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.政治  投稿日:2026/10/27

国交省が「真に」組織を守るためにすべきこと~日本経済をターンアラウンドする!42


執筆:西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)

【本稿のポイント】
・国土交通省の調査では、簗氏から予算配分に関する問い合わせが実際にあり官房長らが面会で対応したが、やり取りのメモや面会記録は残されていない。
・国家公務員制度改革基本法や国土交通省行政文書管理規則は国会議員との接触記録の作成を求めており、「軽微」として記録を不要とした判断は実質的なガイドライン潜脱だ。
・妥当性を人事評価の場で確認すべきで、記録のない運用は組織の信頼を揺るがす。

国土交通省は、簗氏からの予算配分に関する問い合わせへの対応について、面会の記録を残していなかった。国家公務員制度改革基本法などが求める記録の作成・保存との関係、人事マネジメント上の問題、そして組織を「真に」守るための対応を、NPO法人日本公共利益研究所代表の西村健氏が論じる。

 

簗氏が辞任して終わっていいのか。

国土交通省の調査によると、簗氏から予算配分に関する問い合わせは実際にあって、官房長らが面会で対応。しかし、このやり取りに関するメモや面会記録は残されていない。「単なる紹介や問い合わせの応答は軽微なものに該当するため、ガイドラインに則り記録の作成を要しないと判断した」そうだ。

 

結局、政治的影響力はうやむやになってしまったが、国土交通省の記録を残さなかった問題は残った。官僚の行動を規制するルールをより実効性のあるものに改革すべきだろう。それが国土交通省のためにもなる。

 

◆国家公務員制度改革基本法

 

しんぶん赤旗10月18日の記事によると国交省の簗さんを巡る対応は「国家公務員制度改革基本法に違反」しているそう。赤旗が暴露した内部文書「国会業務概論」によると、窓口の国会連絡室が官房総務課連絡調整係に送る「カンバン」と呼ばれる議員側からの要求内容を記録したメモを作るそう。そこには日時、場所、内容などのレク要求を記載することになっている。

 

しかし、こうした記録はないのだそう。国家公務員制度改革基本法では、「職員が国会議員と接触した場合における当該接触に関する記録の作成、保存その他の管理をし、及びその情報を適切に公開するために必要な措置を講ずるものとする」となっているのに、だ。

 

【国家公務員制度改革基本法、第五条3項】

「3 政府は、政官関係の透明化を含め、政策の立案、決定及び実施の各段階における国家公務員としての責任の所在をより明確なものとし、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資するため、次に掲げる措置を講ずるものとする。

一 職員が国会議員と接触した場合における当該接触に関する記録の作成、保存その他の管理をし、及びその情報を適切に公開するために必要な措置を講ずるものとすること。この場合において、当該接触が個別の事務又は事業の決定又は執行に係るものであるときは、当該接触に関する記録の適正な管理及びその情報の公開の徹底に特に留意するものとすること。

二 前号の措置のほか、各般の行政過程に係る記録の作成、保存その他の管理が適切に行われるようにするための措置その他の措置を講ずるものとすること。」

 

◆ガイドライン逸脱?

 

さらに、内閣府・人事院等の指針および各府省の内規により、行政機関の職員が国会議員から職務に関する要望や照会を受けた際には、面談日時、相手方、趣旨・要点などを記録して管理することが義務付けられている。もちろん国土交通省にもある。

 

【国土交通省行政文書管理規則、第10条】

別表第1に掲げられた業務については、当該業務の経緯に応じ、同表の行政文 書の類型を参酌して、文書を作成するものとする。 

 

2 前条の文書主義の原則に基づき、国土交通省内部の打合せや国土交通省外部の者との折衝等を含め、別表第1に掲げる事項に関する業務に係る政策立案や事務及び事業の実施の方針等に影響を及ぼす打合せ等(以下「打合せ等」という。)の記録については、 文書を作成するものとする。

 

【国土交通省行政文書管理規則、第11条】

文書の作成に当たっては、文書の正確性を確保するため、その内容について原則として複数の職員による確認を経た上で、文書管理者が確認するものとする。作成に関し、部局長等上位の職員から指示があった場合は、その指示を行った者の確認も経るものとする。 

 

2 国土交通省の外部の者との打合せ等の記録の作成に当たっては、国土交通省の出席者 による確認を経るとともに、可能な限り、当該打合せ等の相手方(以下「相手方」という。)の発言部分等についても、相手方による確認等により、正確性の確保を期するものとする。ただし、相手方の発言部分等について記録を確定し難い場合は、その旨を判別できるように記載するものとする。

 

国会議員からの照会等は原則として記録に残すとされているのに、現場官僚による勝手な・恣意的な「不当な働きかけではない」という判断をし、記録は不要とした。こういう運用は、実質的なガイドライン潜脱だろう。

 

◆国交省内の人事マネジメント上でやるべきこと

 

想像するに、「記録作成を要しない軽微な接触だから記録を残していない、ない」ということで乗り切る方針にしたのだろう。そうすれば情報公開請求にも耐えられる。今の組織のメンバーの方々の立場になって考えてみたら、前例踏襲の仕事のやり方や政治社会の常識や空気の環境下での「組織を守る姿勢」としては、理解はできる・・・・。

 

しかし、「軽微なのでメモは存在しない」というのは、公務員の人事マネジメント上はかなり問題だと思う。誰が考えても妥当性が低い。元政務官、筆頭副幹事長の政治家から問い合わせがあり、幹部が対応したものが「軽微」と判断した根拠は問われないといけないだろう。国交省は、当該担当者に対して、条件と他の事例との比較で根拠を確認するべきなのだ。

 

ガイドライン逸脱行為なので

・公文書管理法の法的義務

・国家公務員法の服務義務

に違反している可能性があるので、評価会議や人事評価面談にて妥当性が議論されないといけない。

その結果、最悪の場合、当該職員は

・人事評価:能力評価、「コンプライアンス」「規律性」の評価点数が下がる

・定期昇給やボーナスなど抑制・見送り

・昇任など抑制・見送り

・服務規律違反が問われる

ということになるかもしれない。

 

◆真に組織を守るために

 

さすがに厳しい結果ではあるが、本当に「組織を守る」というのはこういうことだ。

 

今の組織のメンバーの方々の立場になって考えてみよう。こう対応してもよかったはず。

 

実は記録はあった、しかし、そこには概要しか書かれてなかった。簗氏からの要望みたいな発言はあり、言い分を聞くは聞いた。少し参考にはしたが、総合的に判断する中、彼の要望を反映することは難しかった。総合的な評価をしているので個別事情はあまり反映できるものではない。削減されたのは他の要因が大きい。(*それが本当かどうかは別にして)

 

となぜ発言・対応できなかったのだろうか。なぜ記録がなかったことにするのだろうか。

 

今回のケース、もし万が一、職員の中に公益通報をしてしまったり、記録の内容をもしリークする人が出現したら、組織の信頼や信用が揺らぐのではないか。そして、若い職員がこんな上司や組織にエンゲージメント、未来のキャリア希望、仕事の意味を見いだすのだろうか。

 

そして、ガイドラインがあるのに、それをすり抜ける運用はもっと大きな問題を生みかねない。運用がグダグダになり、形骸化していくと、ガイドラインが有名無実化する可能性がある。

 

高市政権と国土交通省に期待したい。

 

【よくある質問(FAQ)】

Q1:「行政文書管理規則」とはどのようなものですか?
A:各府省が、行政文書の作成・保存・管理について定める内部規則です。

Q2:「公益通報」とはどのような制度ですか?
A:組織内の法令違反などを、内部や行政機関、報道機関などに通報した人を保護する制度です。

Q3:「潜脱」とはどのような意味ですか?
A:形式上は規則に従っているように見せながら、実質的にはその趣旨を免れることです。

(本稿のポイント、リード、FAQの文責:Japan In-depth編集部)

トップ写真:東京国土交通省
出典:Photo by Gettyimages




この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家


NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。


専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。

西村健

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