaged)」の割合はわずか6%にとどまっており、世界最低水準であることが判明している。
その中で、「その企業で働くこと自体が『価値ある体験』として従業員に提供していくことが肝心であり、それを実現できるのがStaffbaseだ」とニール氏は自信を示した。
さらに、従業員がアプリを使用すること自体に関心も持ってもらえるよう、地域のローカル情報やコメント可能なソーシャル機能、アプリ上でのアンケート解答機能などの工夫が盛り込まれている。
■今後の展望
ニール氏は、「AIによる単純作業の自動化がトレンドとしてみられる中で、職場は、よりクリエイティブでモチベーションを高めてくれ、従業員がエンゲージしたいと思える場所であることが求められている」と述べるとともに、手厚いオンボードサービスとコンサルティングと共に、革新し続ける意向を示した。
今後もStaffbaseを使用している従業員に『価値ある体験』を提供すべく、企業の課題を知り学び合う場として「コミュニケーションズクラブ」を開催する予定だ。
Staffbaseがもたらす革新が情報格差を解消し、日本の従業員エンゲージメントの新たなスタンダードとなることを期待したい。
トップ写真)プレゼンをする創業者兼CEOのマルティン・べーリンガー氏(右)とCPOのニール・モーリソン氏(左)
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