[朴斗鎮]北朝鮮の『経済管理改革施行』と『地方特区指定』〜地方の貧弱な経済力までも外貨獲得に動員する試みに展望はあるか?
北朝鮮では昨年「経済管理改革」として「6・28措置」を発表し、それを実験的に進めてきたが、今年8月からそれを本格的に実施することになった。利益の出ている企業や農場では70~80%の利益を国家に収め、残りは独自に使ってもよいと言うものだ。この措置によって一部企業では賃金を100倍に引き上げたところも出ている。しかしこの場合にもハイパーインフレを引き起こした過去の失敗を考慮して、7割程度は現物支給としているらしい。そして外貨獲得のために各企業の外貨口座も許可し外国との取り引きも許可した。
こうした諸措置は、国民の不満を押さえ込み、何よりも枯渇する外貨を必死にかき集めようとするものであるが、見通しは決して明るくない。過去にも似たような措置を取ったことがあるが、市場経済と結びつかなかったためにに結局統制経済に引き戻されている。
一方、北朝鮮の朝鮮中央通信によると、北朝鮮最高人民会議常任委員会は11月21日、全国に13の「経済開発区」設置を決定し、地区名を盛り込んだ政令を発表した。また、かつて特区開発を試みて失敗した中朝国境地帯の新義州の一部地域を「特殊経済地帯」に指定した。これも外貨の獲得が最大の狙いである。地方の貧弱な経済力までも外貨獲得に動員しようというものだ。
しかし、国家的経済特区であろうが地方の「経済開発区」であろうが、「市場経済原理」と国際的ルールに基づいた「厳正な契約の履行」、そしてワイロなどを排除した「取り引きの透明性」が保証されない限り外資の誘致は難しい。それは中朝国境の「黄金坪」の開発がいまだに軌道に乗っていないことを見ても明らかである。また何よりも核とミサイルにからむ北朝鮮に対する「国連制裁」が解除されない限り、北朝鮮に対する本格的投資は極めて困難である。
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【プロフィール】
1941年大阪市生まれ。1966年朝鮮大学校政治経済学部卒業。朝鮮問題研究所所員を経て1968年より1975年まで朝鮮大学校政治経済学部教員。その後(株)ソフトバンクを経て、経営コンサルタントとなり、2006年から現職。デイリーNK顧問。朝鮮半島問題、在日朝鮮人問題を研究。テレビ、新聞、雑誌で言論活動。主な著書に、「北朝鮮 その世襲的個人崇拝思想−キム・イルソンチュチェ思想の歴史と真実」「朝鮮総連 その虚像と実像」など。その他論考多数。