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.政治  投稿日:2026/10/16

基準や優先度ロジックはどこに???政治家の要求をどこまで聞いているのか問題は残った~日本経済をターンアラウンドする!41


執筆:西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表) 

【本稿のポイント】

・簗和生農林水産相は10月15日に辞任したが、道路予算の「箇所づけ」に政治家の影響力がどこまで働いたのかは明らかにならないまま幕引きとなった。

・国土交通省は、自治体の要望や事業の進捗、重点配分枠との合致などを「総合的に勘案」していると説明するが、評価の基準と優先度の決め方は示していない。

・政治家の影響力と予算額に相関はないとする研究もあるが、影響の余地まで否定はできない。国交省は判断の基準と優先度のロジックを公開すべきだ。

簗和生農林水産相が10月15日に辞任しても、道路予算の「箇所づけ」に政治家の影響力がどこまで及んだのかは分からないままだ。国土交通省は自治体の要望や事業の進捗などを「総合的に勘案」していると説明するが、何をどう評価したのかは示していない。NPO法人日本公共利益研究所代表の西村健氏が、公共事業の評価の仕組みをたどり、基準と優先度ロジックの公開を求める。(Japan In-depth編集部)

 

◆簗氏の辞任で、何がうやむやになったのか?

簗農水大臣が辞任。

【意見1】地方整備局・県庁なども関与する中で、政治家でもさすがに影響力を及ぼせない

【意見2】元政務官、筆頭副幹事長の議員だからある程度は聞いてあげて、要望を重要視し、優先的に反映せざるを得ない

どっちなのか・・・・結局うやむやになってしまった。

これまでの政治の常識からしたら【意見2】が優勢だ。どの路線・区間にいくら予算を割り振るかの決定、いわゆる道路整備における「箇所づけ」に対する政治家の影響力は、かつてのような露骨な「我田引鉄・利益誘導」は制度改革で制限されたが、優先順位の調整や予算規模の確保において依然として見えない形で残っているとされている。政治家の影響力はどの程度反映されたのか?筆頭副幹事長、元国土交通省政務官の「政治力」はどういったものかが明らかにならないまま幕引きという形に。日本政治においても重要な問題がまたも「先送り」された。

政治家からの働きかけがあるものだし(それが政治家の仕事も言える)、官僚も政治家の意向を無視するわけにもいかない。話は聞いた、参考にはしたのかもしれない。しかし、簗氏からの問い合わせは軽微なものなので当時の黒田昌義官房長はメモは残していなかったそう。

しんぶん赤旗10月18日の記事によると「国家公務員制度改革基本法に違反」しているそう。赤旗が暴露した内部文書「国会業務概論」によると、窓口の国会連絡室が官房総務課連絡調整係に送る「カンバン」と呼ばれる議員側からの要求内容を記録したメモを作るそう。この文書が本当に存在しないのなら、「総合的な判断」の基準、優先度ロジックくらいは説明しないといけないだろう。国民へのレクが必要だ。

 

◆国交省が言う総合的な判断のロジックはどうなっているのか?

簗氏側からの問い合わせや接触はあったものの、道路予算の配分で「簗氏からの働きかけや圧力はなかったとみられる」とし、簗氏の影響を国土交通省は否定した。配分については、限られた予算の範囲内で自治体からの要望や事業の進捗状況・段階、国の重点化枠との合致度などを総合的に勘案して判断しているそう。同時に、自治体でも全体の1割が減額していることも明らかにした。

筆者が前回説明したように

・他の自治体の事業が優先された

・事業の費用対効果など評価結果・点数が低く、優先順位が低かった

・当該道路の利用者数が少なく、将来予測的にも疑問がある

・その自治体の財政状況や過去の取組みからして問題があった

・過去の「中間評価」「事後評価」が甘い、計画書の中身の根拠が薄い

といった理由が考えられる。だから、個人的には減額されたこと自体は仕方がないかと思う。また、鉛筆舐め舐めで、過去の経緯、有力政治家や与党部会からの要望など政治的な事情を考慮して、最終的に整合性を取るのもわかる。

国交省の資料によると

「○交付金の配分にあたっては、限られた財源のもと、地方公共団体からの要望、 事業の進捗状況、重点配分対象の有無等を総合的に勘案し、配分を実施。 

○具体的には、都道府県とりまとめによる各自治体の要望調書やヒアリングで把握する優先度、事業進捗や、首長等からの直接の要望や意見交換を通じて伺った地域の実情等を踏まえ、配分を実施。」(社会資本整備総合交付金(仕組み・配分の考え方)について)となっている。

【出典】筆者作成

自治体からの要望、事業の進捗状況・段階、国の重点化枠との合致度(アクセス道路整備、地域拠点機能の強化度合、都市機能・移動高度化)などが重視されていることはわかるが、マネジメントの基本はどうなっているのだろうか。マネジメントは、方針、基準、実施手順・手続きによって構成されるもの。基準、優先度設定ロジックくらいは明らかにできないのだろうか。

 

◆国交省はそれなりに頑張ってはいる・・・・基準や優先度ロジックは?

公共事業の評価は以下のようなプロセスになる。

【出典】関東地方整備局における公共事業の評価

 

費用対効果についても事後評価を受ける。再評価・事後評価の実施にあたっては、学識経験者等から構成される「事業評価監視委員会」を設けて意見を聴取している。事業評価監視委員会が開催され、事業の効果、投資効率性など評価結果がチェックされている。「評価カルテ」というサイトも存在する。

【出典】国交省「事業評価カルテ検索」

市町村レベルでも事業は複数あり、それぞれの進捗があり、県の事業もあり、他の自治体の事業もあるので、明確な影響力の有無、度合を説明することはそもそも非常に難しいことは重々承知である。たしかに、国交省はしっかり頑張っている。しかし、基準や優先度ロジックをある程度はオープンにしてもらいたい。

 

◆政治家の影響力は関係ない?~研究

道路ではないが、元衆議院議員の石川香織氏は、北海道の選挙区で民主系が勝っているけど補助金が減っている訳では無いということをデータを示しながら主張した。「地方交付税はデータに基づき機械的に計算される仕組みで、議員の所属政党や人数は算出過程では全く影響されません」と説明し、「もし『自民党議員のおかげで地方交付税が増えた』というなら、仕組みを全く知らないとても恥ずかしい言動」と主張。北海道11区では、自分が選挙区で勝ったことで「特別交付税が削られる」という発言が実際にあったことを紹介し、それを自らのデータで否定した。

さらに、SNSにて、十勝管内の国直轄公共事業(建設・農林水産)について、「令和6年から7年度にかけて前年比13%アップの327億円と増額。令和5年度から6年度にかけても増額」と示し、「令和6年10月の総選挙後からは北海道11区には石川香織のみですが、公共事業費は減るどころか増えています」(facebookでの投稿)と主張した。さらに「野党系(民主系)が勝っている北海道11区でも、国の予算(特別交付税・公共事業費)は減っていないどころか増えている」という趣旨を、十勝管内の実数で示した。

また、政治学者で東京大学教授の福元健太郎氏はSNSで「昔、菊田さん(*筆者注釈:菊田真紀子衆議院議員)と研究したことがある。自民がぎりぎりで勝った選挙区とぎりぎりで負けた選挙区とで予算を比べるのである(RDDと呼ばれる手法)。結果は有意な違いはなかった。」(Xポスト)と明らかにしている(この論文はお蔵入りになったそう)。

こうした研究によると確かに政治家の影響力と予算額に相関はないということらしい。

 

◆余地はある!ことは流石に否定できまい

地元への「自らの実績」として迅速に還元する動きが、地方選出議員の集票基盤維持に直結している。そうでなかったら、業界団体も支援してくれないし、選挙であんなに頑張ってくれない。

「箇所付け」において、政治家の影響力を完全には否定できないだろう。要望を与党の大物議員から聞くか、野党の新人議員から聞くか、でその後の対応が同じになるはずがない。官僚も調整や交渉をしながら相手を見ながら差配する。有力政治家には忖度が働くのも仕方ないだろう。政治は利害闘争だからそんなものだ。

しかし、政治家からの影響力はなかったことを証明するのなら、今のままでは不十分である。納得は得られない。道路企画課長の西川昌宏氏は会見にて「どの事業も数式で何か計算式入れるとでてくるものではない」「調整プロセスについてを示すことはお約束はできない」と記者からの質問に回答した(TBS記者会見VTR)。それなら、まずは、「総合的に調整」する際の基準、どのような評価ポイントを算出し、どのように重点度を設定しているのか、優先度設定ロジックくらいは明らかにしてみてはどうか。国土交通省と高市政権に期待する。

 

【よくある質問(FAQ)】

Q1. 社会資本整備総合交付金とは、どんな制度なのか?

A1. 自治体がつくる社会資本総合整備計画に対し、国が一括して交付する交付金。交付要綱や手続き、年度ごとの配分の考え方は国土交通省のページにまとめられている(国土交通省「社会資本整備総合交付金、防災・安全交付金」、配分の考え方(令和8年度))。

Q2. 道路予算がどこにいくら配分されたかは、どこで確認できるのか?

A2. 国土交通省の道路IRサイトに年度ごとの配分が公表されており、事業ごとの配分額を見ることができる(令和8年度 道路関係予算配分について)。個別事業の新規採択時評価・再評価・事後評価の結果も同サイトで公開されている。

Q3. 国家公務員制度改革基本法は、議員と職員の接触について何を定めているのか?

A3. 第5条第3項第1号が「職員が国会議員と接触した場合における当該接触に関する記録の作成、保存その他の管理をし、及びその情報を適切に公開するために必要な措置を講ずるものとすること」と定め、さらに「当該接触が個別の事務又は事業の決定又は執行に係るものであるときは、当該接触に関する記録の適正な管理及びその情報の公開の徹底に特に留意するものとすること」としている(平成20年法律第68号、衆議院 法律本文)。

 

(本稿のポイント、リード、FAQの文責:Japan In-depth編集部)

 

トップ写真:予算委員会で発言する元農林水産大臣・簗和生氏 日本・東京 2026年10月14日

出典:Photo by Gettyimages

 

 

 

 




この記事を書いた人
西村健人材育成コンサルタント/未来学者

経営コンサルタント/政策アナリスト/社会起業家


NPO法人日本公共利益研究所(JIPII:ジピー)代表、株式会社ターンアラウンド研究所代表取締役社長。


慶應義塾大学院修了後、アクセンチュア株式会社入社。その後、株式会社日本能率協会コンサルティング(JMAC)にて地方自治体の行財政改革、行政評価や人事評価の導入・運用、業務改善を支援。独立後、企業の組織改革、人的資本、人事評価、SDGs、新規事業企画の支援を進めている。


専門は、公共政策、人事評価やリーダーシップ、SDGs。

西村健

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