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.国際,.政治  投稿日:2026/4/27

高市・トランプ連隊の中国抑止効果とはその1 イラン攻撃への実質上の支持


            

執筆:古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)

 

本稿のポイント

・高市首相がアメリカのイラン攻撃に協調姿勢を示したことで、日米同盟の信頼が高まり、中国の野望を抑える共同の歩調が明確になった。

・トランプ大統領と高市首相は、国家主権や国益の重視、「力による平和」の原則に基づく国防重視など、共通の政治信条を持っていた。

・高市首相がイランの核開発や周辺国への攻撃などを非難する言明を行ったことは、トランプ政権のイラン攻撃への全面支持に近く、日米間の他の案件を円滑に進展させる効果を発揮した。

高市首相の今回の訪米と日米首脳会談は、イラン情勢が緊迫する中での重要な外交局面となった。イラン攻撃をめぐり日本が示した協調姿勢は、トランプ政権の信頼を大きく引き上げ、日米同盟の結束を一段と強化した。その結果として、他の外交・安全保障課題も円滑に進展し、中国を抑止する共同歩調の明確化へとつながる構図が浮かび上がる。ジャーナリスト古森義久氏が、訪米の実態とその戦略的意味を読み解く。(Japan In-depth編集部)

 

イラン「戦争」下の緊迫外交:日米協調が導く対中抑止の構図

高市早苗首相がアメリカを公式訪問して、3月19日、ホワイトハウスでドナルド・トランプ大統領との首脳会談に臨んだ。さてこの日米首脳会談は今後の日米同盟や日本自体の国際的な立場にどんな影響を及ぼすのか。さらには日本にとって国難とも呼べる中国との関係にどんな意味を持つのか。この会談から一か月余り、ワシントンの政治の実態を目前にみての考察を試みた。

高市首相がワシントン入りした時点でのアメリカ側の表面での最大の課題は当然ながらイランとの戦争だった。アメリカがイスラエルと連携しての2月末からのイランへの軍事攻撃は、あっという間に「攻撃」という段階を越えて「戦争」と呼ぶべき状態にまで拡大し、激化した。実は「戦争」という言葉はトランプ大統領自身が3月中旬には明確に使うようになった用語だった。

そんな戦時と呼べるアメリカへの日本の女性首相の来訪は日米両国にとってそれぞれどんな影響をもたらすのか。おおまかな結論をまず最初に述べるならば、今回の日米首脳会談は日本側のアメリカのイラン攻撃への協調姿勢を示すことで、日米同盟の米側からの信頼を高めただけでなく、玉突きのような間接効果として中国の野望を抑える日米共同の歩調を強めるという構図を明確にしたといえる。

トランプ・高市両首脳の共通信条:「力による平和」の原則

まず高市首相はアメリカ側でどう迎えられたのか。

トランプ政権による熱い歓迎は自明だったといえる。トランプ・高市両首脳の価値観や政治観の一致は、すでに昨年秋のトランプ大統領の訪日の際に明確となった。トランプ大統領は日米同盟がアメリカのアジア全体、とくにインド太平洋地域での米側の安全保障の「礎石」(コーナーストーン)だと評し、いまはその同盟の「黄金時代」だとも強調した。

その背後にはインド太平洋が「自由で開放された」と力説することで独裁専制国家の中国の膨張への抑止という明確な戦略意思の表明があった。

トランプ大統領はさらに親密な盟友とみなした安倍晋三元首相から高市早苗氏の政治傾向についても十分に聞いていたと明かしている。自国の国家主権や国益の重視、歴史や伝統の尊重、民間活動や個人の人権の尊重、対外的には「力による平和」の原則下での国防の重視などがトランプ、高市両首脳の共通の政治信条だといえよう。

こうした背景を下に今回の日米首脳会談では、日米同盟の強化や深化が改めて確認されたわけである。

イラン非難表明が日米間の「全面支持」として発揮した実効性

ワシントン時間の3月19日午前、ホワイトハウスに着いた高市首相をトランプ大統領は建物の外に出て、温かく迎えた。春の気配を感じさせる陽光の下で、高市首相のライトブルーのスーツとトランプ大統領のダークスーツとが色彩の調和をみせる感じで並んだ。日米関係の長い歴史でもホワイトハウスでの日本側の代表が初めて女性だという光景は奇妙なまでに雰囲気をなごませた。

両首脳は午前11時すぎからホワイトハウス内で主要閣僚をも含めてさっそく会談に入った。この冒頭の会談は当初の予定では30分ほどで執務を続けながらの昼食(ワーキング・ランチ)となるはずだったが、会談だけが1時間半ほども続いた。そして両首脳が記者団を前にしての発表となった。

この発表ではトランプ氏は高市氏の首相就任や総選挙での大勝を歴史的な出来事として最大限の賞讃とも呼べる言葉で強調した。

高市首相は日本語でメモなどを一切、見ずに、首脳会談のそこまでの成果を語った。首相はまずいまの国際情勢の険しさを強調したうえで、すぐ横の椅子に座ったトランプ大統領の顔をみつめながら述べた。

「いま世界に平和と繁栄をもたらせるのはあなた、ドナルドだけだ。私は諸外国に働きかけて、しっかりと応援したい」

こんな賛辞を冒頭で述べれば、会談全体が円滑に進むことは自明だろう。高市首相はそんな効果を十分に意識して語っているのだ。

しかしトランプ大統領の当面の関心はまずイランとの戦争への日本をはじめとする同盟、同志の諸国の反応だった。日本に関しては高市首相がワシントンに着く直前に「日本がホルムズ海峡の安全確保に協力することは難しいと首相が述べた」という情報が流れていた。ただしその直後に日本を含むG7諸国の共同の首脳声明で同諸国がホルムズ湾の安全航行のためになんらかの行動をとるという意思が表明された。

そのうえで高市首相はさらに述べたのだった。

「イランの核兵器の開発は許されてはならず、日本も働きかけをしてきた。日本はさらにイランの周辺国に対する攻撃、ホルムズ海峡の実質的な閉鎖についても非難し、イランの外務大臣に対してやめるように申し入れてきた」

この言葉はトランプ政権のイラン攻撃への全面支持に近かった。トランプ大統領が満足そうな笑みを浮かべたのも、ごく当然の反応だった。大統領がまさに聞きたい言葉だったのだ。おおげさに述べれば、今回の首脳会談では高市首相のこの言明こそが日米間の他のすべての案件をもスムーズに進展させる実効を発揮したともいえた。(つづく)

#この記事は月刊雑誌『正論』の2026年5月号に掲載された古森義久氏の論文の転載です。

(本稿のポイント、リード、中見出しの文責:Japan In-depth編集部)

写真)日米首脳会談3
出典)首相官邸ホームページ




この記事を書いた人
古森義久ジャーナリスト/麗澤大学特別教授

産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授。1963年慶應大学卒、ワシントン大学留学、毎日新聞社会部、政治部、ベトナム、ワシントン両特派員、米国カーネギー国際平和財団上級研究員、産経新聞中国総局長、ワシントン支局長などを歴任。ベトナム報道でボーン国際記者賞、ライシャワー核持込発言報道で日本新聞協会賞、日米関係など報道で日本記者クラブ賞、著書「ベトナム報道1300日」で講談社ノンフィクション賞をそれぞれ受賞。著書は「ODA幻想」「韓国の奈落」「米中激突と日本の針路」「新型コロナウイルスが世界を滅ぼす」など多数。

古森義久

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