[Japan In-depth編集部]【がん患者の居場所を作る試み】~病に苦しむ人とどう関わればいいのか?~
この夏、世界中を席巻した“アイス・バケット・チャレンジ(Ice Bucket Challenge)”を覚えている人も多いだろう。筋委縮性側索硬化症(ALS)の研究を支援する為、氷水を被るか、ALS協会に100ドル寄付する、という運動だ。
フェイスブックなどのSNSで拡散され、瞬く間に世界中の多くの人がこのキャンペーンに参加した。結果、寄付金は大幅に増加し、これまでALSという病気を知らなかった人も関心を持つようになったという意味において、評価できる。
一方で、アイス・バケット・チャレンジのような動きを、スラックティビズム(slacktivism 寄付をする代わりに、SNSなどに投稿することで社会貢献らしきことを行うこと)だ、と批判する声も上がった。私にも回ってきた。氷水は被らなかったがALS協会と、広島の土砂災害緊急募金に寄付をした。
アイス・バケット・チャレンジの場合は、病気の存在を知ってもらうことと、研究のための資金を集めることが目的だったが、社会には、「患者の居場所を作る」活動への支援、という形もある。それが、先月末立ち上がった“マギーズ東京プロジェクト”だ。がん患者とその家族や友人らが自分の力を取り戻すことのできる場所を作ろうという活動である。
国立がん研究センターによると、2014年に新たにがんと診断される人は88万2200人、死亡するがん患者は36万7100人との予測を公表した。高齢化を背景に、患者数は10年に比べて約7万7千人増え、死亡者数は12年より約6千人増加する見通し。今や、日本人の3人に一人はがんで死亡する。国民病といってもいい。
また、がんと診断されて1年以内の患者が自殺や事故で死亡する危険性は、がん患者以外と比べて約20倍になるとの研究結果もある。がん患者の心のケアと、孤立しない環境を整備する必要性が叫ばれている。
【マギーズ東京キックオフミーティング 設立共同代表】鈴木美穂氏(左)、秋山正子氏(右)
“マギーズ東京プロジェクト”は、イギリスの造園家だったマギー・K・ジェンクス氏が作った、“マギーズ・センター”を東京にも作ろう、というプロジェクトだ。
マギーは自ら乳がんにかかり、余命数か月と医師に告げられてから、がん患者と家族、友人らのための空間を造ろうと奔走し、入院していた病院の敷地内に小さなケア・ハウスを設立した。それが“マギーズ・センター”の原型で、現在イギリス国内に15か所稼働中だという。
センターでは、がん患者や家族らが自由に利用でき、患者ががんと向き合い、仲間と出会い、悩みを相談し合ったり、専門家のアドバイスを受けることができる。そうした場は、次々と訪れる患者の診察や手術に追われる病院の中にはない。
このプロジェクトは、24歳の若さで乳がんの告知を受けた鈴木美穂さんと、訪問看護20年の経験を持つ秋山正子さんの2人が立ち上げた。既に東京湾岸地区に建設予定地を確保しているという。現在、700万円の内装費を調達する為、クラウド・ファンディングを実施中だ。しかし、実際に建物を完成させるには、3500万円集めねばならないという。
社会には様々な病気で苦しむ人がいる。明日は自分が病に冒されているかもしれない。寄付については、色んな意見はあろうが、大切なのは普段から病に苦しむ人がこの世の中に存在することを意識し、自分が彼らの為に継続的に出来るか考えることだと思う。寄付はそうした私達の行動の延長線上にあるものではないだろうか。
マギーズ東京プロジェクト 公式HP
クラウドファンディングページ
https://readyfor.jp/projects/maggiestokyo
Youtube
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